中国人民銀、包商銀行を公的管理に

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

中国人民銀行が18年に経営危機に陥った安邦保険集団を接収した例はありますが、銀行の接収は約20年ぶりで影響が懸念されました。しかし中国当局の対応で、市場は比較的落ち着いた動きです。金融システム不安は回避されるとの見方が大勢と思われます。ただ、中国の経済指標の回復は鈍く、仮に鈍い回復が長期化すると、システム不安が高まることも考えられます。

中国包商銀行:中国人民銀行と中国銀行保険監督管理委員会の管理下に、期間は1年

中国人民銀行(中央銀行)と中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は2019年5月24日、内モンゴル自治区の商業銀行である包商銀行を1年間公的管理下に置くと発表しました。人民銀は重大な信用リスクが起きたため、預金者とその他の顧客の合法的な権益を守るため接収したと説明しています。商業銀行の接収は20年ほど前の海南開発銀行以来になると報道されています。

どこに注目すべきか:公的管理、流動性供給、預金保険、PMI

人民銀と銀保監会が18年に経営危機に陥った安邦保険集団を接収した例はありますが、銀行の接収は約20年ぶりで影響が懸念されました。しかし中国当局の対応で、主要な銀行間取引である銀行間レートは比較的落ち着いた動きです(図表1参照)。金融システム不安は回避されるとの見方が大勢と思われます。

 

[図表1]中国の主な銀行間レポレートの推移 日次:2019年1月2日~2019年5月30日 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国の主な銀行間レポレートの推移
日次:2019年1月2日~2019年5月30日
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

ただ、中国の経済指標の回復は鈍く(図表2参照)、仮に鈍い回復が長期化すると、システム不安が高まることも考えられます。

 

 

[図表2]中国CDSスプレッドと(政府系)製造業PMIの推移 日次、期間:2017年5月31日~2019年5月30日、PMIは月次 ※CDS(クレジット・デフォルト・スワップ):信用リスクを対象としたデリバティブ商品のことでスプレッド上昇(低下)は信用力悪化(改善)の目安 出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国CDSスプレッドと(政府系)製造業PMIの推移
日次、期間:2017年5月31日~2019年5月30日、PMIは月次
※CDS(クレジット・デフォルト・スワップ):信用リスクを対象としたデリバティブ商品のことでスプレッド上昇(低下)は信用力悪化(改善)の目安
出所:ブルームバーグのデータを使用してピクテ投信投資顧問作成

 

包商銀行が公的管理下に置かれるというニュースはショッキングではありますが、影響は抑制されています。

 

1つ目は、中国当局の流動性供給による対応はすばやく、例えば29日の公開市場操作(オペ)では1月以来となる2500億元規模をネットで供給しています。中国の銀行間取引で利用されシステム不安に感応度が高いと見られる銀行間レポレートは直後のレート上昇が抑えられています。

 

 

2つ目は、個人の預金は保護されることです。中国の預金保証制度は上限50万元(800万円弱)ですが、人民銀は全額保護を表明、法人預金については5000万元まで保護し、超過部分は交渉の余地ありという方針です。

 

3つ目は、今回公的管理下に置かれる包商銀行は、問題の多い銀行という特殊事情もあります。例えば、創業者の肖建華氏は17年に香港で失踪してから行方がわからないままです。また、大株主の明天集団は汚職で摘発されています。さらに、包商銀行は16年を最後に財務諸表を公表していないなど、健全な銀行とは比較にならない状況でした。

 

先の銀行間レポレートだけでなく、譲渡性預金、社債、通貨市場など信用リスクに反応する市場でも、今のところ落ち着いた動きとなっています。

 

ただ、今回の件で気になる点も浮かび上がりました。

 

細かな点ですが、中国現地の格付け会社は包商銀行をAA格としています。15年を最後に格付けは更新されていないようです。先の財務諸表の公表停止など、情報提供の姿勢に問題があるように思われます。

 

大雑把な話しながら、中国の景気回復が鈍いのも気がかりです。31日に公表された5月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.4と市場予想の49.9を下回る軟調な結果でした(図表2参照)。米中通商交渉の悪化など、景気を悪化させる要因が根強い中、景気回復の鈍さが中国の信用力を将来的に悪化させるリスクに、無関心になるべきでは無いと見ています。

 

 

記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国人民銀、包商銀行を公的管理に』を参照)。

 

 

(2019年5月31日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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