クレームには「最短最速で連絡を取る」を心がける
「クレーム(苦情)」はなければそれに越したことはありませんが、気をつけていても起こることはあります。この、メンタル面でも実務面でも辛い「クレーム」という事象を少し「科学的に」読み解いてみます。
まず考えたいのが「なぜクレームが発生してしまうのか」という点です。クレームが発生する4大要素があります。①商品サービスの欠陥②応対のまずさ③システム上の問題④お客さまの勘違いです。
しかもこのなかで特に長く利用して信頼してくださっている「優良顧客」の4割が「クレームそのもの」よりも「クレーム対応に対してのクレーム」をもっているというデータがあります。教室に置き換えると、長年通ってくださっている信頼関係が厚いはずの生徒さんほど、応対を間違えるとより大きなクレームに発展する可能性があるということです。教室の場合は、ほぼ②番と④番が要因の8割を占めるのではないかと思っています。
特に②番「応対のまずさ」を助長する原因の一つに「時間」があります。厳しい言い方ですが、主婦から起業した先生は感覚が鈍いと感じるケースが多いです。
【クレームはすべての業務を止めてでも、最大限迅速に対応するべきもの】と営業時代に言われていました。実際にそのように対応していました。クレームの放置時間が長くなるほど、お客さまの怒りも問題解決の難易度も、恐るべき速度の正比例で2倍・3倍・5倍速で上がっていきます。ここを把握していない方が案外多いです。放置すると、分刻みで解決に向かうための難易度が上がっていくのです。
クレームがあったときには原因はなんであれ、ご自身がパニックに陥る可能性があるのも十分に理解しています。実際に頭が真っ白になってしまった先生から相談を受けたこともあります。
そんな状態でも一番にしなくてはいけないのは、【お客さまにまず、第一報のおわびを入れること】です。原因や対応は後で構いません。
とにかくおわびは「その事象そのもの」に対してするのではなく「そんな不愉快な気持ちにさせてしまったこと」に寄り添ってする、これが一番に必要なことなのです。
この初動を誤ると、「感情がこじれて」しまって、冷静に話を聞いてもらえなくなってしまいます。誰が悪いとか何が悪いという前にまずは、「そんな気持ちにさせてしまって申し訳ありません」。まず「気持ちに寄り添う」。これがクレームを最小限に抑えるベストな対応です。
この時にポイントとなるのは「時間」です。クレームは突然発生します。他に入っている用事との兼ね合いもありますが、とにかく「最短最速で連絡を取る」。これを心掛けてください。
怒られるかもしれない自分を想像して連絡ができなかったという話も聞いたことがありますが、これは最悪です。クレーム発生時は自分よりもお客さまの気持ちを優先してください。実際には、お客さまの勘違いという場合もあります。その時は謝り損ということになりますが、お客さまに貸しを作ったことになるので実はその後、超VIP顧客に変わることだってあるのです。
クレームの主な要因は事象そのものよりも感情の行き違いであるケースがほとんどです。この時に最大限注意を払いたいのは「対応までの時間」です。ここは迅速に動いてください。そして、クレームは同時に最大のチャンスでもあります。
クレームにきちんと対応することでむしろ信頼貯金が一気に上がり、超優良顧客になることも多々あります。そして、自分の経営体質においても、そのクレームをきっかけに改善を繰り返すと、品質が上がって結果としてはもっと多くの方に喜んでいただけます。
クレームはないほうが精神衛生上はいいかもしれませんが、たとえあったとしても、クレームは「お客さまからの問題提起」。暗黙のうちにお客さまが離れていくよりもずっといいです。クレーマーでない限り、言うほうも本当は気力体力が必要な作業なのです。
クレームはありがたく受け取り、最速で対処改善してしまいましょう。
集客のメカニズムと「釣り堀」の仕組みは一緒である⁉
私は独立開業して最初に「集客」に取り組み、その集客のエッセンスに「営業」の視点を取り入れていたため、知らず知らずのうちに「成約率」も高く運営できていました。「ネットとアナログのハイブリッドな集客・成約」ができていたのだと、いまになって気づきました。営業視点があったことで、他の方よりも「成約」の苦労は少なかったかもしれません。
そんな私が数年教室を運営するうちにさらに気づいたことがありました。それが「集客と成約は短期戦&長期戦を把握して取り組むこと」の重要性です。短期とは、毎日発信するSNS、長期とは自分のファンを集めたコミュニティーを作ることです。集客には、この短期視点・長期視点をもっておくことが大切です。
おそらくこの視点は、日々忙しく教室のレッスンをこなし、生徒さんの応対をこなし、レシピ開発をして日々が過ぎていく先生にとってはあまりなじみのない考え方だと思います。
コミュニティーとは、お客さまが自然と「集まる仕組み」で、「信頼作り」です。言い換えると、普段からあなたのファンをどれだけ地道にあなたが作っているか、この点に尽きます(図表参照)。
教室のファン、それがすでに通っている生徒さんであれ、これから出会う新規の人であれ、きちんとした「ファン作り」をそもそもやっているかやっていないか、これが結果として集客を楽にする一番のポイントだと思うのです。
この状態はしばしば「釣り堀」に例えられます。個人的にはお客さまを「魚」に例えるのはあまり好きではないのですが、わかりやすいのでこの例でお伝えします。
まず生徒さんを「釣り堀の魚」だと思ってください。そしてあなたのレッスンが「魚の餌」です。集客のメカニズムと釣り堀の仕組みは一緒です。
おなかをすかせた魚がたくさんいるいけすに餌をまけば、争って魚たちは餌を食べにきます。この魚が集まってくる状態が「お客さまが集まってくる状態」と一緒なのです。
もちろん、お客さまは人間ですからいけすに飼うことはできませんが、「信頼コミュニティー」のなかに属してもらっておくことはできます。そしてそれは別に鎖でつないでいるわけでもありませんので、喜んで「そこにいてもらう」という状況を作っておく必要があります。魚ではなく人間に対しては「役に立つこと」「楽しいこと」を体験できることが、おそらく「そこにいる」大きな理由になります。
これを実現しようとすると時間軸的には長期戦略になります。日々の情報発信、それによって信頼残高を上げて、そのコミュニティーにいてもらう、という非常に地道で地味な作業になります。
だからそれを日々の忙しさに紛れてやらない先生が多いのを知っていますし、地味でなかなか成果が上がらないため、気持ちが萎なえて続かない先生がいるのも知っています。それでも、ここがしっかり構築できるとその後が格段に楽になるのです。
最初の3年が一つの区切りだと思っています。ここを積み上げつつ、短期的に生徒さんが喜ぶ企画(餌の部分)を適度なタイミング(おなかがすく)でリリースすると、集客は格段に楽になっていきます。いつも短期決戦ばかりだと自分が疲弊するので、集客のメカニズムを理解して「短期戦略と長期戦略」を意識した集客設計をすることがとても大切です。
高橋 貴子
株式会社Libra Creation 代表取締役