本記事では、株式会社Libra Creation代表取締役で経営コンサルタントの高橋貴子氏の著書、『黒字へ飛躍!もっと稼げる自宅教室の集客・成約バイブル~理想の顧客を確実に獲得し、利益を2倍にする方法』(合同フォレスト)から一部を抜粋し、経営の肝ともいえる商品やサービスの適切な「価格設定」の方法について解説します。

どのように「正当な価値ある価格」を決めればよいか

価格設定は「経営の肝」ともいわれる部分で、ここを戦略的に作るかどうかで年間の売り上げが大きく変わるだけではなく、時間の使い方、サービス提供のレベルなどあらゆる経営の原資を左右する重要なポイントとなります。

 

しかし、実際には「安易なイメージで価格設定」をしている教室の先生が多いことに気づきました。

 

「安易なイメージ」で価格を決めてしまう要因は二つあります。

 

一つは「予約が入らない恐れ」から「近隣教室の価格」だけを参考に値付けすること。もう一つは「価格に見合わない(割高感への不安)」「顧客からクレームを言われるのが怖い」から周りに合わせた価格にしておくことです。

 

感覚的には一つ目の要因が80%、二つ目の要因が20%ぐらいのイメージです。特に「高いと言われるのが嫌」という感覚は「自分に自信がない」ことの裏返しで、実は無意識に考えていることが多いです。

 

ここは自分の得意領域をしっかりと理解する必要があります。おおよそ、このタイプの方は「コンセプト設計」をしっかりやっていないケースが多く、外部に向かって発信する以前のレベルで、自分の教室の魅力を深掘りできていないので「正当な価値ある価格」をつけることができないのです。

 

これは決して「高い値段をつけなさい」といっているのではなく、「正当な価値ある価格」つまり「適切な価格」をつけてほしいということです。

 

前著『自宅教室の開業・集客バイブル』でも、顧客心理面から見た価格設定として「①絶対価格 ②相対価格 ③感情価格」について言及しています。そして、現在の教室運営における顧客の購買心理は「③感情価格」(その人にとって価値があるものなら高くても買ってしまう趣味的な金額の領域例:ビンテージ、アンティークなど)の領域に近いものがあります(図表1参照)。

 

[図表]顧客心理から見る三つの価格
[図表1]顧客心理から見る三つの価格

 

だから「気持ちが納得する・理解しやすい価格提示」をすることも結果としては成約率を上げることになり、その際の顧客心理を理解する必要があります。

顧客の立場では「選択肢の多さ」はストレスになる

「成約しやすい価格設定」を考えた場合に、「価格の見せ方」も重要です。脳の働きから考えた場合、「選択肢が多すぎると脳はストレスを感じて意思決定が困難になる」という話があります。

 

これは、私もクライアントのHP診断をする際に体験していることです。「レッスン種類が多品目(例:料理・菓子・パン・アイシング・スクラップなど)で多領域にわたる展開をしている教室のメニュー」を見ると、実はそれだけで疲れてしまいます。いわゆるなんでも売っている総合デパート型です。この時に脳が疲労するという感覚がよくわかります。「選ぶ」という行為にストレスを感じてしまうのです。

 

先生としては「親切心」から「こんなにたくさんのことが習えますよ」とアピールしたいのかもしれませんが、「成約」という観点から考えると、実は逆効果になっていることが多いのです。顧客の立場に立つと、選択肢が多くて見るのが面倒になると「そのWEBサイトから離れる」という決断をして「他のWEBサイトに行く」のです。

 

あなたの教室のメニューは大丈夫ですか? 多すぎる場合には少し絞ったほうが、むしろ決まりやすくなる可能性があります。

 

ではどうやって減らしていくのか、絞り込むのか、この時に役に立つ考え方が「松竹梅の法則」です(図表2参照)。「3段階の価格帯を設定しておくと、多くの人は真ん中の価格帯を選ぶ」という購買における心理傾向です。

 

たとえば、お寿司屋さんで、

 

・松10000円

・竹5000円

・梅3000円

 

というメニューがあった場合、多くの人は、真ん中である「竹」を選ぶ傾向があります。

 

その比率は「松=2:竹=5:梅=3」といわれています。あなたも竹を選んだ経験があるのではないでしょうか? なぜかというと、行動心理学的に「極端の回避」という、極端に「高い」「安い」で失敗したくない心理が働くため、成功確率が高い妥協点の「竹」を選ぶ傾向が強いのです。そして、これがもし「高い・安い」の二択だった場合、お得感のある「安い」を選ぶ傾向にあり、その割合は約7割といわれています。

 

ですので、単純に価格が二つ用意されているのであれば、本当に売りたい商品が真ん中になるよう三つの商品で設計すると、結果として「真ん中」が売れやすくなるのです(図表2参照)。

 

[図表2]成約を促す三つの価格設定
[図表2]成約を促す三つの価格設定

 

私は、この法則をいろいろなところで応用しています。

 

パン教室のときには、「コース展開」に応用しました。一番売りたいコースが「真ん中」に見えるような設計をして、実際に思惑どおりそのコースが一番売れました。そしてこの時にわざわざ「そんなに人気がないかもしれない」というクラスも一応作ったことがポイントでした。三つの選択肢を作ったことで「真ん中」に集中して予約が入ったので効率もよくなったのです。

 

実はこれは営業時代にも使っていた方法です。価格だけではない提案も「三つ」の選択肢を提示して選んでもらっていました。こうすると、何かしら「選んでもらえる」確率がグンと上がるのです。逆に二つだと「迷って選ばれない」確率が上がるのです。その感覚をそのままパン教室に取り入れたことがヒットの要因の一つです。

 

脳がストレスを感じない選択肢は「3個から5個まで」といわれています。しかも特に「3」が決めやすい。選択肢が多いと行動的には「決定回避の法則」が働き「迷うから決めるのをやめておこう」となり、WEBサイトの場合には「離脱」という現象が起きて、決まらないどころか、「再訪問がない」ことだってあります。

 

せっかく検討してくださっているお客さまを「迷わせて」逃すのはもったいないです。成約率が低いWEBサイトは「見た目が複雑」です。「わかりやすい価格設定」はお客さまに親切でもあり、結果として成約率も高くなることを理解して価格設定をしましょう。

 

高橋 貴子
株式会社Libra Creation 代表取締役

黒字へ飛躍! もっと稼げる自宅教室の集客・成約バイブル: 理想の顧客を確実に獲得し、利益を2倍にする方法

黒字へ飛躍! もっと稼げる自宅教室の集客・成約バイブル: 理想の顧客を確実に獲得し、利益を2倍にする方法

高橋 貴子

合同フォレスト

22年の営業経験と、自らパン教室を開業・運営した実績をもとに導き出したノウハウで実践的に指南!テクニック・ノウハウだけでなく、教室経営者として身につけておくべきマインドも学べます。

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