やりたいレッスンより「求められる」レッスンを
「売れるレッスン」を作るには、「予測」と「改善」の二つの段階に分かれます。
誰でも、開業時はまだ生徒さんがいませんので、「予測」ベースでレッスンを組み立てなくてはいけません。その際に徹底的にリサーチするのが、「来てほしい生徒さんのライフスタイルと困りごと」です。年齢、家族構成、なぜ教室に通いたいのか、何に困っているのか、その年代の人やそのライフスタイルを選ぶ人は何が好きなのか、趣味嗜好、食べ物の好み、好きな場所、旅行、音楽、ファッション、生活様式など雑誌やインターネットなどで検索しながら、自分のレッスンを組み立てていきます。
私がやりたいレッスンというより「求められるレッスン」を予測します。
そして、ある程度形になったら「イベントレッスン」(単発レッスン)を組みます。それはリサーチが目的なので、価格は安めで参加してもらう人数を多めに集めます。そして実際の参加者の声を聞き、このクラスが本当に世の中に求められているか、さらに人に来てもらえそうかを検討してからクラスを作って募集します。
このテストレッスンをやってからメインレッスンを組み立てると、本コースの成約率が高くなりますが、同時に自分で自分のレッスンを客観的に判断するシビアな目も必要です。実際に私のパン教室を例にご説明します。[図表]は、マーケティングでよく使われているポジショニングマップです。
「業界において自社製品・サービスが競争優位性のある独自のポジショニングを取るための分析手法」として知られています。わかりやすくいうと、「自分の教室が競合教室とどのように差別化し、どのような独自性で顧客にアピールできるかを考えるツール」です。
ポジショニングマップは縦軸と横軸からなっており、この例では縦軸に価格、横軸に特徴を表現しています。
「売れるレッスン」を作る重要なポイントとは?
私の教室は「高価格で特殊なパンを教える教室」という特徴を打ち出すことにしました。
まず価格は、当時7割近くの教室が採用していた一般的な価格帯が3500~5000円程度だったのに対して、私の教室では7000~9000円で値づけしていました。そして、レッスンの内容も、「特殊」のほうに振り切ったコンセプトを作ったのです。当時、七つの酵母を同時に教える教室はなかったように記憶しています。
他にも、業界的には需要の少ない方向へ舵を切った点がいくつもあります。たとえば、業界で2割程度しかない「成型をメインに教える」、業界で2割以下の「機械こねだけ教える」、業界で3割以下の「中・上級者向けクラス」、年齢層も手ごねを好む30代ではなく、楽にパンを作りたい「40代以上」という「特殊な条件」を設定しました。
高価格帯の教室運営をするために必要なことは、高くても習いたくなるような魅力。そこで「特殊な」特徴をいくつも重ねて作り上げたクラスが、「7つの天然酵母パンを楽しむクラス」でした。
リサーチにあたっては、まず近隣教室の状況を把握しなくてはなりません。そのため、インターネットで「パン教室・横浜」「天然酵母・パン教室・横浜」というキーワードで検索し、上位50社のHPを見て、内容と価格帯を分析してマップに落とし込んで、自分の教室のポジションを決めました。
一般的な個人教室も大手のパン教室も、どちらも競合になります。それぞれの教室には特徴がありますので、その特徴に対して自分の教室の優位性をどう見せていくかが、売れるレッスンを作る重要なポイントになります。
「そんなに顧客層を絞り込んだら、誰も来ないのでは」と思われるかもしれません。しかし、当時のホームベーカリーの1年間の出荷台数は200万台。つまり、少なくとも、なにかしらパンに興味がある人がそれだけいるとわかったので、仮説を立てることができました。もし、興味がある人が少ない場合には、もう少し特徴の見せ方を変えないと誰も来ないということにもなり得ます。
つまり、売れるレッスン作りは、お客さまのニーズがあり、かつ、ライバル不在のポジション探しができているか否かによります。これを導き出すためのリサーチ力と分析力も身につけると、高確率で成約しやすいレッスンを作ることができるようになります。