リピート率の高さ=技術力の高さではない
私はコンサルタントという職業柄、いろいろな職業をついマーケティング的な視点で見てしまいます。「顧客管理」という視点からいうと、「美容院」「整体治療院」業界は「顧客管理」が秀逸だと常日頃感じています。
その理由は、「リピート率」が経営の生命線だからです。お客さまにリピートしていただくということは、【前回満足した。だから来た】ということにほかなりません。お客さまの満足度がそのままリピート率につながることが多いです。
ただし、リピート率が高いのは「ものすごい技術があるから」だけではないのです。誤解を恐れずに言いますが、「人がその店舗に再び訪れる要因は必ずしも提供される技術の高さだけではない」のです。
それは「他人から認められたい」という感情を満たしてくれるかどうかにあります。これを「承認欲求」といいます。
美容院や治療院の顧客管理がすばらしいのは、お客さまの施術履歴はもちろん、会話のなかから出てきた職業、家族構成や趣味・嗜好などをきちんと記録しているところです。それをやっていない店舗もありますが、きちんとやっていて、スタッフ総ぐるみでその情報を共有している店舗は長く続いていて、ずっとはやっています。
私が10年近く通っている近所のヘアサロンもその一つです。私は店長をメインで指名していますが、私と店長の日程が合う可能性が最近はとても低いのです。担当は他のスタッフさんになることも多々あります。それでもそこに通い続けている理由は、「高橋貴子の履歴がスタッフ間で共有されている」からです。
そのため、毎回いちいち細かく説明しなくてもよい。だからつい行ってしまうのです。私がどんな仕事をやっているか、その変遷も含めて把握してくれているので、話題も自然で楽なのです。こうなるとお客さまは他に行くのが面倒になります。だからリピートしてしまいます。
ネット時代にアナログな要素も取り入れて運営しているのがこの業界です。数カ月に一度、店長の手書きのメッセージと近況がセットになったハガキが届きます。そのメッセージは「私」の状況を知らないと書けない内容になっているのです。ここで「特別感」を感じさせてもらえるので、やはりうれしくなって通ってしまいます。
「感動してもらえる接客」作りの第一歩とは?
教室の場合は、そこまでできていないことが多いです。なぜなら、パソコンが苦手な先生が多いからです。
私が初めて教室を開業をしようとする人に強くおすすめしているのが、「顧客管理のデータ化」です。パソコンが苦手な方が多いためか、教室の先生は紙で管理している場合が多いです。それでも私はあえて「データベース化」することを、声を大にしてお伝えしたい。それぐらい「顧客管理」は重要な仕事の一つなのです。
どうしても紙で管理したい方は、お客さまの詳細な情報を漏らさずきちんとメモしてください。それがお客さまに「感動してもらえる接客」作りの第一歩だからです。記憶力が抜群にいい人はメモなしでも構いませんが、生徒さんリストが1000人、2000人になっても個々を覚えていられる人はそう多くないと思います。
途中からデータ化しようとすると、入力するのが大変なうえに、どの情報を書き留めておくかのルールを自分で作っていないので「顧客が感動する接客」がしにくくなりがちです。開業時もしくは途中からでもいいので、データベース化することをおすすめします。感動する接客はリピート率に貢献します。
そしてデータベース化しておき、情報を整理・分析することで「この属性の人たちはこういうレッスンが好みだから、今度この人たちに向けたレッスン企画を組んでみよう」など企画が立てやすくなります。最低でも参加したレッスンの年月、内容があれば、そのグループの絞り込みができますので、希望の属性に向けたレッスン企画が立てられ、「成約率」もかなり高くなります。
教室の先生はこの辺りまで手が回っていない、またはできていない人が多いように感じています。私もパン講師時代にメルマガはやっていましたが、ハガキまで手が回っていませんでした。ですから、データベース化とその活用ができる人は強みになります。
「成約率」と「顧客管理」はとても密接な関係があり、パソコンが苦手でも時間をかけてでも、きちんと取り組んでいただきたい重要な仕事の一つなのです。
高橋 貴子
株式会社Libra Creation 代表取締役