米国株式投資戦略 「囚人のジレンマ」に陥った米中貿易戦争

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米中貿易戦争は「囚人のジレンマ」に陥った可能性があります。「囚人のジレンマ」とは、利害の対立する状況にある集団の行動を数学的に捉えた「ゲーム理論」の概念で、お互い協力した方が良い結果になると分かっていても、相手を裏切ったほうが利益を得る状況では互いに協力しなくなる、という現象を指します。

「囚人のジレンマ」とは?

意思疎通が出来ない別々の部屋で尋問を受ける容疑者Aと容疑者Bがいたとします。この二人が取れる選択肢は、「黙秘」又は「自白」のいずれかです。二人とも黙秘した場合はいずれも懲役2年です(図表1の左上)。一方、一人が自白し、もう一人が黙秘した場合は、自白したほうが懲役1年、黙秘したほうが懲役10年になります(図表1の右上と左下)。

 

[図表1]「囚人のジレンマ」の例 出所:ピクテ投信投資顧問作成
[図表1]「囚人のジレンマ」の例
出所:ピクテ投信投資顧問作成

 

そして、二人とも自白した場合はいずれも懲役5年になります(図表1の右下)。本来であれば、二人とも黙秘することが最適な結果となりますが、相手が裏切るかどうか分からない状況では、二人とも自白する選択肢を取ってしまいます。これが「囚人のジレンマ」です。

 

 

米中貿易戦争を「ゲーム理論」に当てはめると?

上記の例を米中貿易戦争に当てはめたのが、図表2になります。ここでは簡略的に、米国が取れる選択肢は追加関税引き下げ/引き上げとファーウェイ規制緩和/強化の2パターン、中国が取れる選択肢は(中国企業に対する)産業補助金撤廃/維持と(米国企業からの)技術移転禁止/強要の2パターンとします。米中を含めたグローバル経済を考慮すれば、米国は追加関税引き下げとファーウェイの規制緩和、中国は産業補助金撤廃と技術移転禁止を選択すべきです。

 

[図表2]米中貿易戦争における「囚人のジレンマ」 出所:ピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米中貿易戦争における「囚人のジレンマ」
出所:ピクテ投信投資顧問作成

 

しかし、中国が産業補助金撤廃と技術移転禁止を順守する一方で、(実行性を見極めるため)米国が追加関税の引き上げやファーウェイ規制強化を維持すれば、米国が覇権を握ることになります。反対に、(合意を受けて)米国が追加関税の引き下げとファーウェイの規制緩和を実行し、(合意に反して)中国が産業補助金維持と技術移転強要を維持すれば、やがて中国が覇権を握ることになるでしょう。

 

 

このため、米国は追加関税引き上げとファーウェイ規制強化、中国は産業補助金維持と技術移転強要を選択する誘因が働き、貿易戦争が激化することになります。つまり、「囚人のジレンマ」に陥るわけです。実際の米中貿易交渉はこのような単純な構図ではありませんが、ゲーム理論を参考にすることで、米中貿易戦争の解決が一筋縄ではいかないことが理解できます。

米中貿易戦争は長期化へ。米国株式の慎重スタンスを堅持

今回発表された米国の追加関税第3弾やファーウェイ規制強化に加えて、実施が示唆される追加関税第4弾が発動されれば、グローバル経済に対しては明らかにマイナスとなります。米中貿易戦争が長期化の様相を呈してきた以上、今後は主要各国の輸出やPMI(購買担当者景気指数)といったマクロ経済指標の下振れリスクを見極める局面になります。米国株式は適温相場を背景に年初来で大きく上昇しただけに、当面は慎重なスタンスが求められます。

 

 

記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国株式投資戦略 「囚人のジレンマ」に陥った米中貿易戦争』を参照)。

 

(2019年5月21日)

 

 

田中純平

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系運用会社に入社後、14年間一貫して外国株式の運用・調査に携わる。主に先進国株式を対象としたアクティブ・ファンドの運用を担当し、北米株式部門でリッパー・ファンド・アワードを受賞。アメリカ現地法人駐在時は中南米株式ファンドを担当し、新興国株式にも精通。ピクテ入社後は、ストラテジストとしてセミナーやメディアなどを通じて投資家への情報提供に努める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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