本連載では、書籍『“健康住宅”のウソ・ホント』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、耳ざわりのいい健康住宅の「宣伝文句」のウソを暴いていく。

「アルミサッシ」の使用をおすすめしない理由

日本の住宅を悪くした大きな原因の一つが、アルミサッシです。家の断熱を考える上では、サッシ(窓)も重要な役割を果たします。サッシには、熱伝導率がもっとも低く高機能な樹脂製を選ぶべきです。

 

世界的に樹脂サッシは普及しており、アメリカ65%、イギリス76%、ドイツ64%、韓国80%の普及率です。しかし、日本ではまだ17%しか普及していません。なぜかというと、日本は戦後、工場での加工のしやすさを理由に、急速にアルミサッシが普及したためです。

 

そのため一般家庭では今でも多くの場合、アルミサッシが使用されています。しかし私は、アルミサッシは絶対使ってはいけないと声を大にして主張しています。アルミは、樹脂や木など他の物質に比べて、非常に熱を通しやすい性質を持っているからです。熱の伝えやすさをあらわす数値に「熱貫流率(W/㎡・K)」というものがあります。

 

熱貫流率は、ガラスの内外の温度差が1℃あった時に、1時間あたりガラス1㎡を通過する熱量が何ワットかを表した値です。この数値が少ないほど断熱性に優れています。樹脂の熱貫流率が0.2、木が0.16であるのに対して、アルミの熱貫流率は200です。樹脂や木に比べてアルミは1000倍熱を通しやすい性質があるのです。

 

アルミ製の鍋を火にかけるとすぐに熱くなってお湯が沸騰するのは、この熱伝導率の高さが原因です。日本では熱貫流率が2.33以下の窓を最高性能と認定していますが、大多数の住まいに使われているアルミの複層ガラスは4以上の熱貫流率で、どんどん熱を通してしまいます。

 

ドイツでは熱貫流率が1.3を超えるものは使用禁止にしていることを考えると、いかに日本の窓が低スペックかご理解いただけると思います。アルミのように熱伝導率の高い素材は、鍋の素材としては良いかもしれませんが、窓には決して使用してはいけません。もちろん新幹線にも使用されていません。

 

ただでさえ日本の住宅は窓が広くとられているので、アルミサッシを使っていては、外気温の影響を大きく受けてしまいますし、省エネ効果を発揮しにくくなります。ちなみにアメリカでは、全50州のうち約半数の24州でアルミサッシの使用が禁止されています。やはり、人が住む空間ではアルミサッシは使わない方が良いのです。

 

一方、断熱・機密性が高い樹脂サッシは先述のとおり、北欧や北米などの寒冷地を中心に普及しています。日本においては北海道や東北などには多く採用されていますが、それ以外の地域ではまだまだ普及しているとはいえません。樹脂サッシは断熱性や機密性以外にも、冬場の冷気が室内に伝わりにくいため結露が生じにくい点や、加工や着色がしやすいことから、幅広いデザインに対応できる点、アルミサッシに比べて遮音性に優れている点など、さまざまなメリットがあります。

 

[図表1]熱伝導率の比較
[図表1]熱伝導率の比較

断熱性の高い住宅ほど「病気の諸症状」改善率が高い⁉

身体への負担を最小限にする、室温の一定化これまで見てきたように、日本の高気密・高断熱住宅のレベルはピンキリで、ニセモノも跋扈(ばっこ)しているひどい状況です。

 

快適な住環境を保つためには、しっかりとしたオール外断熱(基礎から屋根までの外断熱)施工で高気密・高断熱の建物をつくり、さらにサッシ(窓)などの細かい部分にもこだわって材料や設備を吟味することが、とても重要です。それが家族全員の健康を守ることにつながります。

 

ここに、興味深いデータがあります。近畿大学建築学部・岩前篤教授は平成14年以降、約3万5千人(主に30代〜40代の働き盛り世代と、その子ども世代である10代までの男女)を対象に健康調査を行ってきました。その中で新築の高気密・高断熱住宅に引っ越した人に、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎、関節炎、アレルギー性鼻炎などの15の諸症状について、引っ越し後の変化を質問。「以前と変わらず(症状が)出ていない」「出るようになった」「出なくなった」「以前と変わらず出ている」の4つの選択肢から選んでもらいました。

 

[図表2]引っ越し後の住宅の断熱性能と病気の改善率の関係
[図表2]引っ越し後の住宅の断熱性能と病気の改善率の関係

 

グラフは、断熱性能の高い家に引っ越した後、病気の諸症状がよくなった人の割合(=改善率)を示しています。なお、グラフにあるグレード3(省エネ等級3)はアルミサッシ+シングルガラス、グレード4(省エネ等級4)はアルミサッシ+ペアガラス、グレード5(省エネ等級4以上の高性能)は樹脂サッシ+ペアガラスです。

 

グラフを見ると分かるように、多くの症状に明確な改善が認められました。また、より断熱性の高い住宅に引っ越した人ほど、改善率が高くなったことが分かります。中でもアトピー性皮膚炎が改善されているのは、室内が快適になり身に着ける服が減ることで、アトピーの引き金になる衣服からの刺激を小さくすることができるからと、岩前教授は分析しています。

 

日々の健康のためにも、住まいは省エネで快適な住まいであることが大切です。それには、工法・断熱・換気・空調などをしっかりと勉強して建てることがとても重要です。

 

それを考えると、「ローコスト住宅」などといって、安価で室内の温度差が激しい粗雑な家を売りつけるハウスメーカーや工務店は、ある意味「罪」だと私は思います。

 

私の会社では、温度差が激しい家は絶対につくりません。25年以上前から高気密・高断熱の住まいづくりに取り組み、その特性をしっかりと活かした、省エネで快適な暮らしを長年にわたり提案してきました。職人たちは、断熱材を隙間なく施工することに手間を惜しみません。そして、床下から小屋裏・ロフトまで、すべてほぼ一定の室温を保つことができ、お客様に喜ばれています。

 

暑さや寒さを我慢することなく、末永く快適に住むことができる「室温が一定した家」を建てることが、近年ますます大事になっています。

“健康住宅"のウソ・ホント

“健康住宅"のウソ・ホント

杉山 義博

幻冬舎メディアコンサルティング

ハウスダストによるアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、ヒートショックによる心筋梗塞や脳梗塞など、住まいが私たちに与える健康被害が大きな問題となっている。住宅メーカーは競って「健康住宅」を称して家づくりを提案をし…

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