人が一生で吸う空気で最も多いのが室内の空気だが…
部屋に浮いているホコリがどのように動いているのかが分かる特殊なカメラで撮影した動画を見ると、びっくりするほど大量のホコリが舞っていて、私たちがそれらのホコリをたくさん吸い込んでいることがよく分かります。
人間が一生で吸う空気のうち、最も多いのが室内の空気(57%)だといわれています。その室内に、もしホコリやカビがまん延していたとしたら、体に与えるダメージの大きさは容易に想像ができます。
ホコリやカビがまん延する部屋に設置した空気清浄機のフィルターは、すぐに真っ黒になります。これほど汚れた空気を日常的に吸っていると、人間の肺そのものがフィルターの役割を果たして汚れていきます。
空気清浄機のフィルターは交換できますが、人間の肺は交換できません。ホコリを含む汚れた空気を長期間にわたって吸い込み続けていると、気管支ぜんそくやアレルギー、肺がんなど、さまざまな病気になる可能性を秘めているのです。
カビが最も好む「高温・高湿」の環境とは?
適切に換気がされていない高気密・高断熱住宅は、その気密・断熱性の高さゆえに空気の流れが滞って湿気がこもりやすくなり、結露やカビが発生して構造材を腐らせることが社会問題になっています。
家の中に少しでも温度差があれば、その部分に結露が発生しやすくなります。しかも床下や壁の中など、家の耐久性に大きく関係するにもかかわらず目につきにくい場所で結露が発生し、家が腐ってしまうのです。
家でいちばんカビが生えやすいのは、湿度が高い場所です。特に日が当たりにくい北側に位置する部屋やトイレ、浴室などは、結露によって水分がつき、カビが繁殖しやすくなります。
外壁に面していて暖房が届きにくい押し入れの中や家具の裏なども、カビが生えやすい場所です。
一般の家庭で最適といわれる湿度は、40~60%程度です。湿度が少なすぎると室内が乾燥し、目・肌・のどなどに悪影響を与え、冬は風邪をひきやすくなります。逆に湿度が65%を超えてしまうと、今度はカビ・ダニが活動しやすくなり、繁殖してしまいますので、適度な湿度を保つことが大事になります。
カビが最も好む環境は、温度が20~30℃、湿度が75%以上の高温・高湿の場所です。風呂場は水分が多く、カビの生育に適した暖かい温度が保たれているため、カビが非常に発生しやすい場所です。
風呂場に生えるカビは主に黒カビですが、まだ目には見えない状態でも、黒カビの原因菌が至る所に潜んでいることがあります。天井などについた目に見えない黒カビが胞子をまき散らし、気流に乗って家中に広がり、家全体を汚染することもあります。
一般的なカビの自衛策としては、「基礎の防湿フィルムの施工精度を上げる」「暖房器具を見直す(石油ストーブやファンヒーターなど燃焼系の暖房器具は水蒸気を発生させるので避け、エアコンやオイルヒーターを用いる)」「室内に空気がとどまらないように家具のレイアウトを変える」「除湿機や除湿剤を使って除湿をする」などの方法があります。
私の会社では、湿気や結露から建物を守るための対策として、「二重通気」の工法を取り入れた住まいづくりに取り組んでいます。二重通気は、外断熱ならではの工法です。内装材と断熱材の間を「内側通気層」、断熱材と外装材の間を「外側通気層」と呼ぶのですが、この2つの通気層を通して室内と軀体内の両方に空気を通わせることによって、湿気や結露から建物を守ります。これにより家の長寿命化を実現しました。
これは外断熱だからできることであり、内断熱の場合は、柱と柱の間を断熱材が埋めているため内側通気層を設けることはできません。また、そもそも内断熱は柱が内外の両方の空気にさらされているため、内外の温度差による結露の発生や、木材のゆがみの原因になる恐れがあります。これらの理由から、私の会社では、高気密・高断熱住宅が注目されるずっと前から、基礎から屋根までの「オール外断熱」を徹底してきました。
すき間が少ない現代の家にはパワフルな空気循環が必要
汚れた空気がこもりやすい高気密・高断熱住宅ですが、すき間だらけだった日本のかつての住宅に比べて、室内の空気を常に新鮮に保つ「計画換気」を行いやすいというメリットがあります。家の気密性が高いほうが、給気口から新鮮な空気を取り入れて排気口から出すという働きがスムーズになるからです。
ただし従来の換気システムでは、各部屋に送り込まれる空気は6畳間だと1時間あたりせいぜい12~15㎥程度です。この程度の風では部屋の空気をわずかに攪拌はするものの、部屋全体を換気するには不十分です。
室内の湿気や汚れた空気をすべて入れかえ、いつでも新鮮な空気を部屋のすみずみまで送り届けるには、大量の空気の流れが必要になるので、よりパワフルなシステムであることが求められます。
そのため私の会社では、換気の質にこだわり、1993年頃から全熱交換換気ユニットを使った第1種換気システムを標準採用してきました。
「熱交換換気」とは、外の新鮮な空気を取り入れる時に、「熱交換素子」という部分を通じて熱交換を行い、外気を室内の空気の温度に近づけて取り入れる方法です。外の空気は空気清浄フィルターでホコリや花粉をカットしてから熱交換され、ほどよい温度にされてからダクトを通してリビングや寝室、子ども部屋などに送られます。
2005年からは、さらなる空調の理想を求めて、各部室の隅々まで確実な換気空調ができる全館空調システムの開発を始めました。2012年には、この空調システムが今までにない新しい技術だと認められ、特許を取得しました。それが現在、全国で展開している「マッハシステム」です。
マッハシステムでは、2階のホールに面した場所などに「空調ユニット(空調室)」を設置し、そこに屋外からの空気や部屋の中を循環して戻ってきた空気を集めて浄化します。そしてちょうどよい温度にした後に、小型の送風機を通じて各部屋に送り込みます。換気量はこれまでと同じですが、家の中の空気が常にパワフルに循環しており、その空気とともに新しい空気が混ぜ合わされて送られるため、部屋の隅々まで新鮮な空気が行きわたります。
マッハシステムは換気だけではなく、冷暖房、除湿、空気浄化、換気のすべてを行う、「24時間換気システム」を超えた「空調(空気調和)システム」です。温度と湿度を24時間コントロールしているので、結露やカビの発生を抑制し、さらにフィルターによってろ過されたクリーンな空気が各部屋に送り届けられる仕組みです。そのため、アレルギーに悩む人や赤ちゃん、子どもにも安心の空気環境をつくることに成功しました。