中国、弱い経済指標を確認

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

米中通商協議は5月に入ってから緊張の度合いを高めました。しかし、中国の主要な経済指標に緊張が高まる前から一部のデータの悪化が示されました。4月の悪化の背景のうち、連休(春節)時期のズレに伴い底上げされた好調な3月データの反動減などは割り引くことが必要な面もありますが、今後の中国経済を考える上で気がかりな点もあります。

中国主要経済指標:米中通商協議緊迫化の前から経済指標に悪化傾向

中国国家統計局が2019年5月15日に発表した4月の工業生産は前年同月比5.4% と、市場予想( 6.5%) 、前月(8.5%)を下回りました。同日に発表された4月の小売売上高は前年同月比7.2%と、市場予想(8.6%)、前月(8.7%)を下回りました。

 

 

1-4月の都市部固定資産投資は前年同期比6.1%と市場予想(6.4%)、前月(6.3%)を下回りました(図表1参照)。部門別に見ると、政府など公的部門の投資の伸びが拡大する一方、民間の伸びは鈍化が続いています。

 

[図表1]中国固定資産投資、民間、公的部門別の推移 月次、期間:2016年4月~2019年4月、前年同期比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]中国固定資産投資、民間、公的部門別の推移
月次、期間:2016年4月~2019年4月、前年同期比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:固定資産投資、乗用車販売、付加価値税

米中通商協議は5月に入ってから緊張の度合いを高めました。しかし、中国の主要な経済指標に緊張が高まる前から一部のデータの悪化が示されました。4月の悪化の背景のうち、連休(春節)時期のズレに伴い底上げされた好調な3月データの反動減など割り引くことが必要な面もありますが、今後の中国経済を考える上で次の点は気がかりです。

 

まず、成長に偏りが見られることです。例えば、固定資産投資は前年同期比6.1%と、前月を下回りましたが、内容を見ると同7.8%と公的部門による投資は堅調な一方で、民間部門の投資は同5.5%と前月を下回っています。

 

投資をセクター別に見ると、製造業投資が軟調でした。項目としては、自動車関連などがマイナスとなっています。

 

工業生産を見ても製造業は軟調で、公益業などを例外に下押し圧力が強まっています。「自動車が売れないから生産を控える」動きになっていると見られます。

 

次に、小売売上高では自動車(乗用車)販売の回復が遅れている点が気がかりです。中国汽車工業協会によると、4月の新車販売台数は前年同月比マイナス14.6%となりました。3月は一桁のマイナスでしたが、4月は再び二桁のマイナスとなりました。中国の4月からの減税(付加価値税)で、自動車メーカーにかかる税率が16%から13%に引き下げられたことに伴い、新車価格が引き下げられたものの効果は見られなかった点は気がかりです。

 

中国のインフレ率を消費者物価指数(CPI)で見ると、アフリカ豚コレラの影響もあり上昇傾向です(図表2参照)。

 

 

[図表2]中国の小売売上高と消費者物価指数の推移 月次、期間:2016年4月~2019年4月、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]中国の小売売上高と消費者物価指数の推移
月次、期間:2016年4月~2019年4月、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

可能性は低いと思われますが、仮にインフレ率の上昇が継続するようであれば、消費への影響も懸念されるからです。

 

もっとも、これらの経済指標が公表されても中国株式市場は小幅ながら反発したように、悪い話ばかりでもないようです。期待しているのは、中国当局による景気てこ入れ策です。当面は金融緩和による下支えを予想しています。(米中通商摩擦懸念を受け)5月に新たに繰り出された政策は預金準備率の引き下げと、流動性供給でした。

 

金融政策に加えて、不動産市場における規制緩和や、やや鈍化が見られるインフラ投資の再開も考えられます。米中通商協議が解消するのが効果的な景気対策なのでしょうが、景気に配慮して交渉を続ける可能性が高いように思われます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『中国、弱い経済指標を確認』を参照)。

 

 

(2019年5月16日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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