英メイ首相、6月上旬に退任時期表明の余波

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

長期化するEU離脱交渉を背景に、5月月初の地方選挙での歴史的敗北、低迷する支持率、否定していた欧州議会選挙への参加など苦しい立場のメイ首相の退任の流れが固まりました。仮に党首選となり、後任の保守党党首に強硬派が選ばれれば、合意なき離脱も懸念されます。発表を受け、ポンドは下落しました。

メイ英首相退陣の意向:6月上旬の退陣表明で合意、後任党首を模索の動き

メイ英首相は16日、与党・保守党の議員委員会「1922年委員会」(与党・保守党の議員でつくる有力組織)のブレイディ委員長らと会談し、メイ首相が6月上旬に退任時期を表明することで合意しました。

 

 

メイ首相は退陣スケジュールの発表に先立ち、最後にもう一度だけ、欧州連合(EU)との離脱合意案の議会承認に向け、離脱協定を国内法として法制化するための「EU離脱協定法案」を6月3日の週に議会に提出する意向です。次期首相を目指す有力候補らは既に党員への働き掛けを開始しており、メイ首相の離脱案の道筋よりも強硬なEU離脱を訴えてきたジョンソン前外相も保守党党首選への立候補を表明しました。

どこに注目すべきか:1922年委員会、欧州議会選挙、ポンド安

長期化するEU離脱交渉を背景に、5月月初の地方選挙での歴史的敗北、低迷する支持率、否定していた欧州議会選挙(図表1参照)への参加など苦しい立場のメイ首相の退任の流れが固まりました。仮に党首選となり、後任の保守党党首に強硬派が選ばれれば、合意なき離脱も懸念されます。発表を受け、ポンドは下落しました。

 

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[図表1]欧州議会選挙、英国の主な政党の支持率の推移 時点:2019年4月30日(左)、2019年5月9日(右) ※SNP:スコットランド国民党、UKIP:英国独立党 出所:YouGovのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]欧州議会選挙、英国の主な政党の支持率の推移
時点:2019年4月30日(左)、2019年5月9日(右)
※SNP:スコットランド国民党、UKIP:英国独立党
出所:YouGovのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

メイ首相が保守党党首からの退陣圧力を受けた背景に支持率低下があげられます。英国の調査会社が、明日総選挙があるとした場合の投票先政党を尋ねたところ保守党は25%未満にとどまりました(図表2参照)。2年前の総選挙時の世論調査では保守党への支持は4割を上回っていました。労働党の支持率は当時とかわらず、与党保守党の落ち込みが引き立ち、総選挙を打ち出しにくい状況です。

 

[図表2]明日総選挙が実施された場合の支持政党 出所:YouGovのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]明日総選挙が実施された場合の支持政党
出所:YouGovのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

国民投票から3年近くが経過したにもかかわらず、英国のEU離脱交渉は先行きが依然不透明で、交渉長期化への不満が支持率低下の要因の一つと見ています。この交渉の長期化の副産物として、参加しないはずであった5月23日からの欧州議会選挙も参加必至の情勢です。今回の議会選挙を第2の国民投票と位置づける声もあります。欧州議会選挙は過去、投票率が低く、解釈に注意は必要ですが、世論調査では、合意の上での離脱を目指す穏健派(保守党と労働党への支持を穏健派と見なせば)、残留を明確に支持する自由民主党などの残留派、そして最近結成されたブレグジット党に代表される合意なき離脱も辞さない強硬派に支持が3分されています。英国議会で、様々な協議案が過半数を獲得できなかった背景でもある3つ巴の状況は、世論でも同じ構図です。いまさらながら、残留か離脱かだけを問う国民投票が適切だったのか疑問が残ります。

 

昨日のポンド安は、まだ先のことながら、市場が合意なき離脱を次の点で懸念したためと見られます。1つ目はメイ首相の後任にジョンソン前外相など強硬派が就任することです。

 

議論の方向が変わる可能性があります。2つ目は、後任が誰であれ、3分された(世論と)議会での過半数獲得に困難も想定され、離脱期限(10月30日)切れが気になります。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『英メイ首相、6月上旬に退任時期表明の余波』を参照)。

 

 

(2019年5月20日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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