本連載は「税務調査を支援する税理士の会」著、株式会社エッサム編集協力、税理士法人クオリティ・ワン代表社員・渡邊勝也税理士監修の『オーナー社長のための税務調査完全対応マニュアル』(あさ出版)から一部を抜粋し、税務調査の連絡を受けた中小企業オーナーの役に立つ対処法等を紹介します。今回は、役員の「非課税の経済的利益」について確認のポイントを見ていきます。

出張手当は法人、個人にとって節税策として有効だが…

非常に細かな点ですが、役員に払われた経済的利益のうち、非課税のものも税務調査で確認されるポイントです。節税として非常に有効な項目であるうえ、数が多いので、注意しましょう。

 

・出張手当

・通勤手当(最高1月10万円)

・職務上必要な制服その他の身の回り品

・永年勤続者の記念品等(おおむね5年以上の間隔)

・残業または宿日直をした者に支給する食事

・寄宿舎等の水道光熱費

・月額300円以下の生命・損害保険

・病気見舞金

・災害等による生活困難による貸付金の利息相当分

・社会通念上一般的なレクリエーション費用

・食事の50%以上を負担かつ食事代から負担額を引いた月額が3500円以下

 

たとえば出張手当は法人にとっても、個人にとっても節税策として有効な方法です。

 

ただし、この金額が税務調査で問題になります。ここで税務調査官が出してくるのは「日当2万5000円」という数字です。これ以上であると、「高すぎるのではないか」と主張してくる可能性が高いと言えます。

 

というのも、「国家公務員等の旅費に関する法律」で、宿泊料、日当等を含めて最高2万6700円と規定されているからです(2018年12月時点)。そのため、税務調査官の常識として出張手当は最高2万5000円前後、とされがちなのです。

 

役員の社宅については、役員から賃料相当額を毎月一定額受け取れば、企業として課税されません。そのため、計算してきっちり徴収しておくことが大切です。計算方法は3つありますが、固定資産税で計算する場合、豪華な住宅等でなければ相場の20〜50%くらい徴収しておくと安全圏と言われています。

 

給与関係でいうと、通常の勤務時間外において勤務を常例する職種、たとえば守衛、早朝や深夜に勤務するホテル・旅館、牛乳販売店等の住み込み従業員などの場合、家賃を全額負担しても課税はされません。万が一のときに勤務時間外にも対応しなければならないサーバー管理者を会社の近隣に住ませる場合の家賃なども、認められるケースがあります。

 

[図表1]役員から徴収する賃料の計算式
[図表1]役員から徴収する賃料の計算式

 

同族会社の使用人か、みなし役員かを判定する基準

同族会社の「みなし役員」は、税務調査で大きな論点となりやすい項目です。

 

特に従業員に同族がいる場合には注意しましょう。たとえば妻を役員に入れず、使用人として給与を支払っている場合などです。

 

同族会社の使用人として認められるのは、次の場合です。

 

・株式所有割合50%超となるまでの第3順位までの株主グループに属している

・属しているグループの割合が全株式の10%を超えている

・使用人とその配偶者などの株式所有割合の合計が5%を超えている

・会社の経営に従事している

 

同族会社の使用人か、みなし役員かを判定する重要な基準は、「会社の経営に従事しているかどうか」です。その判断は、主に[図表2]で行われ、あてはまれば、「みなし役員」とされます。

 

一方、単なる経理事務作業や、経営者の指示にしたがって販売、仕入れの実務責任を負っている場合には「使用人」として認められます。

 

[図表2]同族会社のみなし役員とは
[図表2]同族会社のみなし役員とは

 

【税務調査を支援する税理士の会】

田中 久夫 / 加藤 元弘 / 植﨑 茂 / 藤原 重光 / 後藤 勇輝 / 岩澤 信吾 / 中山 隆太郎 /
永井 孝幸 / 前田 吉彦 / 石垣 貴久 / 笠原 伸哉 / 内芝 公輔 / 南村 博二 / 本田 将智

オーナー社長のための税務調査完全対応マニュアル

オーナー社長のための税務調査完全対応マニュアル

渡邊 勝也,田中 久夫,加藤 元弘,植﨑 茂,藤原 重光,後藤 勇輝,岩澤 信吾,中山 隆太郎,永井 孝幸,前田 吉彦,石垣 貴久,笠原 伸哉,内芝 公輔,南村 博二,本田 将智

あさ出版

中小・オーナー企業のための税務調査の対策本が登場。 多くの税務調査を経験してきたからこそわかる最新の税務調査の傾向と対策を完全解説します!事前準備の進め方、調査当日の注意点&ケース別の対応、税理士の活用法、国税…

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