管理状況を確認される「現金実査」
現金がきっちり合うことが大切
まず、税務調査で必ず行われることとして、現金実査があります。税務調査官は、[図表1]のような表を持ってきて、現金実査をしていきます。現金実査で見られるのは、次のようなことです。
❶経営者の現金管理能力
経営者がルーズなのか、きちっとしているのかを現金の管理状況で見られます。特に飲食店等では、現金実査の結果によって心証がかなり変わります。無予告で税務調査に来ても、この現金実査がきっちり合っていると、「この会社はちゃんと管理をしているから大丈夫だ」という前提で進んでいくことが多いです。
❷管理者の確認
申告時に添付する「事業概況書」には、現金を管理する担当者が書いてあります。ここに記載された担当者と実態の管理者が合っているかどうか、整合性を確認されます。
❸簿外預金の可能性
税務調査で金庫を開けたときに、経営者個人の通帳が混在していることがあります。これらの個人通帳の中に売上の一部が入金されていたりすると、簿外預金の可能性があると判断されます。
❹計上漏れの可能性
現金の流れは必ず確認されます。①現金売上の管理(お客様から受け取った現金をどう管理しているか)、②計上時期(いつ、どう帳簿をつけているか)、③閉店後の現金の管理(お店を閉めた後、現金は社長が持って帰るのか、担当者が持って帰るのか、または貸金庫に預けるのか)、⑤銀行に入金するのは誰か、そして⑥直近の管理表と現金がきっちり合っているか、です。
「契約書」のチェック項目とその他の重要書類
契約書を見る税務調査官の視点
契約書をチェックする際の税務調査官の視点は、次のようなものです。
●手書き・パソコン・市販のどれか……最近は、契約書はほとんどパソコンで作成することが多いでしょう。パソコンの場合、同じタイトルのファイルが複数ないか、ゴミ箱に疑わしいファイルがないかなどを確認されます。保存日も確認されます。保存日が税務調査の直前であれば、上書きして代えている可能性があると見られることがあります。
●対価……契約書に記された対価が、会計上の金額と合っているかどうかを見られます。
●筆跡……取引相手からもらったはずの契約書の筆跡が、自社の経理担当者のものではないかなど、仮そうされていないかどうかを見られます。
●契約内容……給与なのか、外注なのか、売上の割戻しなのか、仕入れの割戻しなのかなどです。
●印鑑……誰が押したものなのか。たとえば、取引相手の名前のところに、自社が持っている印鑑が押されている場合には、仮そうしている可能性があると判断されます。
●作成者……契約書を作成したのは誰なのかです。
●日付……直近の日付であれば、仮そうを疑われる可能性があります。
●紙の状態……契約書に書かれた日付と紙の状態は見合っているか、などです。たとえば5年前の契約書なのに、紙が非常にきれいな状態で保存されていると、「後から作成したのではないか」と見られます。
●印紙の貼りモレ……契約書にはきちんと印紙が貼られているか。
●住所……後から作成した場合、当時の住所と整合性が合っていない場合もありますので、チェックされます。
その他の確認事項
その他、確認すべき契約書・書類、また証拠資料と具体的調査手法については、一覧表[図表2]を確認してください。特に問題になりやすいのは、一覧表で太字にしています。
たとえば、売上にかかわる契約書は「取引基本契約書」「売買契約書」「請負契約書」などで、収益の計上時期が問題になります。収益は、原則商品・サービスの提供が終わったとき、もしくは資産の引渡しをしたときです。特にBtoBで仕事をしていて、1個あたりの金額が大きい場合は、収益の計上基準を厳しく見られます。同様に、不動産や機械など、金額が大きい資産についても注意が必要です。
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