後世に伝えたいソロス氏の投資家としての生き方と考え方

投資家として伝説的な成功を収めているジョージ・ソロス氏。今回は、ソロス氏に大きな影響を受けた筆者が、日本の若者に伝えたい想いについて見ていく。

ただひたすらに市場と向かい合ってきたソロス

筆者がソロス氏から学んだことと訊かれて思い浮かべるのは、再帰理論(セオリー・オブ・リフレキシビティ)ではない。セオリーよりも、ソロス氏の投資家としての生き方、考え方に、筆者は大きな影響を受けた。そもそも投資というものに対して、若い人の中にはよい印象を抱かない人がいるかもしれない。だが、資本主義と市場経済は投資なくしては成り立たない。

 

そして、資本主義や市場経済は、少なくとも今のところ、最も優れた選択肢であることもまた間違いはないだろう。人間や社会が成長することを求めるのであれば、市場において競争を行うことが欠かせないからだ。だから、ソロス氏は資本主義や市場経済を否定しないが、過度な競争や格差は弊害があるので、適切なルールや規制が必要だと主張している。

 

ソロス氏の言が素晴らしいのは、彼が市場経済の勝者であるからだ。その気になれば、市場の歪みを利用して大きな投資収益を上げることができるのにもかかわらず、その歪みを是正することを提言しているのだ。

 

よく世界の二大投資家としてバフェット氏と並び称されるソロス氏だが、純粋に投資家として市場の歪みに機会を見つけて富を築いたという意味では、バフェット氏よりもソロス氏のほうが投資家らしい投資家ではないかと筆者は感じている。なぜならば、バフェット氏の長期投資の手法とは、投資家というよりも経営者や事業家のやり方に近いからだ。

 

 

実際にバフェット氏は、株式の大半を買い取った会社の経営者との対話を通じて長期的に経営を立て直すといった事業投資的な投資で成功を収めた。バフェット氏の資産はソロス氏よりも多額だが、それは経営者として、企業価値を高めることで稼いできたことによると筆者は考えている。

 

一方、ソロス氏は、ソロス・ファンドという組織のリーダーではあるものの、投資した会社の経営に口を出すことはなく、ただひたすらに市場と向かい合ってきた。市場での売買によって利益を上げるという意味で市場経済をてこに、市場のルールに則って巨額の富を築いた投資家としてソロス氏の名は歴史にその名が刻まれる。

 

誤解を招かないように言い添えれば、ソロス氏は個人投資家とも全く違う。巨額の資金運用において高いリターンを上げる期待に応えるプレッシャーの大きさだけでなく、ソロス氏の規模のファンドで利益を上げ続けるためには、想像を絶するほどの体力と知的なタフネスが必要なのだ。だからだろうか、ソロス氏のたたずまいはいつも一種の厳しさに満ちていた。投資は孤独な戦いであること、誰のせいにもできず責任をすべて自分で引き受けねばならないことを、筆者はソロス氏から学んだ。

投資家、経営者、起業家である立場から伝えたいこと

筆者は投資家であると同時に、スパークス・グループの経営者でもある。アメリカでアベ・キャピタル・リサーチをやっていた頃は、ソロス氏のように一人で戦っていた。ソロス氏の姿に啓発されながらも自分は孤独な投資家であることには向いていないと感じていた。帰国後は仲間を募ってスパークスを起ち上げた。市場の歪みの中に個別の投資機会を見つけ出し、大きなポジションを取る投資家としては、いまだソロス氏に遠く及ばない。

 

ただ、企業の調査を丹念に積み上げる中に大きな投資機会を見つけることで、日本のソロスになろうとの初心は持ち続けたい。だが、投資家であり、経営者、起業家でもある立場から、日本の若者に伝えられることがあるかもしれないと思う。それが今回筆をとった理由の一つだ。

 

最初に出会った時、ソロス氏は55歳で、筆者は31歳だった。現在の筆者は60歳になり、当時のソロス氏の年齢を超えている。当時の筆者がソロス氏に多くのことを教わったのと同様に、今の筆者も若者に向けて語るべきことがあるのではないか、と感じたのだ。

 

現在、日本の若い人が置かれている環境は、あまりよいものではないといわれている。人口減少と高齢化社会の到来で、年金負担は重くなり、にもかかわらず賃金はなかなか上がらない。教育費や介護負担といったネガティブな話はそこらじゅうにあって、抑圧的な空気ばかりが高まっている。

 

だが、インフレを契機とする株高の到来は、日本では久々となる明るいニュースだ。今、長期的な株式投資を始めることで、普通の人でも大きな富を築くことができるようになると筆者は感じている。そして若ければ若いほど、投資期間を長くとれるのでより大きなリターンを獲得できる可能性も高い。

起業も投資も、最も必要なのは「忍耐力」

現在、日本の若い人の間では起業熱が高まってきているという。起業する時にどんな事業をするかを選ぶことと、どんな投資先を選ぶかというのは、本質的に同じものだと考えている。なぜならばどちらも、自らの資金をどのように活用するかを考えることだからだ。そしてどちらも、世の中を見通す目がなければうまくいかない。

 

 

起業も投資も、どちらも最初から最後まで勝ち続けられる人はほとんどいない。たいていは山あり谷ありで、少しずつ成長していくものだ。だが、たいていの人は最初の失敗でやめてしまう。逆説的なようだが、成功した人というのは、失敗しても決して諦めずに続けた人のことをいうのだ。起業も投資も、最も必要とされるのは忍耐力だ。もちろん知力も体力も胆力も必要だが、最終的にものを言うのは忍耐力だと筆者は思う。ソロス氏も、大きな勝負をする時には勝つまで我慢する忍耐力を持った人だった。

 

筆者の願いは、本連載の読者の中から、投資によって大きな富を築く人が出てきてくれることだ。さらに言えば、そのような人の中から新しいインダストリーを創造し、日本を変えるような起業家・経営者も出てきてほしいと思っている。社会を変えるにはヒトやモノを動かす大きな力が必要だ。その力の土台となるマネーは投資によって手に入れることができる。大きな夢を持つ若い人は、今株式市場に到来している大きなチャンスをどうか逃さないでほしい。そして、首尾よく力を手に入れた時には、どうかよりよい社会を築くためにその力を使ってほしいと願っている。

 

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スパークス・グループ株式会社 代表取締役社長

北海道札幌市出身。上智大学経済学部卒。米ボストンのバブソンカレッジでMBA取得。

1981年、野村総合研究所に入社後、ニューヨークのノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルに出向し、米国の機関投資家向けの日本株のセールスに従事。1985年にニューヨークで独立し、ジョージ・ソロス氏から1億ドル(当時の為替レートで約200億円)の運用を任される。

1989年、日本でスパークス投資顧問(現スパークス・グループ)を設立。2001年に上場。2005年、ハーバード大学ビジネススクールでAMP取得。現在の投資対象は日本の上場株だけでなく、アジアの上場株、再生可能エネルギー発電施設や不動産といった実物資産、そして米国、イスラエル、日本などの未上場企業にまで広がってきたが、投資対象の価格と価値の差に着目し主体的に働きかける投資哲学は一貫している。

プライベートでは作詞、作曲、ギター演奏に加え、絵画も描く。

近著に『暴落を買え!-年収300万円から始める資本家入門-』(ビジネス社 2017/5/24)。

著者紹介

連載ソロスに学んだ、株という恐るべき「知的兵器」

本連載は、2015年1月22日刊行の書籍『株しかない』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

株しかない

株しかない

阿部 修平

幻冬舎

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