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1年後の運用金額は5倍の5億ドル(約1000億円)に
ソロス氏との出会いは、筆者の人生の最大の転換点だった。それまで1000万ドルでしかなかったアベ・キャピタル・リサーチの運用規模は、一夜にして1億ドル規模となり、その1年後には5億ドルを超えていた。たった1冊のレポートが、筆者を新しい次元の投資へと引っ張り上げてくれた。
ソロス・ファンドから受託した1億ドルという運用資金は、他のクライアントとは比較にならないものだ。筆者は、ソロス・ファンドの専属マネジャーとして、毎日のようにソロス氏と運用方針の話し合いを行った。ソロス氏は休暇でスキーに行っている時にも、筆者に電話をかけてきた。ソロス・ファンドの資金を運用している間、ソロス氏と話をしなかった日は一日もなかっただろう。
ソロス氏から1億ドルの運用を任された筆者は、すぐさまそれを全額、レポート通り不動産会社と鉄道会社の株式に投資した。その直後に土地の含み益資産を評価する投資が大きなトレンドを形成し、不動産を大量に持つ会社の株が軒並み急騰した。
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下記の図は、当時、筆者が投資した銘柄の一つである東武鉄道の株価推移だ。1985年3月を基準とすると、1989年末にバブルがはじけるまでの4年半で、約7.7倍も株価が上昇していることが分かる。
【東武鉄道の株価推移】

筆者のレポートで取り上げた含み資産銘柄の株価が動くのを見たソロス氏は、日本で始まった資産バブル相場に合わせて、本格的な勝負に出た。1億ドル(約200億円)で始まった投資は、1年後には価格上昇分も合わせて5億ドル(約1000億円)にまで広がった。当時のソロス・ファンドの運用残高は20億ドルだったから、その4分の1を筆者が運用していたことになる。
保有資産で評価すると日本の資産株は割安
そもそも、企業の業績ばかりでなく保有資産を評価することは、日本では馴染みがなくても欧米では当たり前の投資尺度であった。欧米でのやり方を当てはめると、日本の資産株が割安なのは説明の必要がなかった。不動産会社や鉄道会社の株が今後、大幅に上昇していくことは、ソロス氏にとっては火を見るよりも明らかだったのだ。
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不動産を資産として見るというのは、現在日本でも上場されている不動産REITと同じ考え方で、決して奇抜な発想ではない。不動産が値上がりすると考えるのであれば、誰でもREITを購入するだろう。また、値上がりすると予測できなくても、その価格が相場の10分の1で売られていたとしたら、誰でも割安だと感じて買い占めるはずだ。ごく簡単に言えば、ソロス氏と筆者が行ったのは、そのようなことだった。
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