トルコリラ大幅安
エルドアン政権への不安高まる
■5月6日、トルコ最高選挙管理委員会(YSK)は、3月末に実施されたイスタンブール市長選の結果を無効とし、6月23日にやり直し選挙を実施することを発表しました。エルドアン大統領率いる与党・公正発展党(AKP)は同選挙で敗れ、市長選の無効と再選挙の実施を求めていました。
■YSKの発表に対し、金融市場ではエルドアン政権の意向を受けた決定との見方もあり、同大統領の政治や経済への影響に対する懸念が高まったことからトルコリラの売りがふくらみました。
トルコリラ(対円、対米ドル)の推移
中銀の信認低下も懸念材料
トルコリラは下落基調が続く
■トルコリラは2018年に対米関係の悪化から大きく下落した後(トルコショック)、回復傾向にありました。しかし、本年3月下旬には外貨準備高の大幅減少をきっかけに不安定な動きとなり、トルコリラは下落基調に転じました。
■4月の金融政策決定会合では、中銀が金融引き締め姿勢を後退させたため、金融引き締め解除を求めるエルドアン政権に配慮したとの見方から中銀に対する市場の信認が低下したことも、トルコリラにとってマイナス材料となりました。5月8日現在、トルコリラは対円では1リラ17.8円と、年初から14%下落しました。
インフレ率の推移
トルコリラは一進一退、上値の重い展開を見込む
■米国は金融政策正常化に慎重になっており、金利の先高観はないため、新興国通貨は総じて落ち着いた状況が続くとみられ、トルコリラの下支えとなると考えられます。一方でトルコリラの動向に大きく影響を及ぼす米国との関係では、トルコのロシア製ミサイル導入などを巡り多くの懸念材料があります。
■米国との関係悪化やエルドアン政権の政治、金融政策などへの圧力が嫌気されれば、トルコリラは一進一退ながらしばらくは上値の重い展開が見込まれます。トルコリラの安定にはこれらの改善が必要でしょう。
(2019年5月9日)
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