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「長期的には世界の経済は成長する」という前提に立つ
あらためて強調したいのは、ピクテの資産運用の基本が資産保全であるという点です。資産保全、つまり顧客の資産の価値を物価上昇、災難などから守ることを目標とした運用と言えます。そのために、
①グローバル分散投資
②長期投資
を愚直に実行してきました。
「グローバル分散投資」――よく耳にする言葉ですが、日本で本当の意味を理解されている方は少ないようです。新聞や雑誌の紹介を読んだり、銀行や証券会社の方々から説明を受けた方は多いでしょう。しかし、疑問に思ったことはありませんか?
なぜ、グローバルに投資をしなければならないのか?
なぜ、分散投資をしなければいけないのか?
なぜ、長期投資をしなければならないのか?
そもそもグローバルに投資するのは、
「1カ国よりも世界の経済に投資したほうが、経済成長によるリターンという果実を得るための確実性がある」し、「短期的な市場予測は信頼できないが、世界の経済が長期的に成長を続ける可能性は高いと期待できる」からです。
「好調に見えた国の経済が10年後には低迷してしまい、その国の株式ファンドへの投資で大きく損をしてしまった」――これはよく聞く話ですよね。
また、分散投資をするのは、
「さまざまな資産を組み合わせたほうが、トータルの資産価格が安定する」というセオリーがあるからです。この点に関しては後ほど詳しく説明します。
そして、長期投資をするのは、
「短期的な売買で勝ち続けることは難しい」
「長期投資でないと成長の果実をしっかりと得ることができない」
というセオリーがあるからなのです。
経済や企業の成長は常に一定ではありません。好況期と不況期を繰り返しながら成長していきます。それに伴って株式や債券、不動産価格は変動していくのです。もちろん、そのタイミングが事前に分かって、安値で購入し、高値で売却できれば言うことはないのですが、実際には運用のプロでもそう簡単にうまくいくとは限りません。
株式にしても不動産にしても、市場の下落局面ではいろいろな悪い話が出てくるので、なかなか安値で購入しようという決断はできないものです。短期投資ではなおさらでしょう。保有している資産の価格が下落してくれば怖くなって売りたくなりますし、上昇すればさらに買いたくなってくるものです。その結果、高値で購入し安値で売却せざるを得なくなるといったことにつながりかねません。
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しかし、「短期的には低迷することはあっても、長期的には世界の経済や企業の業績は成長する」という前提に立ち、長期的な観点から投資を行うことができれば、市場価格の下落局面でもあまり気にする必要もなく、さらに余剰資金があるなら「バーゲンハンティングができる」とワクワクしてくるものです。
ただし、そのためには長期投資に対する認識をしっかりと持つ必要があります。
長期投資を行うとすると少なくとも10年間、もしくは20年間以上の期間を考えなければなりません。「20年? それは長すぎるよ」と考える方もいると思います。しかし、人生80年の時代です。日本人の平均寿命は女性で87.26歳、男性で81.09歳(厚生労働省簡易生命表、2017年)。仮に年齢が60歳としてもまだ人生20年以上もあるのです。
長期的に成長し続ける確率が高いのは一国より世界経済
ここで質問です。これまでに20年間保有してきた金融資産はありますか? ほとんどの方は生命保険と預金以外は経験がないと思います。生命保険も預金も基本的に元本が変わらない金融商品です。一方、資産運用で利用する投資信託等への分散投資となると勝手が違いますよね。
長期投資を行って資産運用を成功させるには、許容したリスク分のリターンが得られる確率を高めることがとても重要になってきます。
以下の図表は各国の株価指数とグローバル分散型の株価指数の2003年8月末から2018年8月末までの15年間のリターンとリスクの実績(年率)を示しています。
横軸がリスクで数値が大きくなるほどリスクが大きくなっています。縦軸はリターンで数値が大きくなるほどリターンが高かったことになります。ちなみにゼロを下回っているのは15年投資してもリターンがマイナスであったことを意味します。
図表からまず認識できることは、グローバル分散投資型の株価指数である世界株式のリスクが各国の株式よりも低かったこと、さらにギリシャ株式の半分以下のリスクであったことです。このことは世界株式への投資は単一株式市場への投資よりも相対的に値動きが安定していたこと、ギリシャへの投資に比べ価格変動率が半分以下であったことを示しています。
同様に、グローバル分散投資型の株価指数である世界公益株式が、世界株式よりもさらにリスクが低かったことも認識できます。世界の公益企業の業績が世界株式に含まれるすべての企業の業績よりも相対的に安定していたため、その特性が価格に反映されたことを表しています。
また、多くの株式はリスクが高くなるほどリターンが高く、右肩上がりのボックスの範囲内に入ることが分かると思います。ただ、ポルトガル株式、フィンランド株式やギリシャ株式などのようにリスクに対してリターンが相対的に悪かった市場や、逆にコロンビア株式やインドネシア株式などのようによかった市場もありました。
この結果を15年前に予測できたかというと、非常に難しかったでしょう。また、今後15年間を見据えた場合、フィンランド株式やギリシャ株式などが逆にリターンがよくなり、コロンビア株式とインドネシア株式のリターンが悪くなる可能性もあります。
長期投資の観点からすると、これらはエラー、つまり運がよかった、悪かったといった部類のリターンで、ピクテの投資目標には入りません。なぜなら、リターンの実現性、再現性、成功確率が低いからです。それでは、長期投資でリターンの実現性、再現性を高めるにはどうすればいいのでしょうか?
その答えは長期的に実現性が高い可能性に期待することです。
ここでの長期とは最低でも10年ですが、「長期的に成長し続ける確率が高いのは単一国の経済よりも世界経済」とピクテでは考えています。特に新興国経済はその成長性からして魅力的です。世界経済の成長とリンクする資産に投資を行うことで、許容したリスクに見合ったリターンが得られると考えているのです。
グローバル分散投資型の株価指数である世界公益株式、世界株式や新興国株式の株価指数はすべてリターンがプラスのボックス圏に入っているようですが、これは偶然ではなく、その資産クラスの特色と言えます。この期間中には、2008年のリーマン・ショック、2011年の欧州債務危機などが含まれていますが、15年という単位では、世界経済は着実に成長してきたのです。
リスクを取った分に見合う長期的なリターンを得るために、ピクテ式投資セオリーではグローバル分散投資が基本となります。
つまり長期投資の極意とは10年後、20年後の市場予測を当てることではなく、「リスクを取っただけ、リターンを得られるか」ということを実現する作業なのです。
萩野琢英
ピクテ投信投資顧問株式会社 代表取締役社長
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