投資の落とし穴…「資産をいかに増やすか」という視点の危険度

今回は、投資において「資産をを守る」という発想の重要性を解説します。※富裕層だけが存在を知るプライベートバンク、ピクテ。この金融機関の歴史は古く、富裕層の資産運用を通じて築いたノウハウがあります。本連載では、ピクテの投資手法をわかりやすく紹介しながら、初心者の資産運用にも役立つ投資テクニックを紹介します。

人口が減少する中で、国が債務を減らす方法とは?

日本は約1100兆円の負債を抱えた世界最大の赤字国です。このままでは国家としての財政破綻も決して遠くないだろうという懸念が広がっています。

 

では、人口が減少する中で国が債務を減らすためには、どのような方法が考えられるのでしょうか。有力な選択肢となるのが、実はインフレーション(物価上昇)によって借金の実質価値を減らす方法です。

 

通常、各国の政府債務状況を判断するには、その国の債務残高を経済規模(GDP)と比較します。EUにおいては、「マーストリヒト条約」によって、ユーロ参加の条件として債務残高が対GDP比で60%を超えないこととする基準(いわゆる「マーストリヒト基準」)が定められています。なぜ60%かというと、同条約が調印された1992年当時は長期金利の水準も考慮した場合、これが問題ある債務比率のラインだと考えられていたからです。長期金利の水準はその時よりも相当低下しましたが、各国は依然としてこの水準を意識しているようです。

 

明治維新以降でみると、日本では現在のように債務残高が対GDP比で大きく増加したことが2度ありました。1度目は日露戦争、2度目は日中戦争と太平洋戦争による債務の増加です。これらの債務問題はどちらも物価上昇に伴って解消したという歴史的事実があります。特に太平洋戦争後の物価上昇は非常に激しく、短期間に物価が100倍以上に上昇する激しいインフレを経験しました。このため通貨価値は大幅に減少し、戦後の日本では通貨の最小単位が銭から円へと変わったのです。

 

現在の債務残高はGDP対比で、太平洋戦争末期をすでに上回る約2.5倍となっています。通常に考えても、普通に返済することは不可能でしょう。しかし、ある程度の物価上昇を起こすことで債務は実質的に減らすことが可能です。また、物価上昇により税収額も増加します。

 

 

個人の資産について言えば、こうした物価上昇に合わせて預金金利が上昇していけばいいのですが、金利の上昇は日銀によって意図的に抑えられています。そのため実質のマイナス金利状態は今後も続く可能性が高く、まして2%の物価上昇が実現したら、資産はどんどん目減りしていくことになるでしょう。

 

それでは、どうすれば実質のマイナス金利を解消することができるのでしょうか。それは物価上昇に勝つ可能性のある投資対象に投資をすることです。

重要なのは「一時的な大儲け」を狙うことではない

リスク管理の話ばかりしてきましたが、市場が平穏な時には実際のところリスクはあまり問題にはなりません。株式であってもREITであっても、そう大きな値動きもなく右肩上がりで推移する、投資家の満足できる時期も少なくありません。しかし、ひとたび市場が下落リスクに敏感なモードに入ると、突然、その資産が本質的に持っているリスクの大きさが姿を現すのです。

 

ピクテは設立以来213年に及ぶ長い歴史の中で、幾多の金融危機や社会・経済を揺るがす幾度もの戦禍や動乱を経験してきました。

 

その一部を挙げてみましょう。1812年の米英戦争、1847年の欧州金融危機、1873年のイギリス大不況、1884年の清仏戦争、1914年第一次世界大戦、1929年世界大恐慌、1939年第二次世界大戦・・・いずれも歴史の教科書に刻まれるような「大事件」です。

 

戦後になると、1971年にアメリカのニクソン大統領が突如ドルと金の交換停止を発表し世界を混乱させたニクソン・ショック、1973年の第一次オイルショック、1987年の史上最大規模のニューヨーク株式市場の大暴落ブラック・マンデー、1991年のソ連崩壊とアジア通貨危機に誘発された1998年のロシア危機、2008年のリーマン・ショック、2010年から今に至る欧州債務危機、2015年夏のチャイナショックと、立て続けに金融危機は起こっています。

 

「歴史は繰り返す」とよく言われますが、投資の世界でもそれは同じです。一国単位、地域、世界と規模はさまざまですが、大きく株価が上昇するバブルのような状態や、何かをきっかけとした突然の大暴落など、極端な上下動に見舞われることは避けようがないのです。

 

投資家の多くは市場が上昇することばかりを想像し、儲けることに意識が向きがちですが、本当に重要なことは一時的な大儲けを狙うことではありません。資産を堅実に増やしながら、数年から十数年に一度繰り返し起こる世界的な金融危機に見舞われても資産を保全す―すなわち、資産を極力減らさないことがポイントなのです。

 

資産を守ることに意識を集中させたピクテ式投資セオリーは、世界市場がグローバル化し複雑に絡み合いお互いに影響し合う現代のような運用環境で、より威力を発揮します。それは富裕層にとどまらず、多くの人たちが資産運用を考える時にこそ、知っておくべき投資手法なのです。

 

しかし日本では、資産を守るための運用の歴史は浅く、一時的な上昇トレンドに乗せられて「資産をいかに増やすか」に注目しがちです。

 

投資の力を借りなければ資産が目減りする可能性が高い、インフレの時代を目の前にした私たちは、「資産をどう守るか」を第一に考えて投資を行わなければなりません。

 

そこで次回からは、インフレ経済の中で、資産の全体設計の考え方を明らかにしつつ、何を対象に、どのように投資をすれば資産価値の減少を防ぐことができるのか、具体的に見ていきましょう。

 

 

萩野琢英

ピクテ投信投資顧問株式会社 代表取締役社長

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社 代表取締役社長

1964年、東京都に生まれる。
学習院大学法学部を卒業後、山一證券、山之内製薬(現・アステラス製薬)での勤務を経て、 2000年にピクテ投信投資顧問株式会社に入社し、2011年に代表取締役社長に就任。
いかなる経済危機に直面しても長期的な資産保全を可能にする「負けない運用」を信念とし、ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド、ピクテ・インカム・コレクション・ファンド、ピクテ・メジャー・プレイヤーズ・ファンド、ユーロ・セレクト・インカムなどを開発。積極的にセミナーも開催。

著者紹介

連載貴族に愛されたプライベートバンクに学ぶ投資手法のノウハウ

本連載は、2019年4月10日刊行の書籍『改訂版 210余年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
投資はご自分の判断で行ってください。本連載を利用したことによるいかなる損害などについても、著者および幻冬舎グループはその責を負いません。

改訂版 210余年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー

改訂版 210余年の歴史が生んだ ピクテ式投資セオリー

萩野 琢英

幻冬舎メディアコンサルティング

世界恐慌、オイルショック、リーマンショック・・・ 歴史の中でいくつも訪れた市場の転換点を乗り越えてきた「ピクテの運用哲学」とは? 今日、日本人にとっては資産保全がますます難しい時代になってきました。金利は限り…

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