税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
妻に離婚を切り出された、年商数百億円のオーナー社長
ある男性は、妻と結婚したあと、会社を設立しました。会社はなかなか軌道に乗りませんでしたが、15年間、朝から晩まで休みなく必死に働きました。男性に独特の才覚があったため、結果、年商数百億円(資産価値は数十億円)の社会的にも一目置かれる大きな会社にすることができました。そのような中で、長年連れ添った妻から突然「あなたと別れたい…」と切り出され、妻の弁護士から、財産分与として、会社の株式を半分渡すように請求されました。
確かに、会社を設立したときは、とても貧乏でしたから、出資金の半分を妻に出してもらいました(ただし、株式の名義は男性名義)。家にはほとんどおらず、家事も育児も妻に任せきりでした。しかし、身を粉にして働いて、会社を大きくしたのは自分です。そのような主張は成り立つのでしょうか。
(1) そもそも、離婚の際には、夫婦で築いてきた夫婦共有財産を、双方で分ける必要があります。それが財産分与です(民法768条1項)。そして、財産分与は、争いになった場合には、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。」(同条3項)としています。なお、実務上は、個人の尊厳や両性の本質的平等などに照らし、原則として(もちろん例外はあります)、夫婦共有財産を2分の1ずつ分けるのが慣例です。
(2) しかし、今回のケースについては、男性としては、自分が身を粉にして働いて大きくした会社の株式の半分を渡すことはとても納得しがたいと考えているようですが、裁判所ではどのような結論を出すのでしょうか。
似たような事案の裁判例として、大阪高裁平成26年3月13日判決があります。この事案は、夫が医師で、妻は医師ではなく夫の仕事を一部手伝っていました。夫はかつて個人で診療所を経営していましたが、そのときの診療所の財産は夫婦共有財産でした。その後、診療所を法人化して医療法人にしたのですが、その際の出資持分は3000口とし、夫が2900口、50口が妻、50口が夫の母の名義とされていました。
このような事例における離婚時の財産分与として、上記裁判例は、「本件医療法人が所有する財産は、婚姻共同財産であった法人化前の本件診療所に係る財産に由来し、これを活用することによってその後増加したものと評価すべきである。そうすると、<夫>名義の出資持分2900口のほか、形式上<夫>の母が保有する出資持分50口及び<妻>名義の出資持分50口の合計3000口が対象財産になる」とした上で、
「<夫>が医師の資格を獲得するまでの勉学等について婚姻届出前から個人的な努力をしてきたことや、医師の資格を有し、婚姻後にこれを活用し多くの労力を費やして高額の収入を得ていることを考慮して、<夫>の寄与割合を6割、<妻>の寄与割合を4割とすることは合理性を有するが、<妻>も家事や育児だけでなく診療所の経理も一部担当していたことを考えると、被控訴人の寄与割合をこれ以上減ずることは、上記の両性の本質的平等に照らして許容しがたい。」
と判示しました。つまり、出資持分の4割が財産分与として、妻に認められました。
さて、先ほどの事例に戻ると、妻が主張するように出資金の半分までにはならないとしても、上記の6対4ですとか、それに近い割合にて財産分与が認められる可能性が十分にあるわけです。
それが認められた場合に、妻は、株式をもらって経営に参加したいというわけではなく、株式の価値に値する現金を得たいと考えることが多いと思います。そのため、実際の処理としては、株式の価値を確定し、その分の現金を妻に分与するということが多いです。先ほどの事例では、資産数十億円の会社の株式ですので、夫は、膨大な金額を妻に渡す必要があります。
その金額を拠出するために、男性は、自分が持っている株式を担保に、銀行から膨大な借入れをしたり、株式を一部売却しなければならない事態に陥る可能性があるのです。
婚姻前に「夫婦財産契約」を結び、トラブルを予防
このような事態を防ぐための方法として、夫婦財産契約(民法755条、民法756条)という制度があります。この夫婦財産契約では、婚姻前に、夫婦で夫婦の財産に関して話し合いをして、取り決めをしておくものです。
その際の留意点としては、①婚姻の届出前に、契約を締結する必要があること、②婚姻届出前に、登記を行う必要があること、という点です。婚姻届出後の夫婦財産契約は認められていません。
このように婚姻前に、かつ登記まで行う必要があることから、夫婦財産契約が利用される件数は極めて少ないと言われています。
なお、夫婦財産契約では、離婚になった場合には夫婦の財産をどのように分けるか、具体的な分割方法なども定めておくことができます。夫婦財産契約によって、事前に財産の帰属を明らかにしておけば、離婚になったときに、意見の対立が生じることを防ぐことができます。
もっとも、夫婦財産契約については、夫婦の平等に反する内容や一方に著しく不利な内容の合意は無効であると考える見解もありますので、「夫が将来設立する会社の株式はすべて夫が管理する財産」といった条項が有効であるかどうかは検討の余地が残るのですが、後日の紛争リスクを少しでも軽減するためにも、婚姻前に夫婦財産契約を検討することも一つの方法であると思われます。
山口 明
日本橋中央法律事務所 弁護士
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