スタッフの話をとことん聴く…繁盛クリニック院長の流儀

今回は、クリニックの将来的な拡大を見据えた人材育成の基本を見ていきます。※近年、独立開業を目指す医師が増加しています。しかし競争は熾烈であり、医師としての腕だけでは勝ち残ることができません。本連載は、医療法人梅華会理事長で、兵庫県を中心に複数のクリニックを経営する梅岡比俊医師の『クリニック開業ロケットスタート戦略 開業3年でその後の開業医人生が決まる』(中外医学社)から一部を抜粋・再編集し、クリニックの開業と安定的な運営のテクニックを紹介します。

スタッフ同士の関係に心を配るのも、院長の大切な仕事

 ◆すべての課題は院長自らの責任で善処する

 

前回の記事、『クリニックの開院…組織内に求められる「ラポール形成」とは?』で、私のクリニックは、スタッフが自分の持ち場で自分で考えて行動できるように、誰でも自分の考えや意見を発言できる環境を提供し、スタッフ同士のラポールの形成を図っていると申し上げ、徐々に成果も上がってきていると説明してきました。

 

とはいえ、現実的には他のクリニックと同様、スタッフ同士の軋轢が皆無とは言えません。特にこの記事を読まれている皆さんのように開業したばかりの時には、お互いの信頼関係もできておらず、さらにリーダーとなれるような人材も育っていないわけですから、なおさらでした。

 

勤務医時代なら、スタッフ間の軋轢などに対しては、看護師長さんや事務方のトップに相談するなど、問題の解決に自ら乗り出さなくても済んでいたと思います。しかし、自らが開業したクリニックでは、発生した問題・課題のすべてを自らの責任で解決し、お互いの信頼関係の回復に努めなければなりません。トップである自分とスタッフとの間にもラポールの形成ができているとは言い難い状態でのこの作業は、逃げ場がないというくらいの覚悟を持って対処していく必要があるのです。

 

それらにうまく対応するためにも、まずは自分とスタッフのラポールを形成することが最重要、具体的には定期的に1対1で面談をすることをお勧めします。日常業務で充分会話をしていれば、少人数のクリニック内では改めてそのような機会をつくらなくてもよい・・・という話も耳にしたことがありますが、私の経験では、1対1で面談する場を設けると日常話していることとそこで出る話は、驚くほど異なります。普段言っていることと心の内で考えていることが実は全く違うことさえあります。そんなこと、なんでもっと早く話してくれなかったの?と言いたくなるような言葉が突然出てくることもあります。

 

私の経験をお話しすれば、採用時には医療関係の仕事を通して社会に貢献したいと熱い想いを語って入職し、毎日ニコニコと手際よく仕事をこなし、患者さんにも好印象を与え指示されていたスタッフから、今の仕事は自分に向いていないと感じ、他にやってみたい仕事が見つかった・・・と打ち明けられて唖然としたことがありました。また、私の目から見ると正当に判断したうえで支給したはずの賞与の差に不公平感を感じていると話したスタッフもいました。人間は日常の会話の中では、すべて本音で話すことはないというのが、私が学んだことです。

 

また、俗に「男性は解決脳、女性は共感脳」と言われています。開院間もないころは、院長である私はスタッフから発せられた悩みや問題について、すぐに解決せねばと対策を考え、それによって院内に指示を出していました。これは男性である私にとっては当たり前のことでした。しかし、女性であるスタッフは、ただ話を聞いてもらって自分の考えに共感してもらいたかっただけであって、それに対する私の解決策を求めていたわけではなかったということが、しばしばありました。

 

ある勉強会で男性脳・女性脳の話を聞いたときは、そんなバカな・・・という思いでしたが、院長となってそういう場面に遭遇して、そのとおりであることを実感しました。面談したスタッフからの対人関係のSOSをつい解決しようとすぐに行動してしまって、かえって事態を悪くすることがあったのです。軋轢のあったスタッフ間だけでなく、私とスタッフのラポールの形成にも悪影響を与えることになったのです。

 

そこから私が学んだこと、それは傾聴です。ただただ相手の話を聞くという作業は忍耐のいることです。開業当初は、1日48時間あっても足りないくらい忙しいです。慣れない事務的作業を診療時間以外にしなければならないからです。そんな中で相手の話をじっくり聞くという作業は本当に忍耐がいることです。

 

しかし、時間をかけて話を聞くことを継続していくことで、そのスタッフが真に信頼できる人材に育ってくれるとしたら、傾聴する姿勢を維持することが必要なのです。相手に共感を得られたと感じてもらうためには、2対8くらいの割合で相手に話してもらってちょうどよいと言われています。時間を気にすることなくスタッフの話に耳を傾けることが、後のクリニックの運営に大きなプラスとなることは、私の経験上間違いありません。

スタッフの主体性が、将来の組織拡大に影響する

◆目指すのは一人ひとりが考えて行動できる組織

 

クリニックを開業してから院長は、院長対スタッフ、そしてスタッフ間のラポールの形成をはじめに行うことが大事と説明しましたが、それらを通して最終的に目指すことはスタッフ一人ひとりが自分で考えて行動できる組織にすることです。問題が起こるたびに院長自らが采配を振らないと解決できないような組織では、発展は望めません。

 

なぜなら、経営が安定し患者さんが増えれば、勤務医を含めたスタッフの増員、分院の開院と組織はどんどん大きくなり、院長の仕事は組織の未来に向かって全体を導くこととなり、スタッフ一人ひとりの問題や課題について対応することは物理的に難しくなってきます。

 

組織が大きくなりました・・・だから今日から一人ひとりで考えて行動しましょうというわけにはいきません。少人数で院長が手をかけられるうちにスタッフに組織の理念を落とし込み、一人で理念に沿った判断をして行動できる人材を育成していく必要があるのです。

 

ですから、ラポールの形成についても次第にそのこと自体を任せられる人材を育成したり、マニュアルをつくっていく必要もあるわけです。一口に人材の育成、マニュアルづくりと言っても、医師であった院長にとってはそう簡単ではありません。自身の枠から飛び出すことも必要です。次からは、組織が大きくなる前に行わなければならない準備を私の経験からお伝えしたいと思います。

 

 

梅岡 比俊
医療法人梅華会 理事長

 

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医療法人梅華会 理事長
医師
開業医コミュニティ(M.A.F主宰)

兵庫県芦屋市出身。奈良県立医科大学を卒業後、勤務医を経て2008年に兵庫県西宮市に梅岡耳鼻咽喉科クリニックを開設。その後耳鼻咽喉科クリニック分院や小児科クリニックを開設し2019年現在、合計8つのクリニックを経営。2016年に開業医がより良いクリニック運営を行うための学びの場としてM.A.F(医療活性化連盟)を発足する。

著者紹介

連載開院3年が勝負!クリニック経営を成功に導く「ロケットスタート」戦略

クリニック開業ロケットスタート戦略 開業3年でその後の開業医人生が決まる

クリニック開業ロケットスタート戦略 開業3年でその後の開業医人生が決まる

梅岡 比俊

中外医学社

さまざまなことが安定化、習慣化してくる開業3年前後の時期こそ進化のチャンス! 確かな経営マインドを身に着け、ロケットスタートで他院に差をつけるためのノウハウを『経営学を学んでいないドクターのための クリニック成…

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