ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

 

英国のEU離脱期限は半年ほど先延ばしされました。合意なき離脱の懸念は当面後退したようにも聞こえます。しかし、為替市場を見ても、本来なら上昇しても不思議ではないポンド(対ドル)に回復の気配が見られません。その背景と思われる点を振り返ります。

英国EU離脱:離脱期限を10月末まで再延期、前倒しも想定、6月に進展を見直し

欧州連合(EU)は2019年4月10日にEU臨時首脳会議を開催、11日未明にまで及ぶ議論の末、英国のEU離脱期限を10月31日まで再延期することで合意しました。6月に英国の離脱に向けた進展状況を検証することも合意されました。

 

 

これまでの期限は4月12日でしたが、EU臨時首脳会議を前に、メイ首相は離脱を6月30日まで延期するよう要請しました。一方、トゥスクEU大統領は最大1年の長期延期案を提示していました。1年延長案には、英国がEUの将来の政策決定に関わり続けるとして、フランスが難色を示し、結局玉虫色の離脱期限延長となりました。

どこに注目すべきか:離脱期限、関税同盟、欧州議会選挙、ポンド

英国のEU離脱期限は半年ほど先延ばしされました。合意なき離脱の懸念は当面後退したようにも聞こえます。しかし、為替市場を見ても、本来なら上昇しても不思議ではないポンド(対ドル)に回復の気配は見られません(図表1参照)。その背景と思われる点を振り返ります。

 

[図表1]英国ポンド(対ドル)為替レートの推移 日次、期間:2016年4月11日~2019年4月11日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]英国ポンド(対ドル)為替レートの推移
日次、期間:2016年4月11日~2019年4月11日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

最初のポイントは、合意なき離脱の可能性が残されている点です。メイ首相はイースター休暇(4月19~22日)後から、欧州議会選挙直前(5月22日、図表2参照)まで、過去3回否決されたEUとの離脱合意案の可決、もしくは関税同盟を軸に英国議会で過半数の可決を目指すと思われます。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

[図表2]英国のEU離脱に関連した主な注目イベント 出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成
[図表2]英国のEU離脱に関連した主な注目イベント
出所:各種報道等を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

しかし、英国議会がEU離脱に5月22日までに合意できなければ5月23日からの欧州議会選挙に参加する義務があるため、仮に、5月22日までに合意に至らず、その上、欧州議会選挙に参加しないという条件が重なると、英国は6月1日に合意なき離脱となるリスクが残されています。

 

なお、5月2日の地方選挙は、英国議会とは直接関係はありませんが、世論の動向が、合意案の議論の方向に影響する可能性は考えられます。

 

次に、メイ首相の戦略が不透明なことです。英国議会の構図は、メイ首相に反対を続ける半数近い野党の労働党と、離脱強硬派と親EU派に別れる与党となっており、与党内の説得では、与党反対派と野党が結びつき、議会での過半数獲得は困難となる傾向が見られました。現在もこの構図に大きな変化は無いと見られます。そこでメイ首相は野党に協力を求める姿勢を見せています。ただ、メイ首相と労働党コービン党首との隔たりは大きいことや、与党分裂が深まる懸念など新たな路線の先行きも不透明です。

 

5月22日までの合意をあきらめ、欧州議会選挙に参加(英国は既に選挙の準備は進めていると報道されています)した場合でも、その時点から半年以内に10月末の離脱期限が控えています。時間が無いわけではありませんが、再国民投票など他の選択肢を導入するにはタイトなスケジュールで、中途半端な延期であることも懸念されます。

 

もっとも問題なのは、このシナリオで推移した場合は不透明な状態が長期化し英国経済への影響が懸念されること、そしてメイ首相の政治的立場が不安定なことです。離脱期限の延長だけではポンド上昇を見込みにくいと見ています。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『英国、EU離脱期限10月31日まで再延期…ポンド回復の兆しなし』を参照)。

 

(2019年4月12日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【11/24開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【11/28開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録