税務調査を録音することはできるか?
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
非居住者金融口座情報の自動的情報交換がスタート
国税庁は2018年から、経済協力開発機構(OECD)の策定した国際基準である「共通報告基準」(CRS:Common Reporting Standard)に基づいて、非居住者金融口座情報の自動的情報交換を開始しました。
国税庁がこの情報交換の状況を「CRS 情報の自動的情報交換の開始について」として発表していますので、その概要を見てみましょう。
まず、CRSに基づく情報交換の背景を簡単にまとめておきます。
海外の金融機関を利用する人が増えるにつれ、各国の税務当局は、金融機関を通じて保管している財産を捕捉することが難しくなり、本来であれば税金を取ることができる場合であるにもかかわらず、実際には税金を取れないケースが増えてきました。
例えば、日本居住者が香港のHSBCで銀行口座を開いた場合を考えてみます。
HSBCで、株式投資をして配当を得た、投資した株式を売却してキャピタルゲインを得たなどの所得に対しては、日本で納税義務があります。しかし、日本の税務当局が調査する権限を持っているのは日本の領土の中だけで、日本国外では調査をする権限がありません。この投資家が自発的に申告してこない限り、税金を取れないのです。
こうした問題に苦慮した各国の税務当局が共同で創設した制度が、OECDの策定した国際基準であるCRS(Common Reporting Standard)「共通報告基準」に基づく、非居住者金融口座情報の自動的情報交換制度です。
情報交換されるのは、氏名・居住地・口座残高、等々…
情報交換の対象とされているのは、以下の情報です。
ア 口座保有者の氏名(又は名称)・住所(又は本店又は主たる事務所の所在地)
イ 居住地国
ウ 外国の納税者番号
エ その資産の価額(口座残高)
オ その資産の運用・保有又は譲渡による収入金額(利子・配当等の年間受取総額)等
国税庁のウェブサイトで公表されている「交換される金融口座の情報」のイメージ図を見ると、わかりやすいかもしれません。
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主要国で唯一CRSに参加していない米国
CRSに参加している国のリストは、下記のとおりです。
アジア、ヨーロッパなどの主要国はもとより、ケイマン諸島、英領ヴァージン諸島などのタックスヘイブンも参加しています。
そんななか、主要国で唯一参加していないのが米国です。米国はCRS以前から、米国人(米国国民、米国居住者)が保有する口座情報を米国内国歳入庁(IRS)に提出させる独自の制度(外国口座税務コンプライアンス法=FATCA:Foreign Account Tax Compliance Act)を整備しており、CRSに参加する必要がなかったためです。
ここで気になるのは、米国人の海外情報が米国税務当局(IRS)に提供されるだけでなく、日本居住者の米国内の情報が日本の税務当局に提供されるか、という点でしょう。
FATCAへの対応には、モデル1とモデル2がありますが、日本が採用しているモデル2の場合、FATCAそのものとしては、米国IRSから日本の税務当局への情報提供はありません。
しかし、日米租税条約の情報交換規定により、日本居住者の米国内の情報が日本の税務当局に送付されることはあると思われます。
2019年7月から、CRS情報に基づく税務調査が開始!?
2018年9月の初回CRS情報交換により、日本の国税庁が受領した口座情報は、55万705口座の情報でした。
その内訳は、アジア・大洋州から29万660口座、欧州・NIS諸国から20万2,455口座、北中米から4万1,915口座、中東・アフリカから1万5,675口座であり、アジア・大洋州からが一番多くなっています。
国税庁は、CRS情報を国外送金等調書、国外財産調書、財産債務調書、その他すでに保有している様々な情報とあわせて分析していく旨を明言しています。
国税局・税務署の年度は7月から始まりますが、2019年7月から、CRS情報に基づいた税務調査を開始するのではないかと言われています。
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