大学進学、スキー休暇…「社員が好きなように働く会社」の実例

今回は、「社員が好きなように働く会社」として評価されている筆者の会社で、従業員がどのような働き方をしているのか、その具体例を紹介します。※戦後最長の好景気が継続する一方、企業の人手不足・後継者不足は深刻です。また、中小企業にとっては、政府が打ち出した「働き方改革」「ワーク・ライフ・バランス」への対応も、頭の痛い問題です。政策を順守しつつ人材を確保し、企業の業績を上げ続けるにはどうすればいいのでしょうか。本連載では、勤務形態その他について「社員が好きなように働ける会社」を実現し、グループ全体で200人規模ながら、求人に年間600人近い応募が寄せられる人気企業の代表が、その極意を伝授します。

週1~2日勤務の社員、大学生との二足のわらじの社員

私たちの会社ではどのような形で「社員が好きなように働いて」いるのか。いくつか具体例を紹介しましょう。Aさんは電気保安管理部門に所属する30代の社員で、現在は週に1〜2回しか出勤しません。彼は第一種電気主任技術者というかなり難易度の高い資格を持っているものの、仕事はなるべく少なく、他に時間をかけたいことがあると言います。

 

そこで会社として、週1〜2回の出勤でも活躍してもらえる業務と職場を見つけ、腕を振るってもらっています。

 

Bさんは30代半ばで、現在は営業部で活躍しています。5年ほど前、Bさんから「4年制の大学に通いたい」という相談がありました。Bさんは高校を卒業して働き始め、当時はすでに結婚してお子さんも2人いたのですが、仕事関係の技術を大学で勉強し直したいという強い希望が湧いてきたというのです。そこでBさんとよく話し合い、平日の夕方6時から深夜0時まで勤務してもらうことにしました。Bさんは日中、大学に通って4年で無事、卒業。そのまま私たちの会社で頑張ってくれています。

 

Cさんは20代で、スキーが趣味です。そのため冬のスキーシーズンになると、1〜2カ月の長期休暇を毎年、取ります。

 

彼が所属する部署では、そのことが分かっているので春から秋にかけて彼の業務量を増やし、逆に冬になると他の社員が頑張って彼を送り出すようにしています。人生において何を重視するか、何に幸せを感じるのか、仕事とどう向き合うのかは人によって異なります。

柔軟な働き方を認めたほうが、社員は結果を出す

また、同じ人でも人生のステージやタイミング、環境によって考え方や希望は変わるでしょう。たとえば、結婚して子供が生まれ、家を建てたとしましょう。そうなると、いままで以上に働いて昇進・昇給したいと思うかもしれません。逆に、子どもが生まれたり、親の介護が必要になったりして、残業はなるべくしたくないということもあるでしょう。

 

私たちの会社では、社員全員がいかに効率よく仕事をこなし、結果を出すかにこだわっています。全員が平日の朝9時から夕方5時まで一律に働くことはそれほど重要ではありません。カレンダー上、出勤日や勤務時間は一応、決まっていますが、実際はケースバイケースです。社員の事情に応じて「何とでもする」「何とでもなる」というのが私たちの会社の基本方針です。

 

いま紹介したケースの他にも、父子家庭なので昼間、2時間だけお子さんの学校の面談で抜けたりしている社員、不妊治療中で奥さんから連絡があり、急に休暇を取った社員などもいました。

 

「会社なのだからそうしなければならない」といった、よく分からない理由で社員を縛ることほど不合理なことはありません。むしろ、その人の事情に合わせて柔軟な働き方を認めたほうが、社員は結果を出してくれます。

 

限られた時間で働くことを自分で選んだ社員ほど、限られた勤務時間で結果を出そうとやる気を出し、持てる能力を最大限、発揮しようとするからでしょう。

働き方として用意された「3つのコース」

私たちの会社では、新卒であれ中途であれ入社前から「好きなように働ける」ということを説明しています。具体的には、働き方に次のような3つのコースを用意して、どれがいいか聞くようにしています。

 

①昇進・昇給を目指しバリバリ働く

②プライベートを重視し残業や休日出勤はなし

③両方の中間でほどほどに働く

 

①の場合でも法律などの条件はきちんと守りますし、残業については、サービス残業が当たり前だった10年以上前から、30分単位で割増給与を支払っています。そして、①〜③のどのコースで働くかは、入社後いつでも見直すことができます。

 

なぜこんなことをするのかというと、入社前に本人の本音を聞くとともに、私たちの会社のやり方を説明し、「働いてみたらイメージしていたのと違った」というミスマッチを避けるためです。

 

若い人の間では、建設業というだけで敬遠されがちです。採用するときに、口先だけで良いことを言っても見透かされてしまいます。

 

建設業ではまた、4月に入社した新入社員は夏までに辞めることが多く、逆に夏場を乗り越えると定着率が高まるというデータがあります。会社としても、この社員は残業しないとか土日はなるべく出たくないなどと予め分かっていると、人員の配置が組みやすくなります。

 

こうしたことから、事前に働き方について本音で話し合うことは、社員にとっても会社にとっても合理的なのです。

 

地元の高校へ新卒採用の説明で回るときも、こういうやり方を正直に説明します。就職担当の先生方からは、「建設業でありながら希望すれば現場でも残業ゼロ」というので驚かれるとともに、「すごくいいやり方ですね」と評価していただいています。

 

このやり方は、新卒採用にかなり効き目があり、2019年は5名採用できました。いまの若者はかつてのように、「車を買いたい、オーディオを買いたい、だから頑張って働く」という時代ではありません。むしろ、「仕事はほどほどに、自分のプライベートを大事にしたい」という若者のほうが多いと思います。そういう若い人の価値観を尊重するのが、私たちの会社の基本的なスタンスです。

 

 

瀬古 恭裕

株式会社鈴鹿 代表取締役 

 

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株式会社鈴鹿 代表取締役

1970年生まれ。高校時代に水泳で活躍し、スポーツ特待生としてトヨタ車体株式会社に入社。実業団選手として活躍するも、現役引退後に将来の不安を感じ退社。その後、いくつかの会社を経て、職人の人間味あふれる人柄や電気技術の深さに魅了され電気職人の世界に入る。職人として親方の元で5年間修行し、1995年に瀬古電設(現・株式会社鈴鹿)を創業。
現在は事業の主幹である電気工事以外にもさまざまな事業を行っており、グループ会社8社を束ねる。どんな大不況や自然災害が訪れようとも最後まで生き残れることを目指した会社づくりを行っている。いつまでも挑戦を忘れない実直な姿勢と、その人間味あふれる人柄から、社員・取引先から愛されている。
趣味は釣り、旅行、トレーニング。座右の銘は「人間万事塞翁が馬」

著者紹介

連載週1出社OK、取締役は立候補制!…社員の自由を尊重して業績を伸ばす会社経営のメソッド

社員が好きなように働く会社

社員が好きなように働く会社

瀬古 恭裕

幻冬舎メディアコンサルティング

「働き方改革」「ワークライフバランス」を20年前から実践 創業以来、増員・増収・増益を続ける組織づくりのノウハウを解説! 「終身雇用」「年功序列」など、いわゆる「日本型経営システム」は、かつての日本の大量生産大…

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