社員が多ければ「多様な働き方」の選択肢を増やせる
社内にはそれぞれの働き方、経験やスキル、頑張りなどを客観的に評価する「職級表」を整備しています。それをもとに上司が部下に説明して、昇進・昇給を目指すのか、それとも自分の生活を優先して働くのか、選んでもらうのです。
自身の働き方の価値観に合わせて、「残業はせず、休日出勤もしない」社員は、待遇に差は出ますが、だからといって社内で肩身が狭い思いをするといったことはありません。それはひとつの選択であり、役割であり、そのポジションで頑張ってもらえばそれでいいのです。
昇進・昇給したくない人はそれでいいですし、逆に昇進・昇給したい人にはキャリアの道筋を提示しています。
このように、いろいろな社員の事情に応じて業務を調整するためには、社員は多いほうが都合がよいといえます。
会社の方向性と各社員の価値観が必ずしも一致しなくても、社員がたくさんいて、それぞれの価値観の総和が会社の方向性と合致していれば問題ありません。ですから、私たちの会社では常に「増員」ということを経営の最優先課題に掲げています。人が多ければそれだけ現場に応じて柔軟に人員配置ができるからです。
また、人が多ければ受注量を増やし、売上を伸ばしていけます。コスト管理を徹底しているので、自然に増益になります。
これが私たちの会社が掲げる「増員・増収・増益」という成長サイクルの根本にある、最も重要なポイントです。
日報システムで全社内の仕事を「見える化」
社員それぞれに柔軟な働き方を認めるためには、社員それぞれの状況をきちんと把握しておく必要があります。そこで私たちの会社では、20年近く前から社員一人ひとりについて、午前と午後、2時間単位でどのような業務を行ったのか一定の工番から選び、また早朝残業や通常残業、深夜残業などの時間を30分刻みで書き込んだ日報を提出してもらうようにしています。
「日報システム」の大きな目的は、部署別・現場別・社員別に日々の業務内容とコストを把握し、成果と照らし合わせて評価するということです。
部署別であれば、どこの部署がどれだけの社員と人件費を使って、どのような業務を行い、その成果はどうなのか。現場別であれば、どこの現場で何人の社員がどんな作業に関わっており、どれくらいの利益が見込めるのか。社員別であれば、各人がどの現場のどの作業にどれくらいの時間を割いているのか、などが具体的なデータとして確認できます。
「日報システム」は当初、別に専用ソフトを使うわけでもなく、手書きのシートを集めてエクセルに入力する程度でした。でも、その効果は絶大でした。1カ月ごと、半年ごと、1年ごとにデータを集約すると、会社全体の状況が手に取るように分かります。それを踏まえて、どこをどのように改善すればいいのかが自然に見えてくるのです。
また、どうしても会社全体で経費削減が必要になったときは、一律削減するのではなく、必要性の低い作業や時間短縮が可能な作業などを洗い出し、メリハリをつけた対策をとることができます。
なお、こうしたデータを把握しているのは各現場や部門の責任者であり、一般の社員には特に知らせていません。時間単位で働いている人と、成果主義で働いている人は明確に分けており、時間で働いている人に、「なんでこんなに時間がかかるんだ」「なんでそんなに遅いんだ」と言うのはダメだと考えています。業務の効率化に責任を負うのは数字(財布)を預かっている現場や部門の責任者であり、彼らが誰をどの現場に、どのように配置するか考え、業務のやり方についての指示も出します。
ただ、時間で働く一般社員も毎日、2時間単位で業務を報告するので、自然と気づきや緊張感が生まれるということはあると思います。
瀬古 恭裕
株式会社鈴鹿 代表取締役