「社員が好きなように働く会社」の教育制度・人事制度の特徴

今回は、「社員が好きなように働く会社」として評価されている筆者の会社の、教育制度・人事制度を見ていきます。※戦後最長の好景気が継続する一方、企業の人手不足・後継者不足は深刻です。また、中小企業にとっては、政府が打ち出した「働き方改革」「ワーク・ライフ・バランス」への対応も、頭の痛い問題です。政策を順守しつつ人材を確保し、企業の業績を上げ続けるにはどうすればいいのでしょうか。本連載では、勤務形態その他について「社員が好きなように働ける会社」を実現し、グループ全体で200人規模ながら、求人に年間600人近い応募が寄せられる人気企業の代表が、その極意を伝授します。

教育・育成用のマニュアルは、常にブラッシュアップ

管理職にとっては、部下の教育や育成も大きな役割です。その点について私たちの会社では、次のように捉えています。

 

そもそも長期的にみて、私たちの会社のような中小企業でもすべてマンツーマンで部下を指導しているのでは効率が悪いと言わざるを得ません。一方で、「価値観型人事制度」を掲げる私たちの会社において管理職は、部下である一般社員などの価値観ややり方を尊重し、型にはめずに方向性や考え方を伝える必要もあります。

 

そこで重視しているのは、書面によるマニュアル(手順書)を作成することです。マニュアルは部署ごと、業務や作業ごとに、細かく用意しています。マニュアルがあれば、新入社員や他部門から異動してきた社員でも、上司や先輩社員から手取り足取り教わらなくても、比較的スムーズに業務の基本をマスターすることができます。

 

ただし、マニュアルがあればそれで良いかというとそうではありません。それぞれの業務や作業は「何のために」行うのか、部門全体や現場全体の中における位置づけと目的、他の業務や作業との関連が分かっていないといけません。そうした点を意識しながらマニュアルを整備するのが、管理職の大切な役割です。

 

加えて会社としては、マニュアルと連動した形で評価基準を整備し、どこまでできればどのように評価され、給与などと連動するのかまで明確にしています。

 

こうした仕組みにより、一度に多数の部下に対して同じ方向性を指し示すことができます。あとは、部下がそれぞれ自分の価値観に合わせてやってくれればよく(放任ではありません)、その分、管理職として自分の時間の効率化にもつながります。

 

マニュアルは一度、作成すれば終わりではありません。マニュアルに基づく業務や作業の成功例・失敗例は必ず、記録しておきます。「どうしてうまくいったのか」「なぜ失敗したのか」を考え、マニュアルを見直します。あるいは、新しい技術が開発されたり、新しい業務や作業が出てきたりすれば、その都度、マニュアルを新たに作成します。

 

[図表1]マニュアルの改善と標準化のプロセス
[図表1]マニュアルの改善と標準化のプロセス

 

このようにマニュアルを見直したり、追加したりすることを繰り返すこと(PDCAの繰り返し)が、業務や作業の「標準化」につながります。組織としてナレッジが蓄積され、それが各現場で多くの社員に共有され、会社全体の競争力が高まっていきます。

人事のあり方として参考にするのは「武道の考え方」

人事のあり方について私は、「守・破・離」という考えを参考にしています。「守・破・離」とは、元々は武道の考え方です。

 

まずは師匠に言われたことや、昔から伝わる型を「守る」ことから修行が始まります。

 

その後、型を自分の経験などと照らし合わせて研究することにより、自分に合ったより良いと思われる型をつくることで、既存の型を「破る」段階に至ります。

 

そして最終的には、師匠の型、そして自分自身がつくり出した型の上に立脚しながら、型から自由になり、型から「離れ」て自在になることができるのです。

 

[図表2]「守・破・離」と私たちの会社の階級制度
[図表2]「守・破・離」と私たちの会社の階級制度

 

私たちの会社の社員に置き換えれば、「守」とは基本を覚え、基本を守ることです。具体的には、技術の習得や会社の理念・社是の理解、社内のルールの学習がこれにあたります。また、現場ごとにまとめられたマニュアル・手順書を理解することも「守」です。

 

続いて「破」とは、基本を守りつつ自分に合わせて改良し、型を破ることです。具体的には、現場においてマニュアル・手順書を作成し、それを常に見直していくことが当てはまるでしょう。

 

最後に「離」とは、自分の流派を確立することです。社内において自由と責任を確立し、たとえば社内カンパニーのトップになったり、役員として会社全体を引っ張っていくことが当てはまります。

 

この「守・破・離」を私たちの会社の職級制度に当てはめてみると、図のようになります。

 

6級職、5級職は一般社員クラスです。マニュアル・手順書に沿って、時間を軸に仕事を行います。

 

4級職は課長クラス、3級職は部長・次長クラスです。このクラスになると、自由と責任が増し、時間ではなく結果を軸として仕事をしなければなりません。

 

ただし、私たちの会社では4級職までは労働組合に入ってもらい、組合員として会社との間で雇用や待遇について要求をまとめて交渉したりできます。

 

また、4級職になると管理職扱いになり、一般社員としての手当や残業代は出ませんが、5級職時の手当や残業代を加味してベース給与を決めるので、「課長になったら実質の手取りが減った」といったことはありません。

 

なお、3級職も手当や残業代は出ませんが、部門長としての事業計画や経営目標の達成という結果を出し続けることで、インセンティブによる大幅な収入増が見込めるようになります。

 

「守・破・離」とは「自由と責任」と言い換えることができるでしょう。ですから、私たちの会社では幹部社員や管理職には結果を求めます。結果を出し続けることが管理職の「責任」です。

 

「責任」を果たせばその分、生活と仕事における「自由」を保証します。上場企業に見劣りしない給与を支給しますし、自宅勤務など時間と場所を問わない働き方も認めます。さらに、社内カンパニー制として各部署の裁量で独立採算組織として運営していくことも可能です。

 

 


瀬古 恭裕
株式会社鈴鹿 代表取締役 

 

株式会社鈴鹿 代表取締役

1970年生まれ。高校時代に水泳で活躍し、スポーツ特待生としてトヨタ車体株式会社に入社。実業団選手として活躍するも、現役引退後に将来の不安を感じ退社。その後、いくつかの会社を経て、職人の人間味あふれる人柄や電気技術の深さに魅了され電気職人の世界に入る。職人として親方の元で5年間修行し、1995年に瀬古電設(現・株式会社鈴鹿)を創業。
現在は事業の主幹である電気工事以外にもさまざまな事業を行っており、グループ会社8社を束ねる。どんな大不況や自然災害が訪れようとも最後まで生き残れることを目指した会社づくりを行っている。いつまでも挑戦を忘れない実直な姿勢と、その人間味あふれる人柄から、社員・取引先から愛されている。
趣味は釣り、旅行、トレーニング。座右の銘は「人間万事塞翁が馬」

著者紹介

連載週1出社OK、取締役は立候補制!…社員の自由を尊重して業績を伸ばす会社経営のメソッド

社員が好きなように働く会社

社員が好きなように働く会社

瀬古 恭裕

幻冬舎メディアコンサルティング

「働き方改革」「ワークライフバランス」を20年前から実践 創業以来、増員・増収・増益を続ける組織づくりのノウハウを解説! 「終身雇用」「年功序列」など、いわゆる「日本型経営システム」は、かつての日本の大量生産大…

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