米国、逆イールド解消の背景にISM製造業景況指数改善の安堵感

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3月の米ISM製造業景況指数は55.3と、水準としては50を超えていますが、16年末から17年初めとに概ね並んだ水準で、18年のピークに比べ減速感は見られます。景気回復を確実と見るには水準として(50を超えてはいますが)、過去と比べ低い分、物足りなさはあるかもしれません。しかし、市場に見られた米国の景気後退懸念を和らげるとも見られます。

米ISM製造業景況指数:市場予想を上回り、景気後退懸念を和らげる内容

米供給管理協会(ISM)が2019年4月1日に発表した3月の米ISM製造業景況指数は55.3と、市場予想(54.5)、前月(54.2)を上回りました(図表1参照)。同指数は50が活動の拡大と縮小の境目を示します。

 

[図表1]米ISM製造業景況指数と主な構成指数の推移 月次、期間:2016年3月~2019年3月 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表1]米ISM製造業景況指数と主な構成指数の推移
月次、期間:2016年3月~2019年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

19年の年初に公表された18年12月のISM製造業景況指数は市場予想を大幅に下回ったため、景気急減速懸念の背景の一つとなりましたが、落ち着きを取り戻しました。

どこに注目すべきか:新規受注指数、雇用、逆イールド

3月の米ISM製造業景況指数は55.3と、水準としては50を超えていますが、16年末から17年初めとに概ね並んだ水準で、18年のピークに比べ減速感は見られます。景気回復を確実と見るには水準として(50を超えてはいますが)、過去と比べ低い分、物足りなさはあるかもしれません。しかし、市場に見られた米国の景気後退懸念を、次の点で和らげるとも見られます。

 

まず、今回のISM製造業景況指数では今後の生産動向を示唆する傾向がある新規受注指数が57.4と前月の55.5から改善しました。生産指数は55.8と、こちらも前月の54.8から改善しています(図表1参照)。

 

今回の改善で前月からの改善が大きかったのは雇用で、3月は57.5と、前月の52.3から急上昇しました。雇用指数は18年11月から低下が続いていましたが、一応歯止めがかかった格好です。生産と雇用が消費のバロメーターと見られるだけに、今回の改善には期待もあります。全18業種のうち13業種が回復を回答するなど、改善は全般に見られます。ただ、3月の雇用は急回復しただけに、今後も回復が維持されるかを見守る必要はあると思われます。

 

ISM製造業景況指数レポートには、現場の生の声もサンプルとして示されています。代表的な声は、景気の底堅さを示す回答となっています。例えば、「注文は引き続き堅調」であるといった経営者の声や、「世間には景気に悲観的な声もあるが、受注は継続しており先行きの見通しは暗くない(運輸設備)」といったコメントが見られます。

 

一方で、懸念の中には、関税によるコスト高や英国の欧州連合(EU)離脱の影響を懸念する声もあります。その意味で、懸念は外部要因に多く見られますが、新規輸出受注指数は軟調である点などに注意は必要です(図表1参照)。

 

今回のISM製造業景況指数の改善や、週末から昨日にかけて中国で公表された製造業購買担当者景気指数(PMI)の改善などを背景に、米国で一時的に生じた逆イールド(長期と短期国債利回りの逆転)が解消されました(図表2参照)。

 

[図表2]米10年国債と3ヵ月レートの利回り格差の推移 日次、期間:2018年4月2日~2019年4月1日bp = 0.01% 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
[図表2]米10年国債と3ヵ月レートの利回り格差の推移
日次、期間:2018年4月2日~2019年4月1日bp = 0.01%
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

逆イールドが続くと、その後1年半ほどして景気後退に陥る傾向があると認識されています。過去、逆イールドが将来の景気後退を暗示したケースは確かにあり、逆イールドそのものが景気後退への懸念を深めた面も見られます。もちろん逆イールドが示唆するメッセージは無視するべきではありませんが、同時に冷静な判断も求められる局面と見ています。大切なのは、逆イールドだけでなく、他の経済指標も組み合わせて経済動向を判断することと考えます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米国、逆イールド解消の背景にISM製造業景況指数改善の安堵感』を参照)。

 

(2019年4月2日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部投資戦略部 ストラテジスト

 

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日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

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1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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