ワイン投資で狙うべき「ブルーチップワイン」その希少性の理由

何度もブームを繰り返し、今や生活に定着した感のあるワイン。一方、欧米に目を向けると、ワインは株式や債券と同じように投資対象として人気を高めているという。本連載では、ワイン研究の第一線で活躍する堀賢一氏が、ワインマーケットの現状と今後の見通しについて解説する。今回は、ワイン投資を始めるために障壁となる保管の問題と、ワイン投資市場で特に注目される「ブルーチップワイン」について紹介していきます。

ワイン投資は「保管コスト」がポイント

前回(関連記事『なぜ欧米では投資対象として「ワイン」が人気なのか?』)、ファインワイン投資の歴史的な背景と、“Liv-ex Fine Wine 100(ライヴ・エックス ファインワイン ハンドレッド)”に組み込まれている銘柄について説明しました。今回は、日本在住の個人がワイン投資を検討する上で重要となる、具体的な諸問題について検討します。

 

ワイン投資の基本は、値上がりが見込まれるワインを先物予約かリリース時点で購入し、10年から20年のあいだ適切なセラーで保管して、価格がピークに達した時点でオークションなどを通じて売却することです。

 

自宅のひと部屋をワインセラーにできる方ならあまり問題はないのですが、多くのワイン愛好家は120本程度まで収納可能な冷蔵庫型のワインセラーで管理していたり、ワイン専門の営業倉庫に預けていたりします。

 

適切に温度管理されていなかったボトルは外見だけでわかるので、多くのオークション会社は出品を受け付けず、インターネット上の個人オークションに出品しても、高値で落札されることはありません。

 

※SHINWA AUCTIONでは、適切なワインセラーで保管されたボトルのみ、出品を受け付けています。

 

筆者自身も実はワイン・コレクターで、現在、約4,500本のワインを所有しています。このうち、約2,000本は自宅のワインセラー(約6畳)で保管し、残りの2,500本は都内のワイン専門倉庫にウォークインセラー(約4畳)を一部屋借りています。

 

ウォークインセラーは2,500本のワインを箱ごと入れると、天井まで満杯の状態です。月額賃料は税込みで64,800円で、年額は777,600円になります。2,500本のワインを収納しているので、1本あたりの年保管料は311円となり、仮に15年間では4,500円となります。

 

個人向けワイン保管サービスの先駆けである、東京都品川区の寺田倉庫の場合、ワイン1本を月額97.2円(消費税込み)で保管していますので、年額は1,166円、15年間では17,496円になります。

 

つまり、保管場所の有無や保管コストは、投資銘柄を考えるうえで重要な要素となります。つまるところ、営業倉庫にワインを1本ずつ預けて保管される方が銘柄を選ぶ場合は、1本あたりの単価が高い銘柄(売却時点で5万円以上)を選ぶ必要があります。

値上り必須の「ブルーチップワイン」は入手困難

投資目的で購入するワインは、値上がりが見込まれるだけでなく、二次市場での流動性の高い、すぐに買い手が見つかるものでなければなりません。しかしながら、こうしたワインの多くは需要が供給を常に上回っているため、購入は容易ではありません。

 

こうした、リリース時に最安値で入手すればほぼ確実な値上がりが見込める銘柄は「ブルーチップ」(優良株)と呼ばれ、ますますその入手が困難になってきています。

 

ブルーチップワインの代表的な銘柄としては、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)やドメーヌ・ルロワのブルゴーニュ、サロンやボランジェ・ヴィエイユ・ヴィーニュ・フランセーズ、クリュッグ・クロ・デュ・メニルといったシャンパーニュ、シャトー・ペトリュスやル・パンといった少量生産のボルドーが挙げられます。

 

こうしたブルーチップワインの生産者は近年、自社のワインが投機に利用されてブランドイメージが悪くなることを恐れ、市場への流通を厳しく監視するようになってきました。17世紀にオランダで起こったチューリップ・バブルが、自社のワインで起こることを恐れているのです。

 

流通の監視の一例として、DRCの正規輸入インポーターの関連ワインショップは最近、会員にDRCワインの抽選販売を行うに際して、「オークションなどへの転売を発見した場合は、会員資格を取り消す」と通知しています。

 

近年、インターネット上のワインショップやオークションなどで販売されているDRCワインのシリアルナンバーが、付箋で隠されていたり、画像処理で消されていたりしていますが、背景にはこうした事情があります。

 

ロー・リスク&ハイ・リターンであるブルーチップワインは、当然のことながら入手が困難なのですが、なかには比較的入手しやすいものもあります。クリスタルは良作年にルイ・ロデレール社が生産するシャンパーニュですが、2000年代の10年間では8ヴィンテージが醸造され、それぞれのヴィンテージの生産量は百万本程度とされています。

 

日本においては現在、「過去最高のでき」とされる2008年ヴィンテージが流通しています。筆者は1990年ヴィンテージから12本単位でクリスタルを購入してきたのですが、15年程度の熟成後に、流通価格は2~5倍に跳ね上がっています。

 

世界中のワインショップの小売価格を比較できるwine-searcher.comで検索すると、クリスタル2008年の日本での小売価格は欧米諸国に比べてまだ割高ですが、しばらくすると価格差を狙った並行輸入品が入ってきて正規輸入インポーターが価格対応を迫られるため、小売価格は下がるとみています。

 

独占販売代理店制度が採用されているワインの場合は、並行輸入品が入ってくるまでは日本の価格だけが突出して高額であることが普通なので、リリースされたからといってあせって購入せずに、欧米の小売店との価格差を検討することが必要です。

 

具体的には、クリスタル2008年の正規輸入品が初出荷された2018年10月の楽天市場での価格は、すべての店が希望小売価格の37,800円(税込)で販売していましたが、2019年3月上旬には27,000円程度で購入可能です。一方、wine-searcher.comで検索する世界最安値は26,000円なので、送料や税を考えれば、楽天市場で最安値を購入するのが最良の選択です。

 

参考までに、インターネットを通じて海外から個人輸入する場合は、多少割高でも信頼のおける小売店から購入することが肝要で、また、輸送費や酒・関税、消費税を計算に入れる必要があります。

 

特に輸送費は国やショップによって大きく異なり、カリフォルニアから12本単位でワインを空輸する場合の1本あたりの輸送費は2~3千円ですが、イギリスからは5千円以上することもめずらしくありません。スティルワイン(非発泡性のワイン)の酒税は750mlボトル1本あたり60円、関税は最大で93.65円です。ワインの購入金額と送料、酒・関税の総和に、消費税(現行8%)が課されます。

 

現状、比較的購入しやすいブルーチップワインの銘柄としは他に、ドメーヌ・デ・コント・ラフォンやドメーヌ・ルフレーヴの白ワイン、クロ・ド・タールやドメーヌ・ド・ラルロの赤ワインなどがあります。他の先進国と比較して、日本市場ではブルゴーニュが圧倒的な人気を誇る一方、トップの生産者の最上のワインは非常に生産量が少ないため、出荷直後に最安値で購入すれば、大幅な値上がりを期待できます。

 

次回は、比較的購入が容易で、投資リスクの低いボルドー先物について検討します。

 

Shinwa Auction 株式会社  ワインオークション部門 アドバイザー

著書に『ワインの自由』(集英社)、『ワインの個性』(ソフトバンク)、論文に ‘Bordeaux Futures: The Capital Asset Pricing Model and its Risk Hedging’ (1992)、共著に『ワインと洋酒を深く識る酒のコトバ171』(講談社)、監修に『ソムリエ』(集英社)、『ソムリエール』(集英社)、『ワインのばか』(フジテレビ)など。
シンワオークション → https://www.shinwa-auction.com

著者紹介

連載初めてのワイン投資…マーケットの現状と今後の可能性

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