仏・ワイン雑誌が選ぶ「プルミエ・クリュ」
フランスを代表するワイン雑誌であるラ・レヴュ・ド・ヴァン・ド・フランスは、「別格扱いすべきコート・ドールの8つのプルミエ・クリュ*」を発表しています。
*フランス・ブルゴーニュ地方は畑ごとに格付けがされているが、そのうち一級のこと
この8つのプルミエ・クリュには、グラン・クリュに格上げされるべきとされるジュヴレ・シャンベルタン村のクロ・サン・ジャックやシャンボール・ミュジニー村のレ・ザムルーズなど、8つの著名コミューヌ*からひとつずつ、その村を代表する一級畑が選ばれています。
*フランスにおける基礎自治体
しかしながら、今日の消費者が「選ばれて当然」と感じる一方、1936年に公的な格付けを行った原産地統制呼称委員会の担当者たちが顔をしかめるのは、ヴォーヌ・ロマネ村のクロ・パラントゥです。
ヴォーヌ・ロマネ村・クロ・パラントゥの歴史的評価
クロ・パラントゥは、特級畑リシュブールの斜面上方に位置する、1.01ヘクタール(ha)の小さな一級畑で、北側は特級畑リシュブールを構成するクリマ(区画)のヴェロワイユに接し、南側はやはり一級畑のレ・プティ・モンに隣接しています。1827年に作成された土地台帳には、現在とほぼ変わらない形でクロ・パラントゥが登記されています。
北東方向に傾斜しているため畑は冷涼で、表土は薄く、石灰岩の多い土壌です。畑に直接通じる農道がないためトラクターを入れることができず、アンリ・ジャイエ(1922 ~ 2006)はクロ・パラントゥを馬で耕していました。ワインは隣接するリシュブールよりもアルコール度数が低く、酸度が高くなる傾向があります。
原産地統制呼称法に先立つこと81年、1855年出版の『コート・ドール県のブドウ樹および偉大なワインに関する歴史と統計』において、植物学者のジュール・ラヴァル博士が行ったヴォーヌ村の格付けは、特に地質に着目し、畑を5段階に評価する方法を取りました。
特級ワイン(テート・ド・キュヴェ)に選ばれたのはロマネ・コンティとリシュブール、ラ・ターシュとラ・ロマネの4つで、一級ワイン(プルミエール・キュヴェ)に選ばれたのはロマネ・サン・ヴィヴァンやラ・グラン・リュといった、現在グラン・クリュに格付けされている畑だけでなく、レ・マルコンソールやレ・ボー・モン、オー・ブリュレやレ・スショなどの、現在の一級畑も含まれていました。
ラヴァルの格付けでは、クロ・パラントゥは三級ワインでしかなく、オー・ショームやレ・オート・メズィエール、オー・レアなどが含まれる二級ワインにも選ばれませんでした。ラヴァル博士の格付けから眺めれば、「別格扱いすべきヴォーヌ・ロマネ村のプルミエ・クリュ」はレ・マルコンソールやオー・ブリュレであるべきで、クロ・パラントゥの名前が挙がること自体、寝耳に水です。
ジュール・ラヴァルの格付けから65年後の1920年、ラ・コンフレリー・デ・シュヴァリエ・デュ・タストヴァン(ブルゴーニュ利き酒騎士団)創設者のひとりであるカミーユ・ロディエは『ブルゴーニュワイン』を出版し、コート・ドール県のワインを詳述しています。
ロディエが行った格付けはラヴァルの手法を踏襲する一方、内容を一般化してガイドブック仕立てとし、印刷技術の進歩も相まって、写真やカラー地図も用いています。ラヴァルがヴォーヌ村のブドウ畑を5段階に評価した一方、ロディエは4段階とし、クロ・パラントゥを上から3段階目の二級ワインとしました。ロディエもラヴァルと同じく、レ・マルコンソールやレ・ボー・モン、オー・ブリュレやレ・スショなどの方を高く評価しています。
1936年に原産地統制呼称委員会がヴォーヌ村の公的な格付けを行った際、参照したラヴァルやロディエの著作の影響からか、クロ・パラントゥはリシュブールに隣接しているにもかかわらず、一級畑に選ばれず、村名畑とされました。一級畑に昇格するためには、アンリ・ジャイエによる1953年の申し立てを待たねばなりませんでした。
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