先週の日経平均は窓開けを伴って上昇
先週の日経平均株価は反発を見せ、週末3月15日(金)の終値は2万1,450円でした。前週末終値(2万1,025円)からは425円の上昇です。
ここ数週間の日々の値動きを見ると、ムードの悪化と好転が繰り返されて、やや忙しくなっていますが、今後を見通す上で参考になりそうなヒントはないのかどうか、いつもの通り、下の図1で足元の相場状況から見ていきます。
前回のレポートでは、「プチ・セリングクライマックス」で反発するのか、それともチャートの形の悪化で下落が続くのかに注目したわけですが、終わってみれば、前者の株価の上昇の方に軍配が上がった格好になります。
その分かれ目となったのは、週初の3月11日(月)の取引です。この日は取引時間中に2万1,000円台を下回る場面があったものの、75日移動平均線がサポートとなりました。さらに、前回のレポートで「日経平均が2万1,000円台を下回ったとしても、多少の下げ余地がある」と述べましたが、この根拠となる年初からの上昇幅の「38.2%押し(2万859円)」を下回らずに持ちこたえました。
そして、翌12日(火)に大きな「窓」空けを伴った上昇を見せます。もちろん、この上昇は米国株市場の動きなど外部環境の影響によるものが大きいですが、前日11日(月)の取引で値崩れしなかったことも買い安心感につながったと思われます。この日の窓空けで25日移動平均線もまたいで上抜けています。
ただし、その後は上値を伸ばすことができず、2万1,500円水準と25日移動平均線を意識しながらの展開が続きました。結果的に前週末からの株価水準は切り上がったのですが、方向感は乏しく、値動きだけがやや荒っぽかった格好です。
いまいちスッキリしない相場の空模様ですが、短期的なチャートの形は悪くはなっていません。まず、窓空けでまたいだ25日移動平均線が上向きでそれがサポートになったこと。さらに、ローソク足の並びを見ても「上放れタスキ」と呼ばれる上方向への意識が強い形も出現しています。もっとも、この上放れタスキについては、12日(火)に空けた窓を埋めるような動きも伴っているため、素直に喜べない面もあります。
いずれにしても、前週に出現して警戒していた、平均足の陰転とMACDのクロスによるトレンド転換のサインを打ち消すことができたのは前向きに捉えて良いと思われます(下の図2)。
26週・100週移動平均線が上値抵抗となる
その一方で、上値の重たさも否めません。直近高値である4日の2万1,860円をトライするような動きが見られなかったほか、週足チャートでも、前週見せた「二本下抜け」の移動平均線(26週・100週)が上値の抵抗となっています。MACDの「0円ライン」超えもまだです。
したがって、今週も過度に弱気になる必要はなく、戻りをうかがう地合いは続きそうですが、買い上がる強さを支えるだけの盤石な土台が固まっていないと考えることもできますので、思わぬ調整の到来には一応警戒しておいた方がよさそうです。
NYダウはトリプルトップ形成に注意
そして、ここ何回かのレポートでも触れましたが、株価水準が切り上がって節目を超えるタイミングは窓空けによってもたらされることが多く、海外市場、特に米国株市場に左右されやすい面もあるため、最後に米NYダウのチャートも確認します(下の図4)。
NYダウは直近で2万6,000ドル台乗せを達成して上昇が一服している状況ですが、チャートの形状をざっくり見ると2万6,000ドル台乗せが3回あり、このまま上昇が止まってしまうと、「トリプルトップ」が意識されそうな感じになっています。
ただし、「天井圏が形成されつつあるようだから、下振れ注意報が発令」というわけでもなさそうです。昨年末の株価急落時は「ダブルトップ」が形成されていたことを踏まえると、そこから再度2万6,000ドル台の水準まで株価を戻してきた米国株の底力の方を評価すべきなのかもしれません。
この直近までの米国株上昇は、主にハト派寄りに傾いた米国金融政策や、米中協議の進展期待などが支えとなりましたが、これらは目新しい材料ではなく、また期待先行の部分も大きい面もあります。
つまり、ここまでの株価の戻りでかなりの上昇エネルギーを使ってしまった可能性があるわけです。今週は注目のFOMC(米連邦公開市場委員会)が控え、FRB(米連邦準備制度理事会)のハト派姿勢を再確認する見通しが強くなっています。「適温相場再び」の声も聞かれるようになりましたが、トリプルトップ形成を覆すだけの上昇を見せられるかが焦点になりそうです。
土信田 雅之
楽天証券経済研究所
※本記事は、2019年3月18日に楽天証券の投資情報メディア「トウシル」で公開されたものです。