クリニック開業時にどのような専門科を掲げるかにより、その後の収益は左右されます。今回は、7つ目のポイントとなる、開業時の「標榜科目」について見ていきます。

開業医として専門分野を絞るメリットは少なくない

昨今の開業医においては、「幅広く診療する」というスタイルとは正反対の、専門分野に標榜を特化する傾向が強まっています。例えば、整形外科においては、かつてはリウマチ科、リハビリテーション科もあわせて標榜していました。

 

ですが、最近では、リウマチ科を標榜科目から外して「リウマチの治療には、より専門的な知識と長期的な経過観察が必要になるので、リウマチ患者が来院したら、リウマチ専門医に紹介する」というクリニックが増えています。

 

このように専門分野を絞ることで、次のようなメリットが生じるのです。

 

①初期投資を圧縮できる
例えば、産婦人科を開こうとすると、初期投資の費用がかさみますが、分娩は扱わないことを決め、婦人科だけを専門とするのであれば、出産関係の設備やスタッフは不要となります。その結果、より開業時の資金調達のハードルが低くなります。

 

②患者を積極的に紹介してもらえる
「泣かれて困る」「大人に比べて診療に時間がかかる」「子供は小児歯科専門医が診るべきである」などといった理由から、子供はなるべく治療したくないという歯科医院も少なくありません。

 

そこで、小児歯科単科に絞ることでライバル視されることがなくなり、こうした歯科医院から、小児の患者を積極的に紹介してもらえることとなります。

 

また、風邪の治療は、内科だけでなく、他の診療科目においても受診可能です。言い換えれば、風邪の患者に関しては、各クリニック同士、ライバル関係にあるといえるのです。仮に、皮膚科・泌尿器科で開業した際に、内科診療については全く行わない旨を近隣のクリニックに通知しておくことで、好感を持たれ、自身の専門科目である皮膚科・泌尿器科の患者を積極的に紹介してもらえることとなります。

 

③スペシャリストとしての評判を確立できる
専門分野を絞ることで、その分野の診療に関してより多くの臨床経験を積むことになり、結果的にスペシャリストとしての地位が確立されていきます。このように、特定の診療分野におけるスペシャリストになれば、その評判を耳にした患者が遠方からでも足を運んでくるようになるでしょう。

診療内容の特化が「患者を呼ぶ」可能性も

私の中学高校の同級生に開業当初は内科を標榜していたドクターがいます。しかしながら、彼の専門分野は乳腺科であったため、開業後しばらくして乳腺だけに診療を特化したところ、評判となり、いまでは乳腺科のスペシャリストとして確固たる地位を築いています。

 

また、ある循環器の専門医は、開業時点から「子供については、小児科専門医が診るべきなので、当院では診察しない」という方針を貫いていました。当初は、子供を診ないということが影響したのか、患者数が伸び悩んでいましたが、今では「循環器のことならこのクリニック」と大勢の患者がつめかけており、同じく循環器内科のスペシャリストとして確固たる地位を築いています。

 

ちなみに、私のクライアントに限ってみても、専門分野に特化しているクリニックの方が、そうでないところよりも、より多くの患者で賑わっています。「診療対象を狭めてしまうと患者が少なくなり収入が減少するのでは」と及び腰になるドクターもいらっしゃるかもしれませんが、このように成功例は決して少なくありません。

 

こうしたことからも、開業当初から思い切って専門分野を絞ってみることも一考の余地があると考えます。

本連載は、2016年4月刊行の書籍『改訂版 クリニック開業読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 クリニック開業読本

改訂版 クリニック開業読本

髙田 一毅

幻冬舎メディアコンサルティング

2000年から2015年の医療機関の倒産件数は527件。経営破綻した医科・歯科クリニックの8割は破産を選択せざる得なく、再起も難しい状況です。このような厳しい状況の中でも集患に成功しているクリニックが存在するのはなぜでしょ…

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