医療器械は購入するべきか、リース物件として賃借するべきか――。今回は、開業時のドクターの多くが頭を悩ませる、医療器械の選定について見ていきます。

検討にあたってはリース期間などの条件にも留意

判断基準のひとつに、対象となる医療器械の使用予定年数(法定耐用年数ではありません)と設定リース期間の関係があります。

 

歯科診療用ユニットを例に、使用予定年数を10年と仮定します。仮にこのユニットを5年リースで導入する場合、リース期間終了後もさらにユニットを使用するわけですから、毎年、再リース料を支払うことになります。

 

再リース料は年間リース料の10分の1となるため、例えばリース料として5年の間、毎月10万円、年間で120万円支払ってきたのであれば、再リース期間である6年目から10年目までは毎年12万円をリース会社に払わなければなりません(リースの場合には、償却資産税や損害保険料についてリース会社が負担するという点においては、購入と比較してメリットがあることを付記しておきます)。

 

一方、一括でもしくは分割で購入して代金の支払いが完了していれば、すでに自分の所有物となっているので、再リース料のような負担は発生しません。

 

5年間のリース料を合算すれば、購入代金に達しているのです。そのことを考えると、リース期間を超えて医療器械を使用するのであれば、再リース料を払い続ける分だけ、購入するよりも負担が大きいということになります。

 

他方で、医療器械の中にはCT、レセコン、電子カルテのように日進月歩で性能が向上しているものがあります。このような器械に関しては、5年も過ぎれば確実に以前より高性能なものが出てきているはずです。

 

したがって、購入から5年経って時代遅れになったものをその後さらに使い続けるよりも、むしろリースにしておいて、5年間のリース期間が満了した後には、より高性能な器械を導入して、新たにリースを契約する方が得策かもしれません。

 

なお、新規に医療器械を導入する場合には、以下のような点にも注意しておくことをお勧めします。

 

①メンテナンスフィーに関する条件もチェックする
医療器械メーカーにおいては、一定期間、保守料を無料にするサービスを行っているところもあります。無料期間を半年にしているメーカーもあれば、1年にしているメーカーもあり、会社によってサービス内容は様々です。

 

器械本体そのものの価格はA社よりもB社の方が高いが、このようなサービスを含めて比較するとむしろB社の方が割安になるということもあるのです。したがって、事前にこうした条件は、必ず確認しておく必要があります。

 

②同一メーカーで揃えておく
「どうしてもこの器械はA社でなければだめだ」というこだわりがないのであれば、基本的に同一メーカーで一式全部揃えておいたほうが、器械に不具合等が生じた場合に迅速な対応が期待できます。

 

例えば歯科診療用ユニットとデジタルレントゲン、レセコンをすべて同一メーカーのもので統一しておけば、そのうちの一部にトラブルがあったとき、そのメーカーが間髪入れず、すぐに訪問修理をしてくれることでしょう。

 

しかし、逆に、そのうちの一部でも違うと、メーカーによっては「他社の器械に問題があるから、連動できずに調子が悪くなったのでは」などと他のメーカーに責任を押しつけて、迅速な対応をしてくれないケースもあるようです。

中古より新品を購入すべき理由とは?

開業時に少しでも経費を抑えようと、新品ではなく中古の医療器械を購入することを検討するドクターもいるでしょう。

 

一般論を言えば、やはり中古よりも新品を購入すべきです。まず、近年の法改正によって、中古医療器械を購入するときにはメーカー点検を実施した上でメーカー保証を取得することが義務づけられました。

 

このため、販売コストが増大したことから、中古医療器械の販売価格の上昇がもたらされています。つまりは、中古を購入することの価格面でのメリットが以前と比較すると減少しているのです。

 

また性能面でも、CTを例にすると、古いものはハレーションが顕著であったり、解像度も劣っているので、最新の製品を使う場合と比較すると、病変等の見落としが生じる危険性が高まります。言い換えれば、より高い機能を備えた新品を購入する方が、治療効果の面からも格段にメリットが大きいといえるでしょう。

 

反対に、中古を購入して開業時の投下資金を圧縮するのであれば、患者の治療に際して直接的な性能差が少ない医療器械にとどめておいた方がよいでしょう。

 

次回は7番目のポイントとなる、開業時の診療範囲「標榜科目」の問題について見ていきましょう。

本連載は、2016年4月刊行の書籍『改訂版 クリニック開業読本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

改訂版 クリニック開業読本

改訂版 クリニック開業読本

髙田 一毅

幻冬舎メディアコンサルティング

2000年から2015年の医療機関の倒産件数は527件。経営破綻した医科・歯科クリニックの8割は破産を選択せざる得なく、再起も難しい状況です。このような厳しい状況の中でも集患に成功しているクリニックが存在するのはなぜでしょ…

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