クリニックは面倒くさがり屋の方が繁盛する!?
何でも自分でやってみないと気が済まないという性分の人は、どんな職業においても存在します。実際、ドクターの中にも、会計事務所に委託しないで市販のソフトを利用して、自身で税務申告まで自己完結しているという人がいらっしゃいます。データによると、年商5000万円未満のケース(措置法適用の範囲内)が多いようです。
反対に、自分は診療に専念したいから、外注で処理できるものは、最大限、外部委託するという考え方のドクターも少なからずいらっしゃいます。税務申告はもちろん、給与計算代行、レセプトチェック、院内清掃等に至るまで、対価を支払うことでプロフェッショナルなサービスを受けられるのであれば、それが一番であるという考えに基づいてのことです。こうした考えのドクターは外部委託により手が空いた時間を、診療だけではなく、余暇や趣味にも費やしているのです。
当事務所のクライアントに限っての話ですが、外部委託依存度が高いドクターほど、収入も多く、可処分所得も高いというデータがあります。言い換えれば、専門分野は専門家に任せておいた方が間違いないという考えなのでしょうが、そういうドクターに話を聞くと、決まって照れながら、「自分は面倒くさがり屋なんで、できないんだよ」と苦笑いされます。
患者個人個人の状況に配慮し、柔軟性を持って対処する
開業に至るまでは準備も滞りなく進み、順調で何の問題もなかったにもかかわらず、いざ開業してみると、集患が伸び悩み、売り上げが芳しいとはお世辞にも言えない状況のクリニックがあります。
その原因を探ってみると、院長が経営者として持つべき基本的な心構えが欠落していることが少なくありません。クリニックを維持し、かつ成長させていくためには、一般の企業経営者と同様の意識と自覚が不可欠です。
では、1人でも多くの患者を集め、売り上げを伸ばしていくためには、経営者としてどのような心構えが必要となるのでしょうか。
まず、第一は、患者本位の医療を心がけることです。そのためには、常に患者のニーズや不満を把握し、患者に対してより高度な治療を提供し、快適な院内環境を実現する姿勢が求められるでしょう。
特に目を向けたいのは、患者の待ち時間の改善です。下記の図表に挙げたのは、医薬品会社エーザイが2010年にクリニックの患者7700人を対象に行った「第4回患者様アンケート調査結果」の「患者の満足度改善ポイント」に関するグラフです。
「治療の効果」と並び、「待ち時間の長さ」に関する患者の重視度が特に高いことが明らかにされており、言い換えるならば、多くの患者が、診療の前後において、長時間待たされることに対して非常に強い不満を持っていることが窺えます。
患者の待ち時間を短縮するための改善策には様々な方法があるでしょうが、一番効果的なのは、電子カルテ入力の迅速化です。カルテ入力に時間がかかっていると、必然的に、その後の会計が遅くなります。せっかく診療までがスピーディーに進んでも、最後の会計で長時間待たせてしまっては、「このクリニックは患者を待たせて平然としている」という悪印象を与えることになるでしょう。
このような事態にならないよう、カルテ入力は手際よく処理することが肝要です。パソコンに不慣れなドクターの場合や、来院患者数が突出しているクリニックにおいては、最近では専属の入力担当者を採用しており、その担当者がチェアサイドでドクターの代わりに入力している光景をよく見かけます。
患者本位のサービスを徹底するためには、クリニックの方針を一方的に押しつけるのではなく、患者個人個人の立場や状況に配慮し、ある程度の柔軟性を持って対処することが重要です。
あるクリニックの院長は、「スポーツクラブに泳ぎに行く時間が決まっているから」という理由で、毎日午後6時になると判で押したように入口のブラインドを下ろし、それ以降に訪れた患者はたとえ1分遅れただけでも診ようとしません。
「先生は、診療より水泳の方が大事なのですか?」という問いに対して、ためらうことなく「そうだね。受付時間を過ぎてまで診療する気はないね」という答えが返ってきたと言います。このクリニックには、患者への配慮は感じられません。
一方、別のクリニックの院長は、会計を終えていない患者が待合室に残っている限り、入口を閉めることはしないので、多少受付時間を過ぎていても杓子定規に断ることなく、積極的に診療することを方針としています。
この相対的なクリニックのうちどちらが繁盛しているのか――答えは言わずとも、おわかりでしょう。