スタッフが定着しないクリニックは患者数も減っていく
経営者の心構えのひとつとして、雇用しているスタッフを大切にすること、具体的にはスタッフに対して、利益を相応に還元することも重要な要素です。
十分な利益が残っているにもかかわらず、それを従業員に還元することに積極的ではない、あるいはそのこと自体に気が付かないという院長は、実は少なくありません。スタッフはずっと院内に常駐しているわけですから、来院患者数の増加も肌身で感じているでしょうし、受付に至っては会計をする関係上、1日にどのくらいの売り上げがあるかを把握しています。にもかかわらず、還元は一切なされないとします。
このような院長のもとで、スタッフは「いつまでもこのクリニックで働き続けたい」という気持ちを継続していくことは困難です。モチベーションが上がるはずもありません。実際、どんなに患者が増えていても、「これ以上の昇給は、君に関しては考えてない」とスタッフに対して通知しているクリニックを知っていますが、そこでは不満を持ったスタッフが次から次へと辞めており、常に求人広告を出しているような有り様です。
当然のことですが、スタッフが定着しないクリニックにおいては、次第に患者も減っていきます。来院患者の多くは、持病があったり、怪我をしていたりと不安な心理状態にあります。
そうした状況下で、スタッフの入れ替わりが激しいと、安心感を得ることができず、「このクリニックはこんなに次々とスタッフが入れ替わってはたして大丈夫なのだろうか、何か根本的に問題があるのかもしれない・・・」とぎすぎすとしたクリニックの雰囲気に嫌気がさして、自然と足が向かなくなってしまうのです。
一方、スタッフにしっかりと利益を還元しているクリニックにおいては、ドクターの方針を意気に感じているスタッフたちが固定化するので、行く度に顔ぶれが変わっているようなことはありません。
加えてスタッフのモチベーションも高いため、クリニックの雰囲気も良く、当然のことながらスタッフの感じも良いのです。よって落ち着いて、安心して治療を受けることができるため、再診の際にも自然と足が向くのです。
福利厚生に力を入れ、スタッフのやる気を上げる
筆者のクライアントの中には、毎年、春と秋の年2回、国内外へ社員旅行に出かけたり、年に4回、プレゼント付きの盛大な食事会を開催したり、スタッフ数がそれほど多くなければスタッフの誕生会を催すなどして、従業員福利厚生に力を入れているクリニックがあります。
こうしたクリニックの院長は揃って、「スタッフに長期間、高いモチベーションを持って勤めてほしいから頑張っている」と話しています。こうした思いやりはスタッフに確実に伝わるので、スタッフ各人の心の中では「この院長のもとなら、一生懸命頑張りたい」というやる気が出るのです。
何事においてもギブアンドテイクを大切にしなければ、円滑なコミュニケーションは図れません。それはたとえ、雇用者と被雇用者との間であっても同様なのです。
「損して得取れ」とはっきり言うわけではありませんが、スタッフのために身銭を切れる院長が経営しているクリニックは、間違いなく、開業後、順調に来院患者数が伸び続けます。