「医療機関同士の連携」で患者にベストな医療を提供
これまでの連載で述べたような基本的な心構え以外にも、開業後にクリニックを発展させていくためには、常に経営の効率化を目標に掲げて医療の提供を行うことも必要となります。
とはいっても、物販や製造ではなく、医療ですので、できることとできないことがあります。効率化を目指すあまり、医療過誤が起こってしまっては元も子もありません。効率化にあたって、ここでは特に重要なポイントを2つ挙げておきます。
第一は、他の病院との連携を図る方法、すなわち「病診連携」を着実に推進することです。第二は、他のクリニックとの連携を図る方法、すなわち「診診連携」の意識を強く持つことです。
病診連携、診診連携がともに円滑に機能していると、自院における不十分な部分について、他の病院もしくは他のクリニックに補完してもらうことが可能となり、結果的には患者に対してベストな医療を提供することができるのです。
整形外科を例にすると、病診連携によって入院患者の紹介が円滑にできるようになります。筆者の友人に、出身大学病院の門前で整形外科クリニックを開業した医師がいます。整形外科では複雑骨折等、患者の手術や入院が必要となる症例がよくあるので、このような場合において、常にスムーズに出身大学病院で受け入れてもらえることで患者からも大変喜ばれています。
また、歯科においては、大学病院と連携することによって、診療効率をより高めることが可能となります。
例えば、親知らずは生え方によっては抜歯に大変な時間を要する治療のひとつです。口腔外科出身の歯科医師ならばいざ知らず、こうした治療を自院において行うことで予想外の時間がかかってしまい、他の患者を長時間待たせてしまうことが往々にしてあります。それならば最初から大学病院に紹介して、専門医に抜歯してもらう方が双方にとって理にかなっているといえるでしょう。
他の病院・クリニックと良好な関係を築くには?
反対に、病診連携、診診連携が十分に図れないことによって、結果的にクリニックにとってマイナスイメージを持たれてしまうこともあります。
一例を挙げると、矯正歯科で歯列矯正を行う際、事前に抜歯が必要となるケースがあります。自院では通常、抜歯をしないので、他の一般歯科医院で行うことになりますが、両者の連携が不十分であると、意見の相違から、矯正の治療に支障を来す可能性があります。その結果、患者に余分な負担をかけてしまい、かえって治療期間が長引いてしまうことがあるのです。
また、循環器内科での診療の結果、オペが必要なケースであっても、提携病院にベッドの空きがなく、オペはできても術後のベッドが確保できないようなケースもままあります。こうした場合、患者からはあのクリニックの院長は、提携病院が少ないのでベッドすら満足に確保できないなどと悪く言われてしまうケースもあります。とんだとばっちりなのですが、言われた方もたまりません。
クリニックが、病診連携、診診連携を円滑に行っていくにあたっては、やはり他の病院や他のクリニックと普段から良好な関係を築いておく必要があります。ドクター同士のコミュニケーションを密にして、ある程度のリクエストは受け付けてもらえるように常日頃からお互いに配慮し合うことが必要でしょう。
病診連携においては、クリニック側では病院の忙しさを十二分に考慮して、紹介患者は断らずに診ていく必要がありますし、一方、病院側では、クリニックからベッドを確保してほしいという依頼があった場合には、最大限の努力を持って応えていくような環境がなくてはなりません。また、院長自身が体調を崩したり、仏事でクリニックを閉めなくてはならないような場合に、医局から急遽、代診ドクターを派遣してくれることもあるでしょう。
一方、診診連携においては、クリニック同士が近距離にあるケースが多いため、常日頃から行き来しあうことで交流を深めておく必要があります。こうしていくことで、あうんの呼吸でコミュニケーションを取ることが可能となります。また患者も双方にかかっているケースが多いので、相互に診療範囲を定めておくことで患者に対するサービス向上にも繋がっていくのです。