多くの人が買い物感覚で楽しんでいる「ふるさと納税」の返礼品、保険の返戻金や満期金、競馬や競輪での大当たり…。しかし、金額によっては課税対象となり、申告せずにいると税務署から厳しいチェックが入ることに。本記事では、課税対象であることがあまり知られていないけれども、税務署が「一時所得」と認定している収入について、WT税理士法人代表社員でベテラン税理士の板倉京氏が解説します。

税務署は、ふるさと納税を「寄付+贈与」と認識

ある日、サラリーマンのAさんに税務署から連絡が入りました。

 

「保険の満期金を受け取っているようですが、それについての申告漏れがあります。税務署に来てもらえませんか?」

 

Aさんは生命保険の満期金を受け取っていたのですが、申告をしていませんでした。Aさんはまさか、保険の満期に税金がかかるとは思っていなかったのです。

 

しかも、税務職員はそのあとこんなことを言い出したのです。

 

「Aさんは、ふるさと納税をかなりしていますが、これも課税の対象になります」

 

所得税や住民税の節税になると人気のふるさと納税。寄付をした自治体からの返礼品を目的に利用者は増加し、平成29年度では130万人が利用したと言われています。そんなふるさと納税ですが、実は受け取った返礼品は、所得税の課税対象になります。

 

「ふるさと納税の返礼品は、地方公共団体から受けた贈与になるため、『一時所得』に該当する」というのが、国税庁の見解なのです。

 

ふるさと納税とは、応援したいと思う地方自治体に寄付をすることで、所得税や住民税の控除を受けることができる制度です。寄付とは金品を贈ること。しかし実際は、ふるさと納税を「寄付」というより「お買い物」に近い感覚でおこなっている人がほとんではないでしょうか。

 

税務署から見れば、「買い物」のように行われるふるさと納税は、「寄付(ふるさと納税)」と「贈与(特産品をもらう)」の二つの行為が行われていることになるのです。

 

「寄付(ふるさと納税)」は、寄付金控除で所得税や住民税の控除・還付が受けられる優遇制度の対象。一方の「贈与(特産品をもらう)」については、一時所得という所得税がかかるというわけです。

 

とはいっても、ふるさと納税の返礼品をもらったら、即税金がかかるわけではありません。ふるさと納税の対象とされる「一時所得」は、「特別控除額」を引いて計算するため、儲けが50万円を超えない限り、税金はかかりません。

 

<一時所得の計算方法>

一時所得の金額=「総収入金額」-「収入を得るために支出した金額」-「特別控除額(最大50万円)」

 

ふるさと納税の儲けとは、もらった返礼品の金額です。寄付金は収入を得るために支出した金額にはなりません。

 

返礼品の金額ははっきりわからないものも多いのですが、ほとんどの自治体は、寄付金よりも返礼品の金額が少なく設定されていますから、年間50万円以下のふるさと納税だけであれば、一時所得が課税される可能性はほぼないということです。

生命保険の満期金・返戻金、競馬等の払戻金も一時所得

では、なぜAさんは「ふるさと納税にも課税する」と言われたのでしょうか。

 

それは、保険の満期金を受け取っていたからです。

 

一時所得は、ふるさと納税だけではありません。その年のすべての一時所得を合計して、計算するのです。

 

<一時所得となる主なもの>

 ●保険の満期金・解約返戻金
 ●競馬・競輪などの払戻金
 ●懸賞や福引の賞金品 etc・・・

 

保険の満期金や解約返戻金も一時所得です。

 

今回、Aさんは保険の満期金で600万円を受け取っていました。支払った保険料は、400万円。これを一時所得の計算に当てはめると、

 

一時所得:600万円-400万円-50万円=150万円

 

保険の満期金だけで、150万円の一時所得があったのです。

 

ちなみに、その年のふるさと納税の金額は60万円でした。仮に、返戻率が3割だったとすると、これだけで20万円の一時所得となります。つまり、Aさんは、保険の満期金と合わせて170万円の一時所得があったということになってしまうのです。

 

知らない人も多いと思いますが、競馬や競輪も一時所得の対象です。

 

以前、競馬大好きな某有名アナウンサーが約800万円の万馬券をあてたことが、スポーツ新聞に取り上げられたことがありました。

 

800万円の万馬券をあてたら、どのくらいの税金がかかるのでしょうか?

 

その馬券が10万円だったと仮定して、計算してみると、

 

一時所得:800万円-10万円-50万円=740万円

 

一時所得はその額の1/2に課税する決まりになっていますので、

 

740万円×1/2=370万円

 

が、課税対象です。

 

某有名アナウンサーさんの年収はおそらく高額でしょうから、所得税と住民税の最高税率55%で計算すると、「370万円×55%=203万5000円」です。

 

結構な額の税金になりますね。このアナウンサーさんは、しっかり納税されたとのことでよかったですが、もし競馬の儲けが一時所得だということを知らずに申告していなかったとしたら・・・。

 

ニュースで大きくとりあげられた万馬券ですから、税務署が見逃すとは思えません。申告漏れを指摘されて、追徴課税を課されていたかもしれません。

 

ちなみに、今までのはずれ馬券がたくさんあったとしても、経費にできるのは、あたった時に買った馬券だけです。

 

一時所得は、意外なものにもかかる税金です。ぜひ注意していただきたいと思います。

 

 

板倉 京

WTパートナーズ株式会社 代表取締役
WT税理士法人 代表社員
税理士

本記事は書下ろしです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

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