大量のお札が世の中にあふれると…
◆日本銀行が国債を買いとっている
お金が足りなくて1000兆円も借金している日本。「じゃあ、日本銀行に命令して、もっとお金を印刷したらいいのに」と、思うかもしれません。ところが、そう簡単にはいかないんですね。
ふつう、日本銀行がお札を発行するときは「同じ価値のあるものと引きかえにする」というやり方をします。たとえば、「銀行が持っている国債を、日本銀行が買いとる」ときに、お金を発行します。そのお金が、銀行を通じて、世の中に出回っていくわけです。
◆お札が世の中にあふれると経済が大混乱
前のページでお話ししたように、国債を発行するのは日本政府です(関連記事『子どもたちも払う「消費税」が増税される本当の理由』参照)。「それなら、国がたくさん国債を発行して、全部、日本銀行に買いとってもらったら?」。じつは、それも禁止されているんです。
大量のお札を手に入れた政府がそれを使って、大量のお札が世の中にあふれたとしましょう。でも、お金で買える商品の数はすぐには増えませんよね。すると、お金と商品の「需要と供給」の関係が変わり、お金の価値が下がります。つまり、商品の値段が上がっていくんです。後でくわしく説明しますが、こうして商品の値段がどんどん上がっていくことを「インフレ」といいます。
インフレは経済を大混乱させるもとです。昔、ドイツでインフレが起きたときは、喫茶店でコーヒーを注文してから、飲み終わってお会計するまでのあいだにコーヒー代が値上がりしていたそうですよ。
日本銀行によると、家庭や会社、銀行など、世の中に出回っていたお札は合計で106.7兆円でした*。お札をつみ重ねると、富士山の約438倍の高さ(約1653km)、また横に並べると地球の約64周ぶん、月までの距離の約7倍の長さ(約257万km)になるそうです。
*2017年12月31日の時点
景気をよくするための「2つの対策」とは?
◆景気は上下をくり返している
景気がいい、景気が悪いという言葉も、よく聞きますね。商品がたくさん売れてもうかった、給料が増えたからたくさん買い物をしよう、そういう人や会社が増えて経済が元気になっている状態を「景気がいい」といいます。反対に、商品が売れない、会社がもうからない、給料も減った、仕事がなくなった、お金を使わず節約しよう、こんなふうに経済の元気がなくなっていく状態を「景気が悪い」といいます。
おもしろいのは、景気はよくなったり悪くなったり、波のように上下をくり返すことです。景気がよくて商品が売れるからといって商品をつくり続けると、いつかは売れなくなります。「需要と供給」のうち供給のほうが上回るからです。すると景気は悪くなります。そこで、つくる商品を減らすと、「需要と供給」のバランスがよくなり、また商品が売れはじめます。景気がよくなる、ということです。
◆景気をよくするための対策は2つ
だれだって、景気がいいほうがうれしいですよね。だから景気が悪くなるたびに国はいろいろな「景気対策」で景気をよくしようと工夫します。1つは「財政政策」です。新しく道路や橋をつくったり、公共事業のためにお金を使うことで仕事を増やし、売れる商品を増やします。
もう1つは「金融政策」です。これは金利を下げることをいいます。日本全体の金利をコントロールしているのは、日本銀行です。日本銀行が金利を下げると、会社がお金を借りやすくなります。お金を借りて、新しい工場を建て、新しい機械を買えば、そこでも新しい仕事が生まれ、商品が売れます。
景気のよしあしをはかるモノサシがあります。自動車が売れている、失業者が減っている、会社がおさめる税金が増えている、電気の使用量が増えているといったことは、「景気がいい」証拠です。こういったモノサシを、まとめて「景気動向指数」といい、ニュースでもよく取り上げられます。