1月のFOMC議事要旨から読み取れる「2つの変化」
米連邦準備制度理事会(FRB)は、2月20日に連邦公開市場委員会(FOMC)会合(1月29-30日開催)の議事要旨を公表した。FOMC終了後の声明で出されたハト派的なFRBの金融政策姿勢に関するメッセージについて、より詳細な手掛かりを与えるのではないかという点で注目されていた。
まず、1月FOMCを振り返ってみよう。今回のFOMCでは、金融政策に変更はなかったが、FOMC後に発表された声明からは、前回FOMCに比べて、2つの変化を読み取ることができた。1つは、金融政策について「辛抱強く」検討していくという表現で、今後の利上げを停止する可能性が視野に入っていると読み取れることである。2つ目は、FRBのバランスシート縮小に関して、より柔軟に対応していく用意があると示唆されている点である。
1つ目の点には、市場が最も注目した。今後も利上げを継続するかどうかについては、「忍耐強く」判断していくとして、2019年内でも更に2回の利上げを示唆するような、これまでの記述からは大きく変更されたのである。
パウエルFRB議長も会見で、米国経済は引き続き良好な状態にあると述べたものの、海外の情勢などを踏まえて、経済成長に対する「さまざまな逆風」が強まっており、金融政策を遂行していくうえで、当面の間、忍耐強さを持って臨むことを繰り返した。これにより、金利が上昇しすぎて、米国経済の成長が腰折れてしまうという市場の懸念が和らいだ。
今回の議事要旨では、政策金利に関して、委員の数人は「インフレ率が基本見通しを上回った場合に限り」政策金利の利上げが必要になるとして、金利据え置きが前提とされるように読み取れる一方、経済がこれまでの予想通りに展開した場合は、やはり年内の利上げが適切になると指摘する委員もおり、政策金利については、今年どのように調整していくことが適切か、意見が分かれ、方向感は明確になっていないことがうかがわれる。
ただ、前回までのFOMC議事録と比較すれば、FOMCに臨む委員の姿勢が随分と変わったことは明らかだろう。
2つ目の点であるが、今回FOMCでは、バランスシート調整、即ち、量的な金融政策のアプローチに関しては、声明を別建てにして発表されていた。議事要旨でも、このバランスシートの規模正常化について多くの言及がされている。
この中で、「ほぼ全ての参加者が、当局保有資産の縮小を年内に停止する計画をそう遠くない将来に発表するのが望ましいとの考えを示した」と記されており、これまで保有資産の縮小を着々と進めてきた姿勢からは、随分と変わったことがわかる。
「利下げ」にまで至る可能性は低い
FRBの金融政策の次の一手が、利上げなのか利下げなのかまでは、明確になったとは言えない。しかし、金融政策に関する明確で強気な示唆がなくなったことは、利上げの打ち止めとまでは言い過ぎだが、当面の間、政策金利を維持するスタンスに転換したと解釈できる。市場は、FRBの金融政策が米国経済の腰折れを引き起こすリスク要因ではなくなったとの安心材料になるだろう。
筆者は、年内は利上げをせず我慢する、まさに「辛抱強く」見守る姿勢を取るのではないかと今のところ考えている。一方で、市場が織り込もうとしている「利下げ」については、懐疑的に見ている。米国債の利回りで、3か月から5年までの金利が2.50%近辺でフラットに並ぶという現象が起きているが、やや突っ込みすぎではないか。長期金利も含めここから一段と金利が低下すると期待することは難しいと考える。
従って、米ドル金利の低下から、ドル円為替でのドル安を見込む参加者も多いが、筆者は金利低下期待自体に懐疑的であるので、ドル円の下値はむしろ固いと予想している。
次回のFOMCは3月19-20日に開催される。政策変更はないと予想しているが、以前にも指摘した通り、景気見通しや金利見通しを示すドットチャートも公表されるFOMCであり、注目が集まろう。2018年ほど、FRBの金融政策に関心は集まらないだろうが、パウエル議長やFRB高官の米国経済の先行きに関する発言は、示唆に富むと思われ、しっかりとフォローしていきたい。
長谷川 建一
Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB/日本ウェルス) CIO