予算以上のモノを買って「浪費しない」メンタルを磨く
予算より高めのモノを買ってみる
本書(『使えば増える! お金の法則 ―ワクワクしながら資産づくり―』)ではこれまで、
●資産とはどんなものか(本書『使えば増える! お金の法則』Chapter1、3参照)
●なぜキャッシュではなく、資産を持つ必要があるのか(本書『使えば増える! お金の法則』Chapter4参照)
という知識と、
●資産流出につながるような行動をやめる
●資産になるモノを見極める
●脱現金主義でお金の支払い方法を変える
という資産形成のためのノウハウを説明してきました。
日々の生活の中で無駄遣いを減らしたり、現金払いよりカード払いにしたりというのは、生活を見直すことが中心になりますので、実行しようとする意志さえ持てば実現しやすいものだと思います。
一方、取り組みにくいのは、資産がどんなものかは理解しても、モノを選ぶときにどうやって資産を取り入れるかということだと思います。「自分の嗜好(しこう)が急に変わるわけではないし、使って楽しく、なおかつ資産にもなるモノなんて、今までの生活の中で意識したことなんかない」というのが本音ではないでしょうか。その感覚自体は間違っていません。
そこで、オススメしたいのは、あえて予算より高めのモノを選んで買うということです。
日々の生活の中で買うモノを急に変えることはできません。けれども、いつも買っているモノの予算を変えるというのは、取り入れやすいと思います。予算より高いモノを買い続ければ、お金が減っていくと思いがちですが、実はそんなことはありません。この段階に入っているということは、すでにある程度の資産形成マインドは身につけているはずですから、予算以上でもお金を浪費するようなことにはならないのです。
Rule
予算より高いモノを買うことが資産形成では必要
じっくり選ぶクセをつける
予算より高いモノを買うための最初のステップとして、食品や洗剤など使い切るモノではなく、洋服などわりと長く使うモノでチャレンジしてみてください。その際、いつも買うお店とは違う店、できれば単価の高いお店を選んで入るとよいでしょう。
商品を見て、「うわっ、高い!」と思えたら、合格です。
次に、その店で商品を選ぶ際は、いつもの店とのモノのクオリティーの違いを感じてみてください。通常、単価は製造や販売過程に関わる費用に、一定の利益をプラスして決められています。
例えば、アパレルは原価率3割前後とよく聞きます。つまり、原価率3割の商品というのは、定価1万円であれば3000円が原価(材料費など)、定価2万円であれば原価は6000円というところでしょうか。
それで考えると、同じような商品でも、2万円の商品と1万円の商品では原価が倍違うので、製品自体のクオリティーも違って当然なのです。その違いを感じることができたら、単価が高い店に入った意味があるのです。
逆に、その違いが感じられないとしたら、それはお店の問題かもしれないですし(原価率を非常に低くして3000円の原価なのに2万円で売って利益を膨らませていたり、宣伝にお金を優先的に使ってクオリティーにはこだわっていなかったり)、もう1軒単価が高い違うお店に行ってみて、クオリティーの違いを確かめてみるとよいと思います。
それでは、いよいよ購入です。
いつもより、じっくり考えて、じっくり選んで、本当に気に入った上で購入を決めてください。一晩寝かせて考えてみてもよいと思います。ほかの店を見てからでもよいと思います。別にその日に買う必要はないのです。予算より高いモノを買うのですから、時間をかけて当然です。
やってはいけないのは、お店の人に勧められるまま、しっくり感じていないのに買ってしまうことです。このときばかりは自分中心でよいのです。目的を持って探していて、自分のニーズに合う商品が見つからないのであれば、いろいろ手伝ってくれた店員さんには「申しわけないな」と思っても、「申しわけないから商品を買う」必要はないのです。
また、もう一つやってはいけないことは、高いお店に行って購入しなかった後に、いつものお店に戻って購入することです。今回の目的は、いつもと違う商品にお金を使ってみることなのに、これではいつもと同じ消費行動になってしまうのでNGです。しかも、単価の高い店から安い店に移動することで割安感を感じてしまい、必要ないモノまで購入してしまうリスクも考えられます。
予算以上のモノを買うことで、じっくり考えるクセをつける。こうすることで、浪費しにくいメンタルを身につけることができ、モノの違いを知ることができます。
Rule
資産としてのモノを買うなら、ワンランク上のお店でじっくり考えて選ぶ
予算以上のモノを選ぶことで将来的な節約になる
長く使えるモノを選ぶようになる
予算より高いモノを購入すると、自然な流れとして、より長く大事に使おうと思うようになるはずですし、また、そういうモノを選ぶと思います。万が一、そういうふうに思えないとしたら、予算より高いモノを購入するにあたり、必ず長く使えるモノを選ぶことを自分に課してみてください。
予算より高いモノを買うときに、長く使えるモノを選びたい理由は、長く使わないと費用対効果に見合わないからです。
連載第4回(関連記事『新品の価値は一瞬で消えるのに?非効率な日本人の「中古嫌い」』)の「『減価償却』の観点でモノを見る」でも述べたように、減価償却年数が長いモノ、つまり耐用年数が長いモノほど、価値が落ちにくいので、そういうモノの購入はお金の効率的な使い方ができているということです。
次に、長く使えるモノを買うときに、押さえておきたいポイントを述べましょう。それは、自分の未来を想像しながらモノを選ぶことです。これは想像力も使いますし、自分を見つめ直すことにもなるので、非常にオススメです。
例えば、「5年後にどんな自分でありたいか」を想像しましょう。「5年後は、誰かと結婚して幸せな家庭を築いている」と思う未来に対してポジティブな人もいれば、「5年後も、どうせ今の自分と変わらない生活をしている」と思う未来に対してネガティブな人もいるでしょう。
ここで、未来にポジティブな人は、もっと未来の自分のイメージに“決め打ち”をして、「5年後は、結婚していて落ち着いた女性になっている」という前提で、モノをそろえていくのがよいと思います。未来にネガティブな人は、「何かになれる/なれない」はひとまず置いておいて、まったく今の自分と遠くても「なりたい理想の自分」のイメージをつくってみてもよいでしょう。
「未来が動き出すまで何も買わないので、何もイメージしなくてもよいのでは?」と思うかもしれませんが、生活していく上で、必ず何かは買います。そうであれば、想像力をフルに活用して長く使えるモノを選んだ方がよく、それが後に資産にもなるのです。
私は、アナリストになる前は、恥ずかしながら、ソニーでミニスカ金髪OLをやっていました。そんな中、どんな30歳を迎えたいかを考えて、まずは落ち着いた黒髪に戻しました。その後、アナリストになるにあたって、アナリストらしい格好一式をそろえてみましたが、その方法は、その業界の憧れの先輩と一緒に買い物に行き、その人が「必要」というアイテムを、ほぼその人のテイストで選びました。膝下のタイトスカートなんて、その当時の自分の趣味とはまったく異なりましたし、自分のいつもの買い物より予算も超えていましたが、その後5年間、シャツを買い足す程度で、驚くほど買い物が必要なかったのです!
長く使えるモノを選ぶということは、自分らしさも大事にしながら、なりたい自分を想像して選ぶ必要があるのですから、ただお金を使うのではなく、想像力が大切になります。そして、将来にわたって長く使えるモノを買うことで、次回の買い物までの期間を延ばすことができるのです。
Rule
なりたい自分を想像して、将来にわたって長く使えるモノを買う