今回は、資産となるモノの見極め方・買い方について見ていきます。※本連載では、経営者や中小企業向けにアセットアドバイザリーを行う株式会社HAM代表取締役の垣屋美智子氏の著書、『使えば増える! お金の法則 ―ワクワクしながら資産づくり―』(時事通信社)の中から一部を抜粋し、資産づくりにつながる「効率的なお金の使い方」について解説していきます。

なぜアンティーク時計の資産価値は高いのか?

資産でないモノにお金を使っていませんか?

 

第1回(参考記事『「財布がパンパンに膨れている人」がお金持ちになれない理由』)から資金流出を防ぐことを述べたので、ここでは、いよいよ資産になるモノを買うことについて述べましょう。

 

せっかくお金の無駄遣いをやめても、ここで間違ったモノを購入してしまったら、元も子もありません。資産を買っているつもりで実は消耗品を購入していたり、資産は資産でも高値つかみ(高値で買ったモノが後で値下がりすること)をしていたり…。

 

そういう目に遭わないためには、モノの資産価値について知る必要があります。

 

例えば次の時計の中で、購入後、10年使ったとして、資産価値が最も下がらないのはどれでしょう? また、もしあなたが買うとしたら、どれを選びますか。

 

□アンティークの高級機械式腕時計30万円

□フランスの有名ブランドのクオーツ腕時計40万円

□スマートフォンと連動するスマートウオッチ5万円

 

これらの情報以外に何もないとすると、一般的に見て、上から順に資産価値は下がりにくいと考えます。

 

理由として、まず、モノというのは最新技術を取り入れた革新的商品であればあるほど、技術改善が短期間で起こりやすく、既存のモノの価値は落ちやすいといえます。電化製品はまさにこれに当てはまりますので、スマートウオッチの価値が最も早く下がるという説明ができます。一方で、機械式腕時計は何世紀もかけて少しずつ進化しているもので価値が下がりにくく、スマートウオッチとは対極にあるといえます。クオーツ腕時計はスマートウオッチと機械式腕時計の間になるでしょう。

 

次に、需給のバランスですが、スマートウオッチとクオーツ腕時計は大量生産が可能なので供給不足になることはありません。そのため、経年劣化により価値も徐々に落ちていくと考えられます。これに対して、アンティークの高級機械式腕時計は、供給が「限定的」で、需給のバランスを考えれば、その価値は維持されると想定できます。むしろ、そのアンティークの時計のブランドが再評価されれば、中古だとしても価値が上がっていくことさえあり得ます。

 

このようにモノの耐用年数と将来の需給のバランスをもとに、客観的にモノを見るとどれに資産価値があるかが分かります

 

さて、それでは、資産価値に納得ができたとして、あなたはどれを買いますか。

 

私なら、お金に余裕があればスマートウオッチを買い、お金に余裕がないのであれば機械式腕時計を買うと思います。

 

理由としては、スマートウオッチは欲しいとは思いますが、完全に消耗品なので、数年で使えなくなることが前提です。ですからお金に余裕がなければ買いません。けれども単純に時計が必要で、自分に余剰資金がなければ、一生使うつもりで機械式腕時計を購入します。もし30万円が用意できないのであれば、この時計を将来購入することを目標にして、その間は安い時計で代替するか、いっそのこと、スマホで代用し時計は持たないかもしれません。

 

資産でないモノを見極め、妥当な価格で購入するには、「欲しい」という主観で判断するのではなく、今の状態と未来の状態も含めて、モノを見る目が必要なのです。その上で、自分に合ったスタイルで資産を増やしていくのがよいと考えます。

 

Rule

モノの価値は、耐用年数と将来の需給バランスで決まる

資産に適するのは「減価償却年数」の長いもの

「減価償却」の観点でモノを見る

 

モノの価値を見極めるためには、そのモノの寿命を見ます。食べ物であれば賞味期限、製品であれば耐用年数です。賞味期限同様、耐用年数が残り少なくなればモノの価格は安くなります。この耐用年数を会計の世界では「減価償却年数」といいます。

 

例えば、10万円で購入したパーソナルコンピューター(PC)の減価償却年数(=耐用年数)が5年だとした場合、1年ごとに2万円ずつ価値が下がっていきます。丸5年たった後の価値はゼロです。

 

このPCを2年落ちで購入する場合、2年で4万円価値が下がるので、妥当価格は6万円になります(実際の取引価格は、使用状況と市況を加味して決められます)。ですから、中古品が新品よりも価格が安くなるのは、誰かが使った後だからという理由だけでなく、新品でないため耐用年数が短いからということでもあります。

 

[図表]10万円のPCの減価償却年数

 

電化製品は、技術革新もあるため、最新モデルと比べたスペック(仕様・性能)の低さも減価償却年数が短く、最終的に価値がゼロになってしまう理由です。価値がゼロになるため、資産ではなく消耗品の部類に入ります。

 

少し前、テレビの画面が薄型ディスプレイに切り替わってきたときの話です。

 

わが家にも、夫が独身時代に購入した某メーカーのプラズマテレビがありました。当時は革新的な技術とフラットテレビということで100万円はしたと思われます。けれども、地上デジタル放送対応していないので地デジへの完全移行後は、専用のチューナーをつなげたりして耐用年数を引き延ばすべく使っていました。しかしその後、ネット対応がどうしてもできないので、15年使った後、ついに処分することになりました。

 

ところが、中古買取りをしてくれる業者も見つからず、結局無料で引き取ってくれる業者にお願いするしかありませんでした。

 

100万円のプラズマテレビを15年使ったということは、1年当たりの費用は6万7000円、1カ月当たり5000円強にもなります。この金額は15年使っての額ですが、10年で手放したとしたら、1年当たりの費用はもっと高い計算になります。

 

この例のように、新しい技術を即座に取り入れると、1年当たりの減価償却費が高すぎるということになるのです。

 

一方で、技術革新などがほとんどなく長く使えるモノや時代の流行に影響を受けないモノなどは減価償却年数も長いので、価値が下がるスピードも遅くなります

 

例えば、ダイニングテーブルや鏡台などは、技術革新などあまり関係がないので、何度も買い替えることはなく、長く使うことを前提に高価なモノを購入してもよいと思います。

 

同じお金を使うのであれば、減価償却年数が長いモノ、つまり長く使えるモノを購入した方が、お金の使い方としては効率的です。言い換えれば、長く使えるモノの方が価値は下がりにくいので、資産として適しているといえます。

 

Rule

資産としては、減価償却年数が長いモノが向いている

「新品」の価値は一瞬で消える…日本人の非効率な消費

新車、新築、新〇〇ほど価値のないモノはない

 

私は大学卒業まで海外で生活していましたが、帰国後から常々感じているのは、日本人の「新品好き」です。

 

自動車を購入するなら新車、自宅を購入するなら新築、といった具合に、特に高額なモノほど新品にこだわっている気がします。車や家ほど高額でなくても、第一子にはお下がりを着せないとか、新居には家具を新調するとか、新しいモノを購入したがる傾向があるように思います。もしかしたら、日本人は「新品好き」というより、中古品に対して、ネガティブなイメージを持っているのかもしれません。

 

しかし、これらの新品志向は、あまり意味をなさないだけでなく、非効率なお金の使い方につながります。例えば、自動車(=車)。

 

車は、本来“移動のための箱”ですし、使用期間に比例して値段は下がっていく消耗品です。アメリカでは、新車にこだわって買う人は少ないという印象があります。個人間取引で中古車を売買するというのもよくありますし、最近だと車を所有せずリースするというのも聞きます。では、消耗品である車を新車で購入するメリットはなんでしょうか。

 

自分の理想通りに、オプション内装がオーダーできること? それなら、内装まで好みの中古を探せないのでしょうか?

 

恐ろしいことに、新車は納車されてキーを入れてエンジンをかけた瞬間に価値が下がるのですから、2~3年乗られた中古車を買った方がむしろお得なのではと思います。中古車なら、新品では高すぎて購入できない車にも手が届いたり、予算内で選べる選択肢が広がります。ディーラー保証などもあるので、決して粗悪というわけではないのです。

 

私の知人に、中古で1年落ちのBMWを購入した人がいます。新車価格の60%で購入したそうですが、中古で購入したとは思われないようです。彼は「消耗品の買い物としては、このくらいの価格が妥当」と言っていました。

 

持ち家にしても同様です。

 

新築にこだわるのは日本人だけで、イギリスでは築100年以上の建物だらけで、そういう古い建物をリフォームして使うのが主流です。

 

不動産は消耗品ではありませんが、建物や内装部分の価値は下がっていきます。そして、新築の場合、新車同様、「新」の部分に一定のプレミアムが上乗せされています。

 

「新」プレミアムは、住んだ瞬間になくなってしまうものですから、最初からプレミアムが落ちた物件を買った方が、支払う額に見合う資産を手に入れられると思います。

 

間違っても、「システムキッチンが気に入ったからこの家を買いたい」などと思わないでください。リフォームすれば間取りさえも変更できるのですから、キッチンの広さや機能は関係ありません。

 

変わらないのは、立地と日当たりで、それらを気に入ることの方が建物の新しさより重要なのです。できれば建物の価値がほぼないくらいの古い物件を購入して、リフォームするのがオススメです。リフォーム代を含めても、新築より値段を抑えられる上に、住み心地のよい家になると思います。

 

ちなみに、私も家を中古で購入し、リフォームしました。住み始めて8年がたちます。

 

若い夫婦が中古マンションを購入するというのが珍しかったのかもしれません。当時は、「ずいぶん若い方が引っ越してきたんですね」とご近所に驚かれました。

 

高騰している都心の新築マンションよりも割安に手に入って、自分の好きなようにリフォームができたので、大満足です。

 

お金を効率よく使いたければ、何かを購入する際には、この対価に「新」プレミアムがどれだけあるかを考えてみてください

 

中古マーケットも存在して、「新」プレミアムの価値にさほどの妥当性を感じないのであれば、むしろ中古を検討するべきだと思います。

 

Rule

新品にはプレミアム価格が上乗せされて高くなっているので、中古マーケットがあればぜひ検討すべき

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