求める人が多ければ、モノの価値は落ちにくい
資産価値を考える上で、需要と供給のバランスも重要です。
需要が供給を上回る(需要>供給)状況になれば、モノの価値は上がり、反対に需要が供給を下回れば(需要<供給)モノの価値は下がります。
例えば、悪天候が続くとキャベツや白菜が高くなったりしますが、それは生産数(=供給)が落ちたことで「需要>供給」の構図ができたためです。逆に暖冬などで野菜が早く成長してしまうと出荷量が増えて値段が下がってしまう場合もあります。「需要<供給」の状況です。
また、ディズニーランドの入場料が値上がりし続けている背景も「需要(入場希望者数)>供給(定員)」が成立しているからです。
需給のバランスは時代によって変わることもあります。
「需要>供給」の状態からさらに需要増になって、需給が逼迫(ひっぱく)状態なのがアメリカの大学です。アメリカの大学の学費は、物価上昇率を上回るペースで高騰していて、学生が卒業後も学生ローンの返済に追われるケースは珍しいことではありません。
理由は公的資金が打ち切られていく一方で、教授などの人件費、キャンパスの維持費などにつぎ込む必要があるからです。
それならば、アメリカの大学進学率が落ちているかというと、むしろ上昇しています。
世界的な基準として使われる英タイムズ・ハイヤー・エデュケーション社による2018年の世界大学ランキングでは、上位30校のうち19校がアメリカの大学ですので、アメリカ国内だけでなく海外からの入学希望者も多いことでしょう。
実際、このランキングの上位にランクインしている私の出身大学カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)の学費を調べてみましたが、1999年当時の学費、年間1万3750ドル(約157万円)から2018年は年間4万6170ドル(約502万円)と3倍強に引き上がっています(日本円は1999年と2018年の平均為替レートをそれぞれ適用して換算)。
1999年当時も志願者が定員をはるかに上回っていましたが(需要>供給)、授業料が3倍強に引き上がった現在でも、さらに需要(入学希望学生数)が増えている状況です。
一方で、時代の流れとともに「需要>供給」→「需要=供給」→「需要<供給」になっているのが日本の大学です。
日本は少子化で15歳未満の子どもの数は1982年から一貫して減り続けています。現在、日本の大学数は国公立・私立合わせて800校弱あり、日本私立学校振興・共済事業団によれば、私立大学の44.5%が定員割れの状況とのことです(2016年5月1日時点)。
人口減に加えて、テクノロジーの進化もあって「需要<供給」になり、数が減ってきているのはガソリンスタンドです。低燃費化やハイブリッド車、電気自動車の登場でガソリンスタンドの数は右肩下がりです。
資源エネルギー庁の発表を見ると、1989年と比べて2016年のガソリンスタンドの数は46%も減っているのです。
人口減が将来どのようにモノの価値に影響するかを考えることは、特に日本において資産形成をする上では非常に大切な要素です。
常日ごろ、将来の需給バランスを意識するようにしましょう。モノの価値を見る目を鍛えられる上に、長期的な目線で物事を考える習慣も身につくことでしょう。
Rule
需給バランスを常に意識し、長期的な目線で物事を考えること
お金持ちがバーキンを選ぶのは理由がある
移り変わりの激しいファッション業界で、常に「需要>供給」の構図を維持し続けているアイテムがあります。ファッションにあまり興味がない人でも聞いたことがあるはずのアイテム、エルメスのバーキンです。
私の友達のフライトアテンダント曰く、「2000年代始めのユーロが導入された頃は、バーキンは30万円で買えたのよ」とのこと。
エルメスのバーキンといえば、今では200万円はしますし、新品を購入するのは至難の技です。彼女の言っていることをもとに計算すると、2003年から2018年の15年ほどの間に、バーキンの価格は30万円から200万円と年平均成長率13.5%で上昇したということになります。
このデータを裏付ける調査データもありました。
インターネットで高級バッグを再販するバッグハンター(Baghunter)の調査によると、バーキンの価格は、1984年の発売当初から一度も下落することなく、毎年その価値が14.2%上昇しているとのことです。
バッグハンターによると、バーキンがこれだけの価格上昇を実現できている理由を、エルメスの「特別な顧客にだけ販売する」という方針により、需要に対する供給不足を実現しただけでなく、「バーキンを持つ」という新しいステータスを提供することに成功した結果、と説明しています。
ブランディングの成功だけでなく、私がすごいと思うのが、バーキンはデザインが発売当初からあまり変わっていないということです。
流行の浮き沈みの激しいこの業界において、同じデザインで30年以上たっても世界的に供給不足の状態にある商品は稀(まれ)です。
ですから、デザインが安定していて、希少価値があり、根強い需要も世界的にあり、結果として価格が上がり続けているバーキンは、消耗品になりがちなバッグでありながらも資産として認識してもよいのではと思うのです。
バーキンを親子二代で使える資産として考えてみては、どうでしょうか。
バーキンの価格が現在200万円程度だとします。今200万円を子どものために貯金しておいても、為替変動やバーキン自体の値上がりで、20年後にバーキンを買おうにも200万円では買えない可能性もあります。
それならば、今、購入して、大事に使ったバーキンを20年後に子どもに譲った方が賢いのではないでしょうか。
バッグハンターの調査による発売からの14.2%という年率価格上昇率が、向こう20年間続くとしたら、20年後の新品のバーキンの価格は2800万円です。
にわかには信じられない価格ですが、同じように数千万円になったスイス製の時計も存在しますし、あり得ない話でもないかもしれません。
バーキンは、無駄遣いではなく「資産形成している」という確かな実感を持てる上に、「バーキンを持っている」という優越感に浸ることもできます。さらには流行にとらわれないファッションも身につけられるとは、なんてマルチなバッグなのでしょう。
今後も価格上昇が続くとしたら、ますます手に入りにくいバッグになるので、買うなら今かもしれません。
200万円のバーキンを持つことで、流行を意識する必要もありませんし、他のバッグを買いたい気持ちもどこかに消えてしまうでしょうから、今後のショッピングへの時間もお金も節約できるという二次効果もありそうです。
もちろんエルメスはバーキンを特別な顧客にしか販売をしないそうですので誰もが買えるわけではありませんが(だからこそ希少価値があるのですが)、自分が持ちたいと思っているバッグで買えるチャンスもあるなら、資産形成も兼ねて検討しない手はないのではと思います。
Rule
価格が下落しないバーキンは、ファッション以上に資産である
資産価値のないモノにローンを使っていませんか?
電化製品でも自動車でも不動産でも、ローンで支払うオプションがあるとして、ローンを使ってよいのは資産価値のあるモノだけです。
ローンは支払いを分割することで、初期の費用負担を軽減して買いたいモノを購入することが可能ですが、ローン利用に際しては手数料を支払うことになりますので、実質の支払い金額はローンを使わずに現金で買う場合より多くなります。
では、利息や手数料を払ってもローンを使うメリットはなんでしょうか。それは、現在の生活の経済負担を軽減することができるからです。
例えば、手元の資金を全部かき集めて自宅を現金で購入すると、手持ち資金がなくなり、その後、急に教育費や医療費などが必要になった際に、支払えないかもしれません。
そういった場合に備えて、ローンを使うことで、無理のない範囲で頭金を支払い、残りをローンにすることができ、その後の急な支払いの心配が軽減されます。
資産価値のあるモノにローンを使った場合、金利や手数料は“安心のための保険”ともいえます。
資産の代表格の不動産を自宅としてローンで購入した場合、万が一失職などでローン返済ができなくなった場合は、自宅を売却すれば、売却金でローンを返済することが可能です。つまり、資産だからローン購入をして利子を払っても問題ないわけです。
一方で、「消耗品」にローンを使った場合は、どうでしょうか。
例えば、PCを購入するのに10年ローンを組んだとします。そのPCが3年で使えなくなっても(=資産価値がゼロになっても)、残り7年間、ローンを支払い続ける必要があります。
ですから、価値がゼロになってしまう消耗品に、ローンを組むのはやめた方がよいのです。
特に、社会人になってひとり暮らしを始める人は、テレビや洗濯機、冷蔵庫、電子レンジなど、消耗品である電化製品をローンを使って、一気に購入することはオススメしません。
優先順位をつけて、お給料を使って少しずつ購入していくべきです。
Rule
消耗品をローンで買うのは勧めない