高校生のときに買ったティファニーのボールペン
モノを大事に使えるようになる
長く使えるモノを持っていると、むやみやたらにモノを増やしたいと思わなくなって、物欲も減りますし、持っているモノを大事に使おうという気持ちにもなります。
私が長く愛用しているモノの一つに、高校生のときに購入したティファニー(TIFFANY)のボールペンがあります。かれこれ20年以上愛用しています。その当時は手帳時代で、母の友人で20代の女性が、予定を確認するのにティファニーの手帳とボールペンを取り出したのを見て、憧れて購入した覚えがあります。
高校、大学、社会人生活を通してずっと持ち歩いていますが、年齢や時代を感じさせず、常に自分をエレガントにさせてくれているようで気分も上がります。ティファニーでは今も販売しているものですが、高校生から使っているこのペンには特別な思い入れがあり、大事に使っています(他のボールペンを買いたいという物欲も出てきません)。
減価償却の観点や将来の需給状況という、モノの価値の見極め方を知った上で、長く使えるモノを選べば、ただ単に自己満足で集めているのではなく、客観的に見ても資産と思えるモノを集めることが可能になるでしょう。
また、大事に使えるモノが周りに増えて、そういうモノに囲まれて過ごすと、気分もよいですし、落ち着いた気持ちで過ごすことができます。また、自分の大事なモノのコレクションで満たされた状態であれば、余計なモノを買う回数も自然と減っていくことでしょう。
Rule
大事なモノに囲まれて過ごすと、心が満たされ、余計な物欲がなくなる
浪費せずに生活や外見がワンランクアップする
もうお気づきかと思いますが、予算より高めのモノを買うのは、実は目的ではなく、長く使えて本当に大事にできるモノを選ぶためのトレーニングなのです。高いモノを買うことで、モノの購入のハードルを上げ、費用対効果まで考えて、長く使えて大事にできるモノを選べるようになるのです。
また、予算以上の商品を見ることで、モノの値段とクオリティーの相関性も知ることができます。実際のところ、高いモノを買うことが、必ずしも「正しい」「よい」というわけではありません。モノの値段設定には根拠があり、安いモノは安いなりの、高いモノは高いなりの特徴があるはずです。そこに注目せずに、「よく分からないけど、安いから買う」とか、「みんなが持っているから、高いけど買う」というのは間違っています。
クオリティーの違いを認識し、使用目的に合っているかどうかを確認し、将来にわたって使用する自分の姿を想像して、モノを購入することが大切なのです。
●予算より高いモノを買う
●長く使えるモノを選ぶ
●モノを大切にする
という3ステップを通して、私たちの消費者としてのモノを選ぶ目も養われていくでしょう。自分を見つめ直す機会にもなり、本当に大切なモノが分かります。そして、そういったモノを集めることで、よりシンプルに生活でき、いつもと違うモノに触れることで、自分のセンスも磨かれ、生活や外見もワンラックアップするはずです。
[図表]モノを見る目を養う3ステップ
Rule
モノを見る目を養えば、目が肥え、生活や外見のセンスがよくなる
人気の観光地よりも、自分好みの旅行を楽しむ
モノだけでなく、出かける場所も選ぼう
モノを選んで購入するだけが、今日から始められる資産形成ではありません。日々のアクティビティーの中でも、資産形成のマインドは応用できます。長く使うモノを選ぶとき、必然的にその候補から落とされていくのは流行りのモノでしょう。今年の流行りの色やスタイルは、来年には古くなってしまうので、多くの人は買わないと思います。では、出かける場所はどうでしょうか。
活動的に過ごすことは、生活を楽しむ上で大切で、必ずしも浪費とはいえませんが、あえて資産形成の観点でいうと、人気スポットや人が多く集まる場所は、需要が供給を上回っており(需要>供給)、本来の価値以上のコストや時間がかかりそうです。「人気のある場所に行くのは、やめた方がよい」とまでは言いませんが、コストがよりかかっているということを知っておくことは大切です。
例えば、ディズニーランドのように年間を通して人気スポットである場合は、すでに混んでいることが定着しており、需給のバランスが「需要>供給」の位置で落ち着いているので、「それでも行く」、あるいは「行かない」という選択肢しかありません。イースターやハロウィンなど、期間限定のイベントがうまく提供されており、供給をうまくコントロールして、私たちが時期をずらして行くということができない状況をつくり出しています。実際に私たちが行ったときの体験がよかったからこそ、「需要>供給」のバランスが維持され続けているのです。
一方で、時期をずらせば「需要>供給」が「需要=供給」、もしくは「需要<供給」になるケースもあります。
例えば、ニューヨークのハンバーガーショップのシェイクシャック(Shake Shack)。日本の第1号店が東京青山外苑前にオープンした際には、メディアでも大きく取り上げられ、毎日、長蛇の列ができていました。その当時、私は毎日お店の前を通って通勤していましたが、朝早くオープン前から並ぶ人がいて、行列が1日中途切れないという状態でした。けれどその行列も、2号店がオープンしたころから徐々に短くなり、1年もたたないうちに並ばなくても買えるようになりました。
このケースは、需要が減ったというより、供給が時間とともに増えていったために、短期間しか供給不足である時期がなく、旬のモノだったといえます。供給不足のレアな時期に行ったという体験が重要なのでなく、シェイクシャックのハンバーガーを食べるというのが目的であれば、少し時期をずらせば、より楽に達成できたのです。
レアであることに自分のコスト(時間)をかけるのか、時期をずらすのか、それは自分次第ですが、検討する価値はあると思います。
Rule
モノと同じく、場所も流行りを追うと価値以上のコストがかかる
タイミングをずらして、あえてニッチな場所に行こう
人気のある場所に行くことで、経験できることもあるし、話のタネにもなるでしょう。ただし、流行りに流されて、「雑誌(TV)に紹介されていたので、行ってみたの。思ったより、よかった(よくなかった)」というだけの感想しか得られないのであれば、時間とお金をかけて行く価値があるとは思えないですし、もっと思い出になって、ためになる体験がほかのことでもできるのではないでしょうか。
友人と家族ぐるみでハワイに行ったときの話です。
友人のお母様がどうしても行きたいということで、ワイキキビーチ沿いにある高級リゾートホテル内のレストランに朝食ビュッフェを食べに行くことになりました。雑誌で紹介されていた「高級リゾートホテルで過ごす気分を味わえて、ビーチサイドのオープンテラスが最高」という触れ込みを聞いていたようです。
そのレストランをネットで検索すると、日本語の情報がわんさかあるので、嫌な予感はしていました。そして行ってみると、予想通り、日本人だらけで朝からごった返していました。こちらは10名ほどの大人数で行ったので、窓際ではなく、風通しが悪く暗い奥の方の席での食事となり、高級リゾートホテルならではの優雅な朝食でもなければ、ビーチを眺めながらの朝食でもなく、まったく散々な経験でした。
値段もチップを入れて1人50ドル程度(約5500円)、10名で5万5000円くらいでしたが、値段に見合った価値はなかったと思います。ローシーズンであれば、すてきな経験になったかもしれませんが、やはり「人気スポットは、ハイシーズンに行くべきではない」というのが私の結論です。
流行りを取り入れることは、時代の流れの変化を知るという意味では大事です。オープンな気持ちがないと、新しいモノは取り入れられないので、流行りを取り入れるバランス感覚はとても大切です。
しかし、流行りばかりに価値を見いだしていると、無駄にお金ばかりかかってしまい、資産形成の観点からするともったいないことです。そもそも、流行りを追わなくても人生は楽しく過ごせますし、自分らしく生活した方が自分ならではの経験や知識は深まり、自分の資産となるでしょう。流行りの場所にどうしても近づきたいのなら、資産形成の観点から助言をすると、少しタイミングをずらしましょう。
同じお店でもランチの方がディナーよりお得だったり、旅行でもハイシーズンとオフシーズンで値段が違ったりしますよね。仕事や学校の関係で、オフシーズンや平日の昼間に都合をつけるのは、なかなか難しいかもしれませんが、どうしても行きたいなら、思い切って仕事を休んでみてはどうでしょうか。普段は働いている時間に安価に過ごせて、案外、ハッピー度が上がるかもしれません。
最後に、もう一つ。
あえて流行りをまったく無視したニッチな行動をするのも、資産形成になります。
「ニッチ」というのは、要は「大衆受けはしないけれど一定数の需要はある」ということです。大多数に注目されていないからこそ、価格も低めに設定されていることが多いので、費用対効果は優れている場合が多いです。
私自身は、ニッチなモノが好きなので、激混みの人気スポットよりも、あまり人が行かない場所や、旬でないスポットに行くのが好みです。最近だと、旅行でポルトガルのカスカイスというところに行ったのですが、友人に旅行先を話すと、「あんまりステータスシンボル(社会的地位を象徴するモノ)じゃないところに行っているよね。ほら、パリとかニューヨークとかハワイとかなら、『ザ・海外旅行』って感じで分かりやすいし、ステータスも高い感じじゃない」と言われました。
確かにポルトガルは歴史もありますし、ポートワインをはじめお酒や食事もおいしいのですが、決して「うらやましい」という言葉が最初に出るところではないかもしれません。実際、ポルトガルに行く経由地として滞在したパリには中国人がわんさかいましたが、ポルトガルでは中国人にほとんど出会いませんでした。中国人にとっても、ポルトガルはまだニッチな国のようです。
私はといえば、大西洋を望むホテルに宿泊して、昼は世界遺産を巡ってポルトガルの歴史を知り、夜はおいしいワインと新鮮な魚介類を食べて、新しい知識の吸収と珍しい体験ができた上に、リーズナブルな価格でホテルに宿泊することができ、とても満足しました。
モノだけでなく、行く場所を選ぶときにも、流行りや旬のモノばかりに価値を見いださずに、「経験や知識が得られる」という理由で選んだりすると、「人間力」という資産になりますし、コストパフォーマンスもよいということになるのです。
Rule
旅行でも、流行りや旬を追うのではなく、自分にとって本当に価値ある場所を選ぼう