遺言者の思いを残せる「遺言書」は、相続対策の総仕上げとして重要です。今回は、遺言者の意思を確実に残せる「公正証書遺言」について見ていきます。

遺言書は自分の意思を後世に伝える最終手段

今後について家族で話し合い、相続に向けての生前対策や相続税の節税対策も十分検討したら、最後の総仕上げとして、親には遺言書を書いておいてほしいところです。

 

子の立場から「遺言書を書いて」と言わなくても、節税対策などを話しているうちに、自然と親の心に「遺言書を書いておかなくては」という思いが芽生えてくると思います。親が自分の意思を後世に伝える方法としては、遺言書こそが最終の手段だからです。もし親が遺言書を書こうとしていることが分かったら、ぜひ「公正証書遺言にしておいてね」と声をかけておきましょう。

一番簡単に作れるのは「自筆証書遺言」だが・・・

遺言書には、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3つがあります。秘密証書遺言は特別な遺言なので省略するとして、一番簡単に作れるのは自筆証書遺言です。


自筆証書遺言は、親が紙にペンで遺言を書けばいいだけです。思い立ってすぐに作れて、費用もかかりません。書き直しもいつでもできますし、遺言書をなかったことにしたければ本人が破ってしまえば終わりです。気軽に作れるという意味ではお勧めです。


ただし、遺言書に法的効力を持たせようと思うと、自筆証書遺言では少々心許ないです。
たとえば、遺言書に日付がなかったり、署名の字体が戸籍に則ったものでなかったりといった不備が起きやすいからです。「これが確かに本人の自筆だ」と証明するためには、家庭裁判所で検認を受けなくてはなりません。また、せっかくの遺言書もその存在を家族が知らず、発見されないまま相続が済んでしまったら、遺志を伝えるどころの話ではなくなってしまいます。


その点、公正証書遺言は安心です。公正証書遺言は、公証人役場に行って公証人に作ってもらいます。作成のための手数料や、遺言者が本人であることを証明するための実印や印鑑証明、2人以上の証人などが必要になります。


時間も費用も多少かかりますが、遺言の内容に迷った時は公証人のアドバイスがもらえますし、プロが作るので記入ミスや捺印漏れなどの心配がありません。また、作成した遺言書は原本が公証人によって保管されるため、紛失や偽造のおそれもありません。遺言者本人には原本と同じ効力を持つ正本が渡されます。万一、正本を紛失しても再交付を受けることができます。そして、いざ相続になれば、家族が知らなくても公証人が遺言書の存在を伝えてくれます。


遺言書を作成する時には付言事項を記入することができます。遺言書の本文は原則、財産の処分方法や遺言執行者の指名、祭祀の指定に関する事柄を書きますが、付言事項はそれ以外のことを補足として書くことができるのです。


たとえば「自分がいなくなった後も家族をもり立ててほしい」と希望を記したりできます。遺産分割の理由についても記せるので、親が生前に伝えられないことは、この付言事項に記すように子から勧めても良いでしょう。

基礎控除額を指標として相続対策を考える

相続税には、基礎控除枠があります。基礎控除額は、増税前は〈5000万円+1000万円×法定相続人の数〉でしたが、平成27年1月1日以降は、〈3000万円+600万円×法定相続人の数〉になりました(図表)。

 

【図表 改正前後の基礎控除、相続税、贈与税】

※ 特例贈与とは、贈与を受け取る側が20歳以上で直系尊属から贈与をされた場合に課せら
れる。一般贈与よりも税率は低い。
※ 特例贈与とは、贈与を受け取る側が20歳以上で直系尊属から贈与をされた場合に課せら れる。一般贈与よりも税率は低い。


法定相続人が3人の場合、増税前であれば8000万円まで相続税はかからなかったのですが、増税後は4800万円までとなります。その差は3200万円と大きな額です。

 

今後はこの基礎控除額が一つの指標となります。相続財産を基礎控除額内におさめるにはどのくらい評価額を下げれば良いか、そのためにどういった方法をとれば良いかを考えて、具体的に必要な対策を絞っていくことが上手な節税につながります。

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    大久保 栄吾

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