現在の家を先売りするほうが、金銭的リスクは少ない
【売却と購入、どっちを優先するか】
マンション買い替えの流れは、以下のように大きく分けて3つの方法があります。
●現在の家の売却を先に行う(先売り)
●新しい家の購入を先に行う(後売り)
●同時に決済する
ただ、上記の「同時に決済する」というのはタイミングを合わせるのが難しいため、ケースとしては多くないでしょう。そのため、まずは先売り・後売りのどちらが自分に合っているかを検証することが大切です。
先売りのメリットとは?
結論からいうと、先に今住んでいるマンションを売却する「先売り」のパターンが、堅実な買い替えの流れといえるでしょう。そのため、基本的には先売りの流れでマンションの買い替えは行うべきです。その理由は以下の通りです。
① ダブルローンになるリスクが小さい
② 資金計画を立てやすい
③ 高い金額で売却しやすい
要は、先売りのほうが金銭的なリスクが小さく、買い替え時の経済的な負担が小さいので「堅実」な買い替えになるということです。
① ダブルローンになるリスクが小さい
ダブルローンとは、今住んでいるマンションの住宅ローンと、新しいマンションの住宅ローンの2つの支払いが発生することです。ダブルローンは、単純に住居費の支払いが倍になるので、負担はかなり大きくなります。
ただ、先売りであれば今住んでいるマンションは売ってしまうので、住宅費用がダブルで発生することはありません。この点が、先売りをする最も大きなメリットといえるでしょう。
② 資金計画を立てやすい
また、今住んでいるマンションを先に売却するということは、そのマンションを売ることでいくらの売却益が出るかがわかります。つまり、先売りの場合は手元にいくらの金額が残るかわかるということです。
その状況であれば、新しいマンションの予算も立てやすいので、結果的に無理のない資金計画が立てやすくなります。具体的にいうと、以下のような状況にも対応できるということです。
●新しいマンションの頭金をいくらにするかを決める
●新しいマンションの借入金額を決める
●上記2点から新しいマンションの予算を決める
これは、後売りでは予想しにくので、先売りならではのメリットといえるでしょう。
③ 高い金額で売却しやすい
上述したように、先売りの場合はダブルローンが発生するリスクがありません。そのため、今住んでいるマンションの売却を焦る必要はなく、ゆっくりと売却することができます。そのような売り方をすると、以下のような点がメリットになります。
●競合環境によって売り出し価格を変えることができる
●過度な値引き交渉には応じないですむ
要は、今住んでいるマンションを焦って売却する必要がないので、「自分の売却したい金額」に合わせてマンションの売却ができるということです。マンションは1,000万円単位の商品なので、1%売値が違うだけで数十万円の差になります。
先売りのデメリットとは?
一方、先売りにも以下のようなデメリットがあります。
① 仮住まいが必要になる
② 新しいマンションを探す時間が短くなりがち
ただし、上述したように先売りは堅実な買い替えといえるので、上記のデメリットよりも前項のメリットの方が大きいといえるでしょう。
① 仮住まいが必要になる
先売りの最も大きなデメリットは、仮住まいが必要になるという点です。仮住まいとは、新しいマンションが見つかるまで、賃貸マンションなどに「仮」で住むということです。仮住まいになると、以下のようなデメリットが発生します。
・仮住まいを探す手間がかかる
・初期費用がかかる
・引越しが2回になる
先売りする場合は、上記のデメリットを良く理解しておきましょう。
・仮住まいを探す手間がかかる
仮住まいをするということは、賃貸マンションなどを探します。しかし、子供がいれば学区を加味して探す必要がありますし、家具・家電などが入る住まいを探す必要があります。また、仮住まいとはいえ、新しいマンションを購入するまで住む部屋なので、快適な部屋でなければいけません。そのため、ある程度希望に叶った住まいが必要であり、理想の仮住まいを見つけるまで時間がかかる場合もあります。
・初期費用がかかる
仮住まいで賃貸マンションを借りると、以下の初期費用がかかります。
●礼金
●敷金
●仲介手数料
上記の、特に仲介手数料は無料の場合も多いですが、敷金・礼金は1か月分程度かかる場合も多いです。また、敷金は補修費用を差し引いて戻ってきますが、礼金は戻ってこないお金になります。
さらに、万が一新しいマンションがなかなか見つからずに2年経過すれば、家賃1~2か月分の更新料も必要になってきます。
・引越しが2回になる
また、今のマンションから仮住まいへ引っ越す費用と、仮住まいから新しいマンションへ引越す費用がかかります。つまり、本来1回でよい引っ越しが2回になるので、その分の費用や手間がかかります。
特に、大型の家具や家電があり、引越しにクレーンが必要な場合は、引越費用も20万円~30万円以上になることもあります。この点は、先売りをして仮住まいが発生するデメリットといえるでしょう。
② 新しいマンションを探す時間が短くなりがち
先にマンションを売るということは、上述したように仮住まいに居住することになります。しかし、短期間で仮住まいを探すため、決して理想の部屋ではないことも多いです。
そのため、その仮住まいから早く出たいがために、新しいマンションを早く探してしまうこともあります。そうなると、新しいマンションを探す時間が短くなり、理想のマンションに出会えないかもしれません。
「後売り」では、理想の物件に出会える可能性が上昇
後売りのメリットとは?
つづいて、後売りについて詳しく解説します。後売りとは、先売りの逆の流れになり、新しいマンションを購入した後に、今住んでいるマンションを売却することです。そんな後売りのメリットは以下2点になります。
① 仮住まいになることがない
② 新しいマンションをゆっくり選べる
このように、先売りのデメリットを解消できるという点が後売りのメリットです。
① 仮住まいになることがない
新しいマンションを購入した後に今住んでいるマンションを売るということは、確実に新しいマンションに住むことができます。そのため、仮住まいが発生することはありません。そのため、仮住まいするときのデメリットであった以下3点がなくなるので、その点は後売りのメリットといえるでしょう。
●仮住まいを探す手間がかかる
●初期費用がかかる
●引越しが2回になる
② 新しいマンションをゆっくり選べる
今住んでいるマンションを所有したまま新しいマンションを探すので、新しいマンションを探している間は住む家がなくなることはありません。また、新しいマンションを探している間は、住居費がダブルで発生しているわけでもありません。
そのため、新しいマンションを急いで探す必要はないです。そうなると、エリアや広さ、間取りなど、自分の条件に合ったマンションを粘り強く探すことができます。それは、結果的に自分の理想のマンションに出会える可能性が上がるということです。
後売りのデメリットとは?
一方、後売りのデメリットは以下の2点になります。
① ダブルローンになるリスクが大きい
② 資金計画を立てにくい
こちらも前項と同じく、先売りのメリットが後売りのデメリットに置き換わります。また、この「ダブルローンになるリスクが大きい」という点は、非常に大きな負担になります。この点が、マンション買い替え時に先売りをおすすめする、最も大きな理由です。
① ダブルローンになるリスクが大きい
ダブルローンになるリスクが大きいということは、経済的に大きな負担になるリスクが大きいということです。ダブルローンのリスクに関しては、以下の点を認識しておきましょう。
・同時決済しない限り確実にダブルローンになる
・ダブルローンはいつ終わるか分からない
特に、「ダブルローンはいつ終わるか分からない」という点が、後売り最大のリスクといえます。
・同時決済しない限り確実にダブルローンになる
詳細は後述しますが、今住んでいるマンションの売却と新しいマンションの購入の決済を同日にしない限り、ダブルローンは確実に発生します。ダブルローンが発生する期間が仮に1か月だけだったとしても、ダブルローンの負担は決して小さくないでしょう。
そして、今住んでいるマンションの売却と新しいマンションの購入を同時決済できる可能性は極めて低いので、後売りの場合はダブルローンになると思っておいたほうがよいです。
・ダブルローンはいつ終わるか分からない
また、ダブルローンは今住んでいるマンションの売却が完了するまで続きます。マンションの売却は、競合環境や日本全体の市況によって左右されるので、いつ売却が完了するかわかりません。
当然ながら、今住んでいるマンションが売却できないと、ダブルローンは発生し続けます。仮に、ダブルローンを避けたいがために、マンションの売却価格を下げて、マンションの売却スピードを上げたとします。その場合でも、結局手元に入ってくる資金は減るので、金銭的な負担が多くなってしまいます。
② 資金計画を立てにくい
また、後売りということは新しいマンションを購入するときには、今住んでいるマンションがいくらで売却できるかわからないということです。その状態での買い替えは、以下のリスクがあります。
●新しいマンションの予算を立てられない
●手元に残る資金がわからない
後売りの場合は、今のマンションが売れる前に新しいマンションを購入しているので、新しいマンションの予算はあくまで「予想」です。つまり、「今住んでいるマンションが恐らく○○万円くらいで売れるから、手元資金が××万円残るだろう」という予想の基に資金計画を立てています。
しかし、競合環境や市況の変化によって、予想していた売却金額で売れなければ、その時点で資金計画は崩れてしまいます。そうなると、手元資金は予想より少なくなり、経済的に厳しい状態になってしまいます。
同時に決済する方法
基本的には、上述した先売りか後売りかの売却フローが多くなります。ただ、今住んでいるマンションと新しいマンションの決済日を同日にすることで、先売り・後売りのデメリットを解消することできます。
しかし、上述したように同時決済はタイミングが難しいので、同時決済できる可能性は低いです。そのため、基本は先売り・後売りのいずれかの流れになると認識ください。
同時決済とは?
同時決済になるときの具体的な流れは以下の通りです。
●(今のマンション)売却をはじめる
●新しいマンション)物件を探し始める
●(今のマンション)申込、契約をする
●(新しいマンション)申込、契約をする
●両方のマンションの引き渡しを同日にする
要は、今のマンションの売却と新しいマンションの購入を同時に進め、それぞれの決済を同日にする必要があるということです。
しかし、今住んでいるマンションの決済日は、そのマンションの買主の事情も加味して決めます。一方、新しいマンションの決済日も、そのマンションの売主の事情を加味して決めるので、同時決済するには双方の予定を調整する必要があるのです。
だからこそ、買い替えにおいて同時決済するハードルは高く、基本は先売り・後売りの流れになるのです。
同時決済で解消されるデメリット
同時決済することで、以下の点が解消されます。
●仮住まいになるリスク
●ダブルローンになるリスク
同時決済するということは、決済日に引っ越しをするということです。厳密にいうと、今住んでいる家は決済日前日までに引っ越すのが原則なので、この点は買主の了承が必要になります。それができれば、先売りのデメリットである「仮住まいリスク」が解消されることになります。
また、両方の家を同時に所有するわけではないので、後売りのリスクである「ダブルローン」も解消されます。そのため、もし実現できれば同時決済が理想といえるでしょう。
実際には、先売りの流れで買い替えをはじめつつ、新しいマンションも同時に探しておき、同時決済できるタイミングであれば実行するとよいです。