今回は、規制緩和後のベトナム不動産市場の動向と、外資系デベロッパーが次々と進出を続ける理由について見ていきます。

ベトナム不動産市場にチャンスをもたらす「規制緩和」

外国人でもベトナム不動産の所有権が持てる、貸せるようになってから半年が過ぎました。この、いわゆる外資規制の緩和は個人投資家に限った話ではありません。同国政府はここ数年、外国企業への規制緩和を急速に進め、進出促進に躍起になっています。

 

 

不動産業は「規制業種」とされていて、他国のようにフレキシブルに現地で事業展開することは難しい部分があります。ただ、この規制緩和の流れに呼応するかのように外資系デベロッパーの進出が後を絶ちません。多くはベトナムの現地デベロッパーと合弁会社を設立する形式をとっています。2014年あたりから、各国トップクラスのデベロッパーが競うように進出を開始しています。

 

香港大手デベロッパーのシャーディン社傘下のホンコンランドは、ベトナム大手のソンキム社と合弁でホーチミン2区に高級マンション開発に着手し、15年末に工事がスタートしています。また、シンガポール大手のケッペルランド社や同国政府系巨大コングロマリット傘下のキャピタランド社も同じく、ホーチミン都心部で大型のマンション開発に着手し、決して安くはない高級仕様のプロジェクトでありながら非常に好調な売れ行きを維持しています。ホーチミン2区で進行中のキャピタランド社のプロジェクト(敷地面積3万4000平方メートル)には日本の三菱地所も出資しています。

 

このように、日系デベロッパーの進出も顕著になってきています。前述の三菱地所のほかにも、野村不動産、大和ハウス工業、住友林業、阪急不動産、西鉄不動産、東急電鉄、三菱商事、三菱地所、クリードが開発に着手、あるいは開発計画を公式に発表しています。

 

水面下では、もっと多くのデベロッパーが具体的に進出を考えているようです。世界中のマンション市場を見渡しても、ここまで多くの外資系、日系デベロッパーが一堂に会して開発を進めているというのは異例と言えるでしょう。

 

それだけ、各社がベトナムにチャンスを見出しているといえます。

日本のデベロッパー進出の背景に「手堅い購買層」あり

日系デベロッパーが多く進出している背景には、作れば売れるという“超売り手市場”であることに加え、購買層の手堅さが挙げられます。

 

ベトナムにおいて、マンションを購入する中心層はベトナム人です。現地に駐在する日系デベロッパーの関係者は、「周辺のアジア諸国と異なり外国人投資家に売らなくてもローカル(ベトナム人)だけで完売する」と話しています。

 

確かにタイ、フィリピン、カンボジア、マレーシア等のASEAN諸国の都心のマンションプロジェクトは、外国人投資家への販売に依存している傾向があります。

 

そもそもベトナムでは、外国人はプロジェクト全体の3割までしか購入できないと法律で規定されていますし、外国法人はそもそも購入することすら許されていません。他国のように外国の機関投資家がやってきてフロア単位で“爆買い”するという現象はベトナムでは起き得ないのです。

 

言うまでもなく、不動産投資家や機関投資家の投資トレンドは数か月単位で移り変わるので、将来を予測することは困難です。リスクを取りたくない日本のデベロッパーにとって、将来の予測がしづらい市場での事業展開はハードルが高いです。

 

 

また、ベトナムで大規模なマンション開発をしようとすると、デベロッパーは用地(土地)を取得してから、実際に許認可を取得するまでに1年間、長いものでは2年間の月日を要します。つまり、土地購入で投下した資本は、1年間は販売できるかどうかというリスクにさらされているわけです。

 

あくまで実需、実使用ということであれば、経済成長や所得拡大に比例するという点で、予測は立てやすいと言えるでしょう。日本の個人投資家の皆さんにとっても、投資して売るときの出口戦略を考えたときに、各デベロッパーの思惑と同じことが言えると思います。

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