現在のマンション価格は周辺国と比較しても「安価」
ベトナム不動産市場は2015年7月に改正住宅法が施行されて以降、外国人投資家が購入できるようになり、大きな盛り上がりを見せています。とりわけ商業、経済の中心と言われるホーチミン市では、実需や投資を目的としたマンションの購入が加速しています。ただし、実際に購入している人の殆どは中間層~富裕層と言われているベトナム人です。外国人投資家がこれからこの市場に参入することを想像すると、そのポテンシャルは計り知れません。
私たち日本人(外国人)がホーチミン市内のマンションを購入する場合、その主な目的は投資だと思います。そこで気になるのは将来の価格上昇です。
一般的に不動産の価格を決定づけるのは、当該地域の経済情勢、インフラ整備、人口、法規制、開発可能面積だといえます。経済成長していて、インフラの整備が進んでいて、人口が増えていて、開発可能面積が限定的である場合、不動産価格はあがるでしょう。高度経済成長期の東京の不動産価格の上昇を想像するとわかりやすいのではないでしょうか。最近では開発可能面積が極端に限られるシンガポール、香港、台北(台湾)の不動産価格が高騰しているのもわかりやすい事例です。
そしてこのような条件を満たしている市場こそがベトナムだといえます。成長著しい経済、急速に進む地下鉄、港湾、高速道路建設、人口は間もなく1億人を突破し、ホーチミン中心部は開発面積に限りがあると言われています。一方で不動産価格(マンション価格)は坪単価50~80万円という周辺国の主要都市と比較しても安価な状況です。それだけに価格上昇の期待感は高まります。
しかしながら、条件を満たしていても価格が思ったほど伸びないという現象がタイ、クアラルンプール(マレーシア)、マニラ(フィリピン)等で実際に起きています。もっとも、これらの国は短期間で上がるところまで上がったということも言えるかもしれません。日本人投資家の多くは上がってから買っているので、「全然上がらない」という印象を持たれているのかもしれませんが、早い段階で投資されている方はそれなりにキャピタルゲインを得ているようです。その見極めは非常に難しいところです。
マンション価格上昇の鍵を握る「建築費」の動向
私たち投資家は、「早い段階とはいつなのか」を常に考えなければなりませんが、“神のみぞ知る”と結論付けてしまう方が多いのではないでしょうか。しかしながら、必ずしもそうではない、価格を決定づけるファクターがあります。それは「マンションの建築費」です。
マンションの販売価格は外国人投資家の動向や供給動向により左右されるものなので、市場原理で目まぐるしく変動します。ところが、建築費は人件費の上昇に比例するものですので、ある程度予測が可能と言えます。一人当たりGDPは2000ドル程度のベトナムにおいて国民の所得水準は今後急激に上昇するでしょう。つまり、建築費の上昇は避けられないのです。それは新築マンションの価格に当然反映されます。
ベトナムのマンション開発における建築費は300~400ドル/㎡ 程度と言われ、他のASEAN諸国と比べても明らかに低い水準です。建築費の高騰はマンション価格にそのまま反映されるので、1~2年後に販売がスタートされるマンションの価格が今より高く設定されるのは必至です。市場原理による不動産価格の高騰は予測しづらいですが、「建築費」という目に見えるファクターに由来する価格の高騰はイメージしやすいわけです。
ベトナムのゼネコン関係者からは、「建築費の値上げは既にスタートしていて、短期間で2倍、3倍になることも十分想定できる」と指摘されています。その点で、ベトナムは早めに投資をする必要がある市場だと言えるのではないでしょうか。