最優先は次世代への承継…超富裕層の「資産運用」の考え方とは

金融資産5億円以上のいわゆる「超富裕層」と呼ばれている人たちにとって、資産防衛は身近なテーマであり、彼らの資産運用法からは学ぶべきことが多くあります。本連載では、ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社の山口聰代表取締役に、超富裕層の資産運用のエピソードから、資産防衛のヒントを解説していただきます。

超富裕層のエピソードは資産防衛のヒントになる

資産運用についての情報は、書籍やネット上にたくさん溢れています。しかし一見すると資産を増やす必要がなさそうに思える純金融資産5億円以上の「超富裕層」の方々が、どのような資産運用を行っているのかの情報は、あまり見ることはありません。

 

筆者は長年外資系金融機関に勤務するなかで、メガバンクのVIP顧客、つまり超富裕層を担当する幸運を得てきました。超富裕層の方々は考え方や価値観が多様で、とてもユニークです。しかし、ありあまる資産を管理していくなかで、資産防衛や資産運用へのこだわりが非常に高いことが、なんといっても印象的でした。

 

これから紹介していくエピソードは、超富裕層の方々の資産防衛や資産運用のほんの一例ですが、とても印象深いものばかりです。不透明性を増す経済環境のなか、わたしたちが資産防衛を考えていく上で、何か重要なヒントを与えてくれるのではないかと期待しています。

複数の金融機関に分散投資、判断はすべて「おまかせ」

今回ご紹介するA様とは、2011年ごろに金融機関を通じてお会いしました。そのときすでに経営されていた会社をM&Aで売却され、多額の資産を資産管理会社にて運用されていました。A様は面白いことに、ますます広がる国際化の時代を見越して、ファミリーで保有する運用資産のほぼすべてを米ドルで保有。つまり、資産運用においてA様には円に対する為替リスクという概念が存在しませんでした。

 

ドル資産であれば、様々な富裕層向けサービスを行っている世界の金融機関との取引が容易になります。A様は富裕層向け金融サービスの本場、スイスの伝統的プライベートバンクをはじめ、他の欧米の金融機関とも取引されており、運用委託先の分散化を行っていました。海外での運用の大部分は、投資一任勘定契約です。

 

A様は、各運用委託先にはおおよそ500万ドルから2000万ドルずつ分散して契約。3ヵ月ごとに欧州に出張し、各委託先金融機関の担当者や運用マネジャーと面談して、彼らから運用状況や今後の見解についてフィードバックを受けていました。

 

複数の委託先に分ける理由を伺うと、「各金融機関とも顧客担当者や運用担当者との相性があり、得意な投資分野や投資手法も様々。だから大まかな投資方針を打ち合わせした上でそれぞれの強みを発揮してもらえるよう任せている。しかしポートフォリオ全体としては、分野や銘柄に偏りがあまり出ないよう、複数の金融機関に分散させている」とのこと。

 

「でも面白いことに、米国株式を担当するマネジャーなら、個別株式でもファンドであってもほぼ全員がアップルやアマゾンを組み入れてしまうね」と苦笑い。

 

商品としては違う投資信託を保有していても「米国株投資」というテーマであれば、結果的に主力銘柄は重なってしまい、結果的に銘柄分散が効いていないことはよくあります。差別化やパフォーマンス向上を狙い他と違う銘柄を組み入れるか、または失敗を恐れてベンチマークを意識するのか……この辺りが運用成果を競うプロの世界の難しいところのようです。

 

一方、A様はこうもおっしゃいます。

 

「現地でフィードバックを受けたり、海外から届く報告書を見たりすると、ひとりのマネージャーがある銘柄を買ったと思えば、別のマネジャーは同じタイミングで違うことをしてくるから面白い。任せている以上個別の判断に口を挟まないが、やはりパフォーマンスがすべてではあるので、次に会うときに彼らはどんなことをいうか、それを聞くのが楽しみなんです」

 

海外の担当者は、お客様に対して市場の見通しや投資判断などについて、とてもフランクに話すそうで、帰国後、A様はいつもにこやかに見聞きしたことをお話されていました。

「資産全体が成長しているか」で運用成果を厳しく評価

温厚な人柄のA様ですが、多額の資産をほぼ一人で管理されている以上、パフォーマンスには非常にシビアです。

 

A様にその方法や独自のルール、考え方を伺うと、「資産運用では、利益を取るというより、資産全体の長期的な成長が目的。基本的に運用資産全体がわずかでもプラス成長し、それが継続していく方法を考えている。委託先の金融機関に対しては、3ヵ月ごとに期間を区切り、原則として2期連続で前期比マイナスであれば契約打ち切りを検討する。これで全体としての資産評価の変動を抑えつつ年利成長2%超を実現する」というものです。

 

もし、年2%複利で資産が成長するとすれば、20年後には資産は約1.5倍に増える計算です。この2%という数字は、「世界のインフレ率から考えると、それ以上で運用しなければ資産は目減りとなってしまう」という認識からきているそうです。逆にいえば、超富裕層たちが、ファミリーの資産を将来に向けて安全に守っていくために必要な目標数字といえるでしょう。

 

日本での金融資産運用といえば個別商品の売買が中心で、「資産を年間●%増やしていく」といった資産管理型の考えが浸透しているとはいい難いでしょう。世界の超富裕層は資産を守る=将来に渡って長期的かつ着実に資産を成長させていく、という意味で捉えています。

 

もちろん、A様も遊び心はお持ちです。厳格に国際分散投資で資産運用するコア資産とは別に、一任契約を結ばずにA様自身が個別判断で投資するサテライト資産もいくらかはお持ちです。

 

サテライト資産の運用で、コア資産に大きなマイナス影響が及んではいけません。サテライト資産であっても、ご自身で「広い視野でじっくりとチャンスを待つ」とルールを作り、それに対しとても厳格に運用されていました。目的の実現に向け、ルールに誰よりも厳格であるからこそ、あれほど多額の資産を、世界を股にかけて安定的に運用していけるのだと思います。

300銘柄以上にリスク分散…安全重視のポートフォリオ

A様は、具体的な投資先や資産の配分比率について、委託先それぞれの提案を尊重し資産管理を行っていました。そのような状況のなか、一度、A様から運用状況全体の情報をいただいて、投資先の種類や国などを細かく分析したことがあります。国別では、英国やスイスの比重が一般のモデルケースよりやや高い印象でしたが、株式や債券の個別銘柄では、重複やヘッジファンドなど詳細不明な部分を除いても、300銘柄以上に分散されていました。

 

結果として、大きな資産額であるにもかかわらず、とてもきれいに分散されていらっしゃいました。総合するとややローリスク寄りのポートフォリオで、日本の一般的なバランスファンドで用いられる5段階のリスク度合いでいえば、2番目の「やや安全志向」のポートフォリオでした。ある外資系の金融機関の担当者に聞いた話でも、海外富裕層のポートフォリオは安全重視寄りのものが最も多いそうです。A様も、ご自身の目的の実現に向けたとてもよいポートフォリオを構築されていたのです。

 

 まとめ 

いかがでしたか。海外の超富裕層は資産の目減りを防ぎ、次世代に安全に承継していくための資産運用というはっきりした目的があります。そのためにはどのような運用になるのか、お聞きしたポイントを記してみます。

 

①長期的に資産を増やしたいなら、年率数%を期待するやや安全重視の分散ポートフォリオに徹する

②コア資産とサテライト資産に分け、サテライト資産の影響がコア資産に及ばない程度に抑える

③コア資産では、一つの商品でポートフォリオを組んでしまうのではなく、複数の商品に分散させておく

④ファンドラップのような高コストのものを避け、コストに見合う商品の分散でポートフォリオを維持する

 

海外超富裕層は資産運用を10年、20年、それ以上のスパンで考えるそうです。超富裕層の資産を数百年以上に渡って管理してきた金融機関が存在するということからも、彼らの考え方には資産運用に対する普遍的な正解があるのかもしれません。

 

 

山口 聰

ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社

代表取締役

 

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ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社
 代表取締役

1978年生まれ。同志社大学法学部卒業後、大和証券株式会社入社。大阪、東京での支店勤務と人事部付きインストラクターを経験後、アメリカン・ライフ・インシュアランス・カンパニー営業教育本部にてコンサルティングセールス研修の企画実施業務に携わる。その後バークレイズ・ウェルス・サービシズへ移り、日系メガバンクとの協働部門にて超富裕層向け資産コンサルティング業務に従事。クレディ・スイス証券ブライべートバンキング本部を経て2017年にIFA法人ペレグリン・ウェルス・サービシズ株式会社を設立。これまでの経験を生かし、独立系金融アドバイザーとしてお客様の気持ちに寄り添う資産運用コンサルティングサービスの提供を心掛けている。
国際公認投資アナリストCIIA(R)
公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員CMA(R)

著者紹介

連載金融資産5億円以上!超富裕層のユニークな運用術から学ぶ「資産防衛のヒント」

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