前回は、減価償却の活用において「中古木造アパート」が有効な理由について説明しました。今回は、不動産取得時における「建物割合の交渉」などについて見ていきます。

土地と建物の金額は売買契約書に分けて記載してもらう

土地と建物を一括して取得する場合に、タックスメリットを大きくするためには、建物割合を大きくする必要があることは、本連載の第20回で説明したとおりです。それならば、なるべく建物割合を大きくしたいところですが、そのようなことは可能なのでしょうか。結論からいえば、交渉次第で可能です。

 

最も重要なのは、不動産の売買を行うときに、売り主と交渉して、売買契約書に譲渡代金の総額だけではなく、土地と建物の金額もそれぞれ記載してもらうことです。ただし、土地と建物の売買価額が租税回避や、脱税目的でないことが前提となるので注意してください。

 

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建物割合を多くとれるかどうかは、売り主に対する交渉力次第ということになりますが、交渉にあたっては、事前に下記の方法に基づいて土地と建物の価額を算出し、最も高い建物価額よりも交渉結果が下回らないようにすることが望ましいでしょう。

 

①譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による譲渡代金の按分
②相続税評価額や固定資産税評価額を基にした譲渡代金の按分
③土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費、販売費、支払い利子等を含む)を基にした譲渡代金の按分

 

売買契約書に譲渡代金の総額のみが記載されていて、土地と建物の価額が記載されていない場合は、売り主と買い主で上記の①~③などの方法により、合理的に土地と建物の価額を算出する必要があります。

 

これをやらないと、土地と建物の価額について、売り主と買い主で齟齬が生じ、後の税務リスクにつながります。例えば、建物の価額が売り主と買い主で違うと、買い主側で建物の減価償却費の計算が間違ってしまうことにもなりかねませんので、注意が必要です。

建物割合が増えれば売り主側の負担は増すが・・・

さて、建物価額を大きくとるための交渉方法について見てきましたが、お願いすれば売り主がOKしてくれる・・・かといえば、そうとは限りません。売り主からすれば、逆に建物価額が低いほうが得だからです。その理由は消費税にあります。個人や法人が消費税の課税事業者である場合、事業用の建物の売却は消費税の課税対象になります。

 

一方、土地の売却は消費税が非課税です。そうすると、売り主が消費税の課税事業者である場合は、建物割合を大きくすることによって消費税の税額が高くなってしまうのです。

 

例えば、土地・建物の一括譲渡代金が1億円で、建物割合40%、建物価額4000万円に課税される消費税は、

 

4000万円×8%=320万円となります。

 

これが建物割合60%、建物価額6000万円とすると、課税される消費税は、

 

6000万円×8%=480万円

 

となり、納付すべき消費税額が160万円も増えてしまいました。これでは売り主が建物割合を上げることに対して消極的になるのも当然です。結局は交渉次第ということになりますが、消費税の納税義務が免除されている個人から土地・建物を一括して取得すれば、建物割合を引き上げる交渉に応じてもらえる可能性は高いでしょう。

 

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本連載は、2014年4月25日刊行の書籍『スゴい「減価償却」』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

スゴい「減価償却」

スゴい「減価償却」

杉本 俊伸+GTAC

幻冬舎メディアコンサルティング

「減価償却で節税」とはよく聞きますが、課税と節税の仕組みを十分に理解して使いこなせている人は多くありません。 減価償却を活用するポイントは、タックスマネジメントです。タックスマネジメントとは、税額や納付のタイミ…

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