オマーンの格下げに見る、産油国の現状

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報・ヘッドラインを転載したものです。

フィッチによる格下げを背景に、年初に発行されたオマーン債券は発行来で最安値となりました(図表1参照)。フィッチによる格下げを受け、オマーンは投資適格債(BBB-以上の格付け)の地位を失ったことで、代表的なグローバル債券指数から除外される運びです。産油国オマーンの財政状況は当面厳しい環境が想定されます。 

オマーン格付け:フィッチがオマーンを非投資適格級となるBB+へ格下げ

格付け会社フィッチ・レーティングス(フィッチ)は2018年12月18日、オマーンの外貨建て長期債格付けをBBB-からBB+に格下げしました。

 

S&Pグローバル・レーティングはオマーンの長期債格付け(自国通貨建て、外貨建て共に)をBBとする一方、ムーディーズ・インベスターズ・サービスはオマーンの外貨建て長期債格付けをBBB-に相当するBaa3としています。

どこに注目すべきか:非投資適格債、原油価格、財政収支

フィッチによる格下げを背景に、年初に発行されたオマーン債券は発行来で最安値となりました(図表1参照)。フィッチによる格下げを受け、オマーンは投資適格債(BBB-以上の格付け)の地位を失ったことで、代表的なグローバル債券指数から除外される運びです。産油国オマーンの財政状況は当面厳しい環境が想定されます。

 

[図表1]オマーン債券価格の推移

日次、期間:2018年1月12日~ 2018年12月18日、ドル建て債券価格 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2018年1月12日~ 2018年12月18日、ドル建て債券価格
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

産油国であるオマーンの格下げの背景に、原油価格の動向の影響が見られます。産油国全般への影響を占うため、オマーンの財政状況と原油価格の動向を振り返ります。

 

 

オマーンの財政が悪化し始めたのは15年からです。財政状況の目安として財政収支(赤字)対GDP(国内総生産)比率は14年までほぼ黒字でした。

 

しかし、同比率はその後大幅なマイナス(財政収支の赤字)となりました。背景は原油価格の変動で各年の平均原油価格(北海ブレント)を見ると、14年は1バレル=90ドル台であった平均価格は15年に約68ドルへ、16年には約53ドルへと急落しています(図表2参照)。原油の平均価格はようやく17年に約55ドル台へと回復しています。

 

[図表2]北海ブレント原油先物価格の推移

日次:2014年1月2日~2018年12月18日、数字は各年の平均価格  出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次:2014年1月2日~2018年12月18日、数字は各年の平均価格
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

 

オマーンの財政収支(赤字)対GDP比率をこの時期について見ると、16年は約21%、17年で約14%と高水準の赤字となっています。例えばユーロ圏ならば同比率を3%以内に抑えることが目標であるのに比べ大幅な変動と見られます。

 

もっとも、フィッチがオマーンを格下げした理由は原油価格の平均が18年は大幅に回復したにもかかわらず、オマーンの同比率が9%と高水準にとどまる点に着目、オマーン政府の財政改革に対する取り組み不足を指摘しています。オマーンは公務員の割合が高く、公的部門の人件費が歳出の3割弱を占めますが改革は遅れています。

 

別の懸念は足元の原油価格の低下です。19年の原油の想定価格を18年から1割程度引き下げています。フィッチは同比率が19年に再び悪化すると見込んでいます。

 

なお、同じ産油国のクウェート、カタール、サウジアラビアなどの財政収支(赤字)対GDP比率もオマーン同様の変動を示しており、財政の悪化は懸念されます。

 

それでも、クウェート、カタール、サウジなどの債券価格はオマーンのように格下げで債券指数から除外される懸念がないことなどから安定的に推移しています。ただ、原油価格による財政への影響は共通する面も見られます。産油国全般に経済成長が鈍く、景気対策に財政出動が求められる産油国ですが、余裕は失われつつあるように思われます。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『オマーンの格下げに見る、産油国の現状』を参照)。

 

(2018年12月19日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

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ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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