インド中銀パテル総裁、あなたもですか

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インド中銀が公表したパテル総裁辞任の声明には、一身上の都合とスタッフへの感謝が示されたのみで、詳しい理由は述べられていません。市場ではパテル総裁辞任表明後、後任が決まるには時間を要するとの憶測もありましたが、手際よく翌日に後任が発表されています。公表は突然ながら、内部では着々と準備が進められていたようです。

インド中銀総裁突然辞任:モディ政権との対立が懸念されたパテル総裁辞任を表明

インド準備銀行(中央銀行)のウルジット・パテル総裁は2018年12月10日に、任期を19年9月まで残しながら辞任を表明しました。詳しい事情は公表されていませんが、インド中銀は信用危機が懸念されるノンバンクへの対応を巡りモディ政権との意見の相違が見られました。

 

なお、インド政府は翌日に、パテル総裁の後任に、前財務次官シャクティカンタ・ダス氏を任命すると発表しました。

どこに注目すべきか:インド中銀総裁辞任、余剰金、流動性、選挙

インド中銀が公表したパテル総裁辞任の声明には、一身上の都合とスタッフへの感謝が示されたのみで、詳しい理由は述べられていません。市場ではパテル総裁辞任表明後、後任が決まるには時間を要するとの憶測もありましたが、手際よく翌日に後任が発表されています。公表は突然ながら、内部では着々と準備が進められていたようです。

 

 

パテル総裁辞任発表後の市場の動きを見ると、不安定要因を嫌う為替市場はルピー安傾向ですが、インド株式市場の反応は足元では小幅高となっています(図表1参照)。

 

[図表1]インドルピー(対ドル)と株式市場の推移

日次、期間:2017年12月11日~ 2018年12月11日
日次、期間:2017年12月11日~ 2018年12月11日

 

まず、パテル総裁が辞任した理由は何か?報道にもあるように、18年後半に見られたモディ政権との対立が背景となった可能性が高いようです。例えば、インド大手のノンバンクが支払不履行の危機に直面したとき、モディ政権はインド中銀の流動性供給への対応を批判しています。また、モディ政権はインド中銀の多額の余剰金(金融市場調整の原資)を国庫に収めるよう求めたとも伝えられています。

 

後任のダス氏はハト派(金融緩和を選好)で、モディ政権の政策にも理解を示すとの憶測もあります。

 

パテル総裁の前任で、元国際通貨基金(IMF)チーフエコノミストでもあったラジャン前総裁も、パテル総裁同様、モディ政権と対立して1期3年で退任し、再任はかないませんでした。パテル総裁も元IMFエコノミストで、ラジャン前総裁の改革路線の後継者と見られます。例えば、ラジャン前総裁就任以降のインドのインフレ率を見ると、インド中銀の目標である4%(±2%)を達成したと評価できる推移となっています(図表2参照)。

 

[図表2]インド消費者物価指数(CPI)の推移

月次、期間:2012年11月~ 2018年10月、前年同月比 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 0 2 4 6 8 10 12 12年11月14年11月16年11月18年
月次、期間:2012年11月~ 2018年10月、前年同月比
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

 

ただ、インド中銀の責務は幅広く、先のノンバンクの流動性危機のようなケースでは信用供与が求められるため、政権との間で対立の芽となったことは考えられます。

 

しかし、現在のモディ政権の最大の懸念は来年(4月から5月?)の総選挙が苦しい状況であることです。インド中銀への過大な期待(要求)が対立の引き金と見られます。

 

モディ政権の苦境は州議会選挙の結果に現れています。11月から12月にかけてインドの5つの州の議会選挙で、与党インド人民党(BJP)は3州で野党の国民会議派に第1党の座を奪われるなど5州で大敗しました。5つの地方州はインドの経済成長の恩恵を受けにくい地方で、モディ政権は今後地方にも手厚く経済対策を拡大することが想定されます。

 

中央銀行総裁辞任という悪材料より、景気対策への期待(他にも米中貿易戦争緩和期待という要因)が株式市場では上回っているのかもしれません。ただ、通貨安が長期化するようであれば、インフレ率の上昇に注視も必要です。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『インド中銀パテル総裁、あなたもですか』を参照)。

 

(2018年12月12日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は1.98兆円となっています(2018年12月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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