ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報のディープ・インサイトを転載したものです。

 

市場の注目を集めたEU離脱案の賛否を問う英国議会の採決は、直前になり延期となりました。採決を実施しても離脱案の承認は望めないどころか、大差で否決の恐れがあるため延期を決定したと、メイ首相も認めています。今回の延期により、時間的な余裕は確実に失われた一方で、今後の展開は不透明なままと見られます。

英国EU離脱:11日に予定されていた離脱案の採決延期を表明

メイ英首相は2018年12月10日、欧州連合(EU)と合意した離脱案が大差で否決されるとの見通しを受け、下院で11日に予定していた議会採決の延期を発表しました。

 

市場では、英国のEU離脱プロセスに不透明感が高まったとの見方から、ポンドは売られました(図表1参照)。ユーロは小幅な変動にとどまりました。

 

[図表1]ポンドとユーロ(共に対ドル)の推移

日次、期間:2017年12月11日~ 2018年12月10日 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2017年12月11日~ 2018年12月10日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか:採決、延期、バックストップ、再国民投票

市場の注目を集めたEU離脱案の賛否を問う英国議会の採決は、直前になり延期となりました。採決を実施しても離脱案の承認は望めないどころか、大差で否決の恐れがあるため延期を決定したと、メイ首相も認めています。今回の延期により、時間的な余裕は確実に失われた一方で、今後の展開は不透明なままと見られます。

 

まず、今後のスケジュールを確認します。メイ首相はこの後EU首脳会議に参加予定です(図表2参照)。12月20日には英国議会は休会、再開は年明けの7日となります。報道ではラッド英雇用・年金相の話として、EU離脱案を巡る英議会採決はクリスマス休暇後と伝えています。

 

[図表2]英国EU離脱を巡る主な政治スケジュール

出所:各種報道を参考にピクテ投信投資顧問作成
出所:各種報道を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

なお、メイ政権は議会にEU離脱の報告をするため採決の 期限も1月21日と見られます。市場では、12月11日に採決が実施され否決されても、その後の市場の混乱を見て議員も心変わりし、2回目の採決で承認という楽観的なシナリオも見受けられましたが、その可能性は低下しました。日程から見て仮に採決が行われても1度だけかもしれません。

 

資産を「守る」「増やす」「次世代に引き継ぐ」
ために必要な「学び」をご提供 >>カメハメハ倶楽部

 

では、採決までに離脱案のどこが修正されるべきなのか? やはり離脱案に盛り込まれた「安全策」(バックストップ)への反発が挙げられます。「安全策」は、北アイルランドの国境管理問題が解決まで、英国がEU関税同盟に無期限に残り、脱退にはEU側の了承が必要と英国に厳しい内容となっています。メイ首相はEU首脳会議に出席し、英国がEUの承認なしに関税同盟から出られることを説得する模様ですが、EUに交渉の余地は乏しいと見られます。満足な修正なく採決となれば、このままなら無秩序な離脱に手を貸したことになるよという「脅し」が説得材料という事態も想定されます(かなり有効な脅しかも知れませんが)。

 

 

次に、図表2のスケジュールに含めていない2つ目の可能性を述べると、1つ目は政治の混乱です。メイ首相の議員への説得が不調に終わった場合、不信任決議や党首交代など政治的混乱が想定されます。この場合、問題は来年3月の期限が迫っていることです。その場合、何らかの交換条件をEUに与えることで期限の延長の可否が鍵となりそうです。

 

2つ目は再国民投票です。微妙なタイミングでしたが、EUの最高裁判所であるEU司法裁判所は10日、英国がEU離脱プロセスを一方的に取り消すことができるとの判断を示しました。当初はEUの承認が必要と見られた英国のEU離脱の取りやめについて、ハードルが下がった印象です。ただ、EU離脱プロセスに至った経緯を考えれば再国民投票が必要と思われます。メイ首相は再三再四否定していますが、再国民投票の可能性はゼロではないように思われます。

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『EU離脱案の採決を巡り英国迷走』を参照)。

 

(2018年12月11日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

 

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/10開催】
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
―税務調査を録音することはできるか?

 

【12/10開催】
不動産「売買」と何が決定的に違うのか?
相続・事業承継対策の新常識「不動産M&A」とは

 

【12/11開催】
家賃収入はどうなる?節目を迎える不動産投資
“金利上昇局面”におけるアパートローンに
ついて元メガバンカー×不動産鑑定士が徹底検討

 

【12/12開催】
<富裕層のファミリーガバナンス>
相続対策としての財産管理と遺言書作成

 

【12/17開催】
中国経済×米中対立×台湾有事は何処へ
―「投資先としての中国」を改めて考える

 

 

 

【ご注意】
●当レポートはピクテ投信投資顧問株式会社が作成したものであり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。
●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。当レポートに基づいて取られた投資行動の結果については、ピクテ投信投資顧問株式会社、幻冬舎グループは責任を負いません。
●当レポートに記載された過去の実績は、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。
●当レポートは信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用目的への適合性を保証するものではありません。
●当レポート中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。
●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象ではありません。
●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資家保護基金の対象とはなりません。
●当レポートに掲載されているいかなる情報も、法務、会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録