米中首脳会談、その中身は

ピクテ投信投資顧問株式会社が、日々のマーケット情報を分析・解説します。※本連載は、ピクテ投信投資顧問株式会社が提供するマーケット情報のディープ・インサイトを転載したものです。

今日のヘッドライン18年11月30日号(関連記事『米中首脳会談前の中国PMIで現状確認』参照)で想定したように、米中首脳会談の結果は妥協を模索する展開となりました。来年年初からの追加関税(税率引き上げ)が当面回避されることを市場は好感した格好です。ただ、米中の根本的な対立解消は先行き不透明な要因も見られます。

米中首脳会談:米国が追加関税見送り合意、 米中で知財権侵害で協議開始

アルゼンチンで2018年11月30日から12月1日に開催された20ヵ国・地域首脳会議(G20)後の夕食会で、米中首脳による新たな関税適用の見送り(図表1参照)と貿易交渉強化で合意しました。

 

[図表1]米国の対中国関税の主な動き

出所:各種報道を参考にピクテ投信投資顧問作成
出所:各種報道を参考にピクテ投信投資顧問作成

 

日本時間12月2日午前8時頃に終了した米中首脳会談の結果を受けた市場の反応はオーストラリア(豪)やニュージーランド(NZ)ドルなど資源国通貨が買われた一方、リスクオンを受け日本円は小幅円安となりました(図表2参照)。

 

[図表2]オセアニア通貨と円(共に対ドル)レートの推移

日次、期間:2017年12月4日~ 2018年12月3日(日本時間午前10時) 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
日次、期間:2017年12月4日~ 2018年12月3日(日本時間午前10時)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成

どこに注目すべきか: 米中首脳会談、追加関税、中国製造2025

今日のヘッドライン18年11月30日号で想定したように、米中首脳会談の結果は妥協を模索する展開となりました。

 

来年年初からの追加関税(税率引き上げ)が当面回避されることを市場は好感した格好です。ただ、米中の根本的な対立解消は先行き不透明な要因も見られます。

 

まず、合意内容を簡単に振り返ります。

 

通商問題で、米国は中国製品2000億ドル相当に対する関税率を19年1月1日の段階で10%のままとし、今回25%に引き上げないことに同意しました。

 

中国は2国間の貿易不均衡を減らすため、詳細は未定ながら農産品、エネルギー製品、工業製品やその他の製品を米国から輸入することに同意しています。なお、中国は米国農家からの農産品購入は直ちに開始するとしています。

 

さらに構造改革については、強制的な技術移転や知的財産保護、非関税障壁、サイバー攻撃、農業などに関する交渉を直ちに始めるとしています。中国の構造改革が90日間で進展がなければ、先の関税率を10%から25%に引き上げると、米国のホワイトハウス報道官が述べています。

 

このように整理すると、今回の米中首脳会談の結果は米中ともに勝利をある程度宣言できる内容と見られます。

 

中国は米国からの追加関税の先送りを勝ち取った一方、米国は中国経済の構造改革を進めさせつつ、中国に米国農産品の購入拡大などを取り付けたからです。

 

 

今回の米中首脳の直接対談は、17年11月の北京以来で、冷え込んだ両国関係に一定の改善が期待されます。また、合意の中には、(合成オピオイドの)フェンタニル(麻薬)の規制薬物への指定に同意、結果として米国へのフェンタニル輸出が中国の法律で最高刑の対象となることにするなど、人道主義的に意味のある内容も含まれています。

 

ただ、今回見直しの対象から除外された項目には、恐らく米国が最も改善を期待する先端産業育成策である「中国製造2025」が含まれています。また、米国が批判する産業補助金の撤廃には習政権が強く反発しており、声明に含まれていません。

 

米中首脳会談は予想された好ましいシナリオにたどり着けた点などはプラスと見られますが、賞味期限はそれほど長くないのかも知れません。

 

 

当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『米中首脳会談、その中身は』を参照)。

 

(2018年12月3日)

 

 

梅澤 利文

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト

 

ピクテ投信投資顧問株式会社
運用・商品本部 投資戦略部 ストラテジスト 

日系証券会社のシステム開発部門を経て、外資系運用会社で債券運用、仕組債の組み入れと評価、オルタナティブ投資等を担当。運用経験通算15年超。ピクテでは、ストラテジストとして高度な分析と海外投資部門との連携による投資戦略情報に基づき、マクロ経済、金融市場を中心とした幅広い分野で情報提供を行っている。経済レポート「今日のヘッドライン」を執筆、日々配信中。CFA協会認定証券アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)

著者紹介

ピクテは1805年、スイス、ジュネーブにおいて会社創設以来、一貫して資産運用サービスに従事し、運用サービスに特化したビシネスモデルを展開してまいりました。信用格付ではフィッチ・レーティングスからAA-の格付けを取得しております(2018年5月末現在)。注:上記の格付はピクテ・グループの銀行部門の債務の信用に対するもので、運用部門や運用能力に関するものではありません

1981年、日本経済や株式市場の調査を目的に東京事務所を設立しました。その後、1987年から機関投資家を対象とした資産運用サービス業務を開始、1997年には投資信託業務に参入し、運用資産総額は2.11兆円となっています(2018年6月末現在)。外資系運用機関の大手の一角として、特色ある資産運用サービスをお届けしております。

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